303.娘達
大聖堂を一回りしてみるステラ達。
ステラはディアを抱えて、ケイトはマルコシアスを抱えていた。
「……しっとり、なめらか」
「ちゃんとお手入れしている成果だぞ」
「うん、高級シルクみたい……」
ケイトが着ぐるみの奥から嬉しそうな声を出す。
やわらかマルコシアスはふよんとリラックスしていた。
「ぴよ。マルちゃんにんきぴよね」
「ええ、そうですね……」
「マルちゃんはわがやのいつざいぴよ! にんきがあるのもなっとくぴよね!」
ぴよぴよとディアが羽をぱたぱたさせる。
「さて、それじゃ回っていこうか」
「よろしくお願いします」
「お願いするんだぞ」
「よろぴよー!」
こうして着ぐるみーずとステラ達は自分のブースから出発する。
まずは到着したのが、隣のザンザスのブースである。
「おや! ご見学ですか?」
コカトリス帽子の他にコカトリスポーチ、コカトリスリュック、コカトリス指輪と全身コカトリスグッズに固めたレイアが出迎える。
「ええ、絶好調のようですね……!」
にこーとステラが微笑む。
「とりあえず試作品ですけどね。まだ量産化に至るかどうか……」
「すごくぴよぴよしてるぴよ」
「本当はもうちょっとあるんですが、見栄え的に……」
ザンザスのブースにいる人はそれぞれ違う服装をしている。コカトリスをモチーフにした靴を履いている人もいれば、軽装鎧を着ている人もいる。
「でも色々とあるんだぞ。カラフルだぞ」
「ぴよ。こうしてみるとはではでぴよね」
懐のディアを撫でながらステラが言う。
「ザンザスは交易の街ですからね。私も行きましたが、とっても色鮮やかで素敵なトコロですよ?」
「ぴよ! いつか、いってみたいぴよ!」
ヒールベリーの村が大樹に囲まれた緑の住処だとすれば、ザンザスは対照的である。
きらびやかで色彩豊かな街なのだ。
「……コカトリスグッズが、たくさん……」
着ぐるみの奥からケイトがザンザスのブースを見渡す。
「はい、たくさんありますよ! あっ、これをどうぞ!」
レイアはにこりと微笑み、ぴよっとしたコカトリスの描かれた小箱を手渡した。
「なんだか甘い匂いがするんだぞ」
「コカトリスが食べる木の実がちょっと入っている、ぴよクッキーです!」
「ぴよ! いいぴよね!」
「なるほど……。こういうお土産にはぴったりですね」
小箱を受け取ったケイトはしばらくパッケージのコカトリスを眺める。そして、お腹のポケットにごそごそと小箱を入れた。
「……はいるぴよ? はいっちゃうぴよ?」
「入る、うん……」
「きたのぴよはふしぎぴよね……?」
首を傾げるディアに、ケイトはしたり顔で答えた。
「お腹のたるみが、余裕を生む……」
「適当なこと言ってるんだぞ」
マルコシアスの素早いツッコミに、ケイトが満足そうだ。
「……君は賢いね……」
「マルちゃん、ほめられたぴよ!」
「え、ええ……マルちゃんは賢いです」
ステラはなんとなく、ケイトの性質を把握しつつあった。大聖堂の外でマルコシアスを見つめたコカ博士とそっくりの雰囲気だ。
さすが親子である。
一通りザンザスのブースを見て回り、レイアに別れを告げる。
実はヒールベリーの村のお土産コーナーで見た商品もそこそこ置いてあったのだ。
「今は昼時で、お客は食事に出掛けている。回るなら今がチャンスだな」
「そうですね……。ディアとマルちゃんはお腹空いていますか?」
「だいじょうぶぴよ!」
「朝ご飯をしっかり食べたから、空いてないんだぞ」
「……いい子、いい子……」
ケイトがふにふにと着ぐるみハンドでマルコシアスのあごの下を撫でる。
「それじゃ、次のブースに……あっ」
はたとケイトが動きを止めてブースの奥を見た。
そこにいたのは、コカトリスグッズを見て回っていたオードリーとクラリッサである。
その後ろにはシスタリアが控えていた。
「ケイトお姉ちゃん!?」
「……だよね?」
驚くオードリーとちょっと自信なさ気なクラリッサ。オードリーほどの着ぐるみ判別能力を持たないゆえであった。
「ん。……来たよ」
片腕をふにっと上げるケイト。
その声には懐かしさと嬉しさが含まれているようだった。
「シスタリアも元気そう……だね?」
「はい、お陰様で……」
さすがのシスタリアも声を聞けば声の主がオードリーの従姉、ケイトであるとわかる。
オードリーと年齢はそう変わらないが、ケイトは魔力と知識量ではすでに才女で知られていた。
……着ぐるみ姿でも、である。
「ぴよ! オードリーとクラリッサもみてまわってるぴよ?」
「うん、お客さんがランチに行っている間にね……」
「軽くは見て回ったんだけど……」
オードリーとクラリッサもかなりの多忙である。
その合間に見て回るつもりだったのだ。
「じゃあ、いっしょにみてまわるぴよ!」
「それがいいんだぞ」
ディアとマルコシアスの言葉に二人が頷く。
「そうだね……!」
「うん!」
「ぴよ! それじゃ、みてまわるぴよー!」
ディアの言葉に、子ども達が腕を振り上げる。
「「おーっ!」」
それをステラは微笑ましく見つめるのであった。
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