497.魔導トロッコ打ち合わせ
冒険者ギルド。
家でお風呂を沸かした後、俺はここの執務室に戻ってきた。
今はナール、レイアと打ち合わせ中である。
「魔導トロッコも順調ですにゃん。ご不在の間も工事はどんどん進んでいましたにゃん」
「吉報だな。春先にはやはり需要が色々と増えるか」
「商人は春から秋にかけて活発に動きますにゃ。それまでに魔導トロッコが仕上がると、行き来がスムーズにいきますのにゃ」
「物流の改善は収益に直結いたします。魔導トロッコの開通には大いに期待しています……!」
「そうだな、予定表ではぎりぎりかもだが……」
ふむ、ここは追加の投資をしても良いかな?
本格的な春到来には間に合わせたい。
「ザンザスから技術者を呼んで、作業のスピードアップは図れるか? お金はもちろん出す。春からかっちり運用したい」
「確かに……そうですね。ちょっと日にちはかかりますが、近隣の職人に連絡を取ります。お金は折半ということでいかがでしょう?」
「それで構わない。進めてくれ」
「にゃ……! 即断即決は美徳ですにゃ」
「……初めて移住してくれたナール達も即断即決だったと思うが……」
「そうですにゃん、美徳なのですにゃ」
「同意します。早いことは、だいたい良いことです」
うんうんとレイアが頷く。
「そして、次の議題ですが……」
レイアがバッグをごそごそして、木彫りの小さなトロッコを取り出す。
「にゃ。ミニトロッコですにゃ」
早い。
もう魔導トロッコを商品に……!
「これはザンザスでなんとなく昔からあるトロッコのおもちゃなのですが……」
「ん? 今回作る魔導トロッコとは無関係なのか?」
「そうですね……。なぜか昔からある商品なのです。おそらく、観光地だからとりあえず扱う的な」
「けっこーなところに、こういうのあるにゃ」
ナールが手に取り、顔に近づけて観察する。
「出来栄えは悪くないにゃ。粗悪なモノは並べないのは、さすがザンザスにゃ」
「とはいえ、本場のドワーフの国とは格差がありますが。あそこは金属製でしっかり作ります」
「金属か……」
ザンザスにも鍛冶ギルドはある。
冒険者、薬師に並ぶザンザス三大ギルドのうちのひとつだな。
「ザンザスではまだこうした金属やガラス製品は不得手です。悪くない――くらいですね」
そうしてレイアはバッグから次々にミニトロッコを取り出した。
それぞれ形が違うが、木彫りだな。
「色々と試作は作ってもらったのですが……」
「早いにゃ。でもだいたい同じ出来栄えにゃ」
「その通りです。中々、突出したモノにはならず……そうして少しだけ、悪あがきをしてみたのです」
がさごそ、がさごそ。
「やはり原点に戻るべきかと……!」
レイアはバッグの奥からひとつのミニトロッコを取り出した。
「ふわもこ、魔導トロッコです」
それはミニトロッコに小さなコカトリスぬいぐるみを乗せた、かわいらしいおもちゃであった。
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