467.中心部へ

「とりあえず、その魔力の流れに沿って奥に行くか……」

「ウゴ、探検ー!」


 みんなから異論は出なかった。

 まだ余力はあるし、可能な限り調べないとな。

 またすぐに星クラゲの巣窟になっては意味がない。


「しかし荘厳だねぇ……。内部もきっちり造ってる」


 ぺたぺたと歩きながら、ナナが感心している。

 そこは俺も思った。


 俺もこの世界で旅をしているわけではない。読んだり聞いたりしただけだが、地上でもこれほどの神殿はそうはないはずだ。


「この国に同等の建物は、旧王宮くらいだろうな。彫刻も細かい。床もきちんと磨き上げられている」


 きゅっきゅっとヴィクターが着ぐるみの足で確かめている。

 不覚にもかわいい。


「大変な手間だ。間違いなく、使徒の時代以前のものだろう……。それ以降では記録に残っているはずだからな」

「私も同感ですわ。この神殿は海底で造ったとは考えられませんもの」

「ウゴ……? じゃあ、どうやって?」


 ウッドが首をかしげる。

 それについて、俺は俺なりの考えを言った。


「地上で建ててから、海底に沈めたのだろう。ほら、俺達も風の魔法でここまで来ただろう?」

「ウゴ! そうだ! 魔法で運べばいいんだ!」


 ウッドがぽんと手を打って――また首をかしげた。


「ウゴ……。でも……俺達を運ぶだけでも大変だったのに、この神殿なんて運べる?」

「その通りだ。だからこの神殿は使徒の時代――つまり大昔の強力な魔法使いが多数いた頃のものじゃないかと思われる………ということだな」


 話しながら海底神殿をゆっくり歩いていく。


 ぺたぺた。


 コカトリスもリアルに目を光らせながら歩いているな。きょろきょろと周囲を見上げている。


 ぴよぴよ鳴いているので、具体的に何を話しているかはわからないが……何となくピクニック気分なのはわかる。


「ぴよ」(懐かしいなぁ〜、こんな建物もあったねー)

「ぴよよ」(ここにあったんだねぇ〜)


 そしてステラは壁を触りながら歩いている。

 俺はそれを少し意外に思った。


 一緒に暮らしてそれなりに長いが、ステラはこういう建築物には興味なかった気がする。


 だが、ステラは確かめるような眼差しを続けていた。


「ふむふむ……。魔力はやはりきちんと流れて――意図されて建てられていますね……」


 ステラの顔に不安の影があったように見えた。

 俺はステラの隣に行き、声をかける。


「浮かない顔だな。心配事があるのか?」

「気のせい……ではないと思うのですが。どことなく、この神殿はザンザスのダンジョンに似ています。魔力の流れが……」


 ステラは立ち止まり、神殿の壁を見上げる。


「……それはつまり?」


 確かな証拠はありませんが、とステラは前置きして――。


「わたしの本能的な勘では……この海底神殿とザンザスのダンジョンは同じ人が造った気がするのです」

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