508.ロウリュ体験

 ……。


「納得なんだぞ」

「あの着ぐるみでぽかぽかしてるぴよねー」

「ウゴ、なるほど……」

「エルト様が東方の風習までご存知とは……。そのサウナは悪くないと思います」


 うんうんとステラが頷く。


「お湯に入るのもとっても良いですが、サウナも良いものです。お肌もぷるぷるのつやつやになります」

「母上のお肌は常にぷるつやなんだぞ」

「ふふふ……。油断はいけませんよ、油断は……!」


 サウナには2つの種類がある。

 ひとつが乾式で、日本で普通のサウナといえばこちらだ。


 もうひとつが湿式、代表はロウリュだな。

 熱した石に水をかけて水蒸気を発生させる。ロシアもこの方式だったかな……?


 ステラからサウナのことを聞いて、記憶が揺さぶられる……。


 うん、そうだ。

 湿式はアロマとかもセットでやったりする。リラックス効果もマシマシである。

 日本ではちょっとお高めのサウナなのだ。


 だが、この村でやるのなら――。


「ステラ、ありがとう。いいことを聞いた」

「ふぇ!?」

「いや……この村では、そのロウリュ方式でやろうと思う。そうすれば村の収穫物も売れるだろう?」

「あっ……そうですね。村のロウリュで使っている香料ですとか、売れそうです」

「それに水蒸気なら、土風呂とはまた違う」

「両方入りたいんだぞ!」

「ウゴウゴ、いい! 」


 サウナはまだ構想の段階で、見直しをしても問題ない。


「ぴよ……。蒸すぴよ?」


 ディアは首を傾げている。


「蒸しますね」

「いっぱい蒸す感じぴよ? 蒸し蒸しの蒸しぴよ?」

「蒸し蒸しの蒸しだな……」


 スチームあふれる。


「……想像つかないぴよ」


 そんなディアを、マルコシアスがぽむっと撫でる。


「大丈夫だぞ、我が主。我もわからないんだぞ!!」

「ぴよー! 仲間ぴよー!!」

「なんだぞー!!」

「軽くなら体験できますよ。家のお風呂でモクモク……タオルとかを使えば」

「そうだな、ロウリュ風味を味わうことはできるだろう」


 本場の人に怒られるかもだが。


「やってみたいぴよー!!」


 というわけで、ご飯を食べ終わってからお風呂場でロウリュ風味を体験する。


 もくもくもく……。


 お風呂場を蒸気で満杯にして、タオルで仰ぐ。

 アロマは……植物性のやつを適当に生み出して、フレーバーをつけた。


 俺の家の風呂場はかなり大きいので、それなりに雰囲気が出てくる。


「……いいぴよ……」

「ほかほかだぞ」


 蒸したタオルに包まれたディアがうっとりしている。

 子犬姿のマルコシアスも同じだな。


「ウゴウゴ、気持ちいい……」


 ディアとマルコシアスはウッドに寄りかかりながら、ロウリュ風味を堪能した。


 蒸気とアロマの組み合わせ。やはり先人の知恵は偉大だ。


「みんな、気に入ったようですね。わたしも体がぽかぽかしてきました」


 濡れてもいいよう、軽装のステラも喜んでいるな。


「ああ、これはうまく行きそうだな」

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