491.ため池完成のお祝い

 今日は天気も良い。

 シートを敷いて堤防の上から池を眺める。

 

 春先の暖かさに包まれると眠気が……。

 見ると、膝の上のマルコシアスとディアもウトウトしているようだった。


「わっふ……」

「ねむねむぴよねー……」

「俺も眠くなってきたな」


 ウッドはララトマと堤防の周りを散策しているようだ。

 冒険者も肉体労働の後か、見渡すと横になっている人も多い。


 この堤防はそこそこの高さなので、村の様子がある程度わかるのだ。

 広場でもニャフ族が集まってスヤスヤしていたりする。


 池ではコカトリスがぷかぷかと浮いているな。

 仰向けに、気持ち良さそうにしている。


「ぴよー……」(ゆらゆらー……)

「ぴよぴよ」(ひと泳ぎのあとは、お昼寝に限る……)

「ぴよよー」(真理だねー)


 ちなみにステラは浮かんだコカトリスに掴まって、同じように浮いていた。


「んふふ……」


 幸せそうだな。


「……少しお昼寝するか」

「さんせーぴよぅ……」

「我も寝るんだぞ」

「そうだな……」


 そうして俺はひと眠りするのであった。


 ◇


 むくり。

 ……お昼寝から覚めると、夕方になっていた。


「ぴよっ」(よいしょー)

「ぴよよー」(満喫したー)


 コカトリス達が堤防へと上がってきている。


「わふぅ。夕方になったんだぞ」

「ああ、そうだな……。小腹が少し空いたか」


 そこにぽにぽにとイスカミナが歩いてきた。


「もぐ! 水質も問題なしもぐー!」

「それはよかった。あとは――経過観察くらいか?」

「そうですもぐ。あとは大丈夫ですもぐ!」


 よしよし。

 予定よりもかなり早く終わったな。


 それじゃ――。


「お祝いでもするか!」

「やったぴよー!」


 何か出来たらお祝い。

 最近、そんな流れになっているな。


 しかし大事なことだ。

 イスカミナやアナリア、冒険者達にはお金を払っているが――ため池は広く村の資産になるものだからな。


 周知して、お祝いする。

 まぁ、主に俺の生み出した植物を焼いて食べるのだが……。


「バーベキューなんだぞ!」


 その言葉に身体を温めていたコカトリスがぴよっと反応する。


「ぴよっ!?」(おいしそうな単語がっ!?)

「ぴよよ!!」(ご飯の予感!!)

「目がきらきらしているな」

「ひと泳ぎして、きっとお腹空いたんだぞ」


 というわけで、夕焼けを眺めながらのバーベキューだ。


「ほわほわ……。ぴよちゃん、このピーマンはもう大丈夫ですよ」


 レイアが甲斐甲斐しくコカトリスに焼けたピーマンを差し出す。


 もっしゃもっしゃ。


「ぴよ!」(ありがと! あなたも食べる?)

「ぴよちゃんから……もちろん頂きます!」


 レイアがコカトリスから串に刺さった焼きジャガイモを受け取り、食べ始める。


 微笑ましい光景だな。


 ニャフ族も集まってバーベキューを楽しんでいる。


 ナールがふーふーしながら、焼きトウモロコシを食べていた。


「にゃー。堤防も出来上がって、上々ですにゃ」

「これで治水については一安心だな」

「ですにゃ! 堤防からの眺めもいいですにゃ、観光スポットになりますにゃ……!」

「池沿いに景観重視で植物を植えるのも良いかもな」


 ラベンダーとかは合いそうだな。

 桜を植えたい気もするが……この世界に桜を楽しむ習慣はない。


「にゃ! ラベンダーや池にスイレンもいいですにゃ!」

「おお、それはいいな。明日にも植えようか」

「これでさらに商売繁盛しますのにゃー!」


 こうして次の話をしてバーベキューは終わった。


 ひとつのことから次に進めるのは、いいことだ。

 観光も頑張りたいしな。


領地情報


 地名:ヒールベリーの村

 野球チーム名:ヴィレッジ・コカトニア

 特別施設:冒険者ギルド、大樹の塔(土風呂付き)、地下広場の宿、コカトリス大浴場、コカトリスボート係留所、たくさんの地下広場、ため池

 総人口:263

 観光レベル:B(土風呂、幻想的な地下空間、エルフ料理のレストラン、池と堤防)

 漁業レベル:B(レインボーフィッシュ飼育、鱗の出し汁、マルデホタテ貝)

 牧場レベル:B(コカトリス姉妹、目の光るコカトリス、ヒナコカトリス、海コカトリス)

 魔王レベル:D(悪魔マルわんちゃん、赤い超高速)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る