404.ぐいっぐい

 圧が凄い……。

 しかし言わんとしていることは合理的だ。


「それは確かなのですか?」


 クロウズがおずおずと口を挟む。あまり信じてなさそうな声だ。


 ヴィクターがギュン! とクロウズの目の前に移動する。


「っ!」


 鍛えられたクロウズはさすがに声を出さない。

 風の魔法をそんな風に使うのか。


「コカトリスのことなら任せろ。この場にいる誰よりも詳しい。コカトリス自身よりも……!」


 ヴィクターの着ぐるみヘッドがクロウズの顔に触れそうなくらい近寄っている。


「まー、どうせ方向はあんまり変わりないしなぁぁ……。リヴァイアサンを探す手間を考えれば、アリか?」


 ルイーゼが俺の方を向く。この話には当然、ディアの協力が不可欠だ。


「やってみる価値はあると思う。もし情報が得られれば儲けものだ」

「そうですね……。ディアも協力してくれるでしょうし」


 ステラも同意してくれる。

 ……情報料は草だんごで大丈夫か。


 コカトリスももしリヴァイアサンの行方を知っていれば、協力してくれるだろう。

 利害は一致してるんだし。


「んじゃ、船団に号令を出すぜ。目標はあの岩場のコカトリスだな!」


 ◇


 船団全体が進む中で、俺はレイア、ディア、マルコシアスに話しかける。

 内容はさっきのことだ。


「ぴよ……! お任せぴよね! 仲間は放っておけないぴよ!」

「わふ。海ぴよは潜れるから、知ってる可能性も高いらしいんだぞ」

「なるぴよ。さくっとリヴァイアサンを倒すためにも大事ぴよね!」


 ディアとマルコシアスの様子を見て、レイアはうんうんと頷いてる。


「ぴよちゃんは仁義あふれる生き物ですからね。ぜひ助けましょう!」

「ぴよよー!」


 次はララトマだな。ウッドと一緒にいる。


「――というわけなんだが」

「問題ありませんです! 草だんごはたくさんありますから!」

「ウゴ、準備はばっちり!」

「えへへ……!」


 ウッドに褒められてララトマはご満悦のようだ。

 ララトマが懐から草だんごを取り出す。


「…………じゅるり」


 遠くからコカトリスが見ている……。

 でもこれは向こうのコカトリスのためだからな。

 お預けである。


「それが草だんごか?」

「あっ、ああ……」


 コカトリスは草だんごが好き。それだけはヴィクターに伝えてある。


 着ぐるみの奥から値踏みするような視線を感じる。


「ひとついいか?」

「大丈夫だ」


 興味があるのだろうか。ララトマに促し、ヴィクターに渡してもらう。


「ふむふむ……」

「毒とかじゃないぞ」


 ヒールベリーの村ではレストランで土産物としても売っている。ドリアード製は貴重なので高価にしているが……。


「いや……興味深い。コカトリスが好きそうな匂いだな」


 いきなりディープな発言だな。

 ……こんな兄だったか?

 そうだったかもしれないし、そうでないかもしれない。


「味はどうかな?」


 ヴィクターがいきなり、もふもふハンドをくちばしの部分に突っ込んだ。

 俺の着ぐるみもそうだが、そこに確かに開口部分がある。

 食べるにはストローか口に突っ込むしかないわけだが……。


 ぐいぐいっ。


 羽をくちばしにぐいっとしてる。自分の羽を食べてるようにも見えるな……。


 ウッドもララトマも口をあんぐりしていた。


 ふっと見ると、少し離れたところでディアがマルコシアスに話している。


「……着ぐるみでよかったぴよ」

「ストロー正義なんだぞ」


 確かにビジュアルはかなり強烈だな。

 俺も気を付けるとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る