【ねこ魔女】ねこ装備、ねこ風従魔と魔法学園へ!
ねこ
魔女っ子?
第1話 前世も今世も猫が好き
「猫のお腹に顔を埋めて、スーハーしてみたかったなあ…」
前の私の最後の想い。ハッキリ覚えているのはこれだけ。
今のわたし7歳になりました。
お誕生日に猫を追いかけて木に登って、足を滑らせて落ちて頭を強打。その時に、どうやら前世の記憶を思い出したみたい。
とは言っても、自分が何歳だったか、どんな顔でどんな名前だったか、細かいことは全然覚えてないの。覚えていることは、冒頭にある通りの猫への想いと、この世界では見ないゴハンの記憶ばっかり!
なんていうか、ちょっと残念な頭だったのかな……。そうかも。
猫、というか動物全般にどうやらアレルギーっていう、近づくと痒くなったりくしゃみが出る体質だったみたい。あんなに猫愛に溢れていたのに、可哀想な前世の私。
でもね! 今世のわたしは、多分、大丈夫。だって、猫に触ったこと、あるもの。いつも猫を追いかけていた今世のわたしと前世の私。結局猫好きなのは変わらないようだ。
今世こそ、猫のお腹に顔を埋めるぞー!
握り拳を作って「えいえいおー!」とベッドの上で意気込んでいたら、母が寝室に入ってきた。
「ミア、あなたもう大丈夫なの? 何だか元気みたいだけど…」
「あっ、母さん! う、うん、たぶん大丈夫だと思う。まだちょっと頭がグルグルするけどお腹は空いちゃった……!」
「そう……。夜ご飯はあなたの誕生日だからご馳走の予定だったけれど、食べれそう? 無理そうなら、消化の良いものでも作るけれど……」
「もちろん食べられるわ! ありがとう、母さん!」
前世のことを少し思い出したからと言って、7歳までの私が消えるわけではない。前世の家族のことはあんまり思い出せないけれど、こっちの家族はちゃんと分かるわ。ほっ。食いしん坊度は増している気がするけれども。
ここで一度、記憶の整理をしておくわ。
私はミア。7歳。平民だから苗字はないわ。前世の私と変わらない、黒目に黒髪なの。今までは黒い髪があんまり好きじゃなかったけれど、前世の記憶が戻ると何だか馴染みがあってほっとするわね。
ちなみに髪の毛の色は、本当にランダムみたい! だって、私の父さんの髪の毛は黄緑色、母さんの髪の毛はピンク色よ。2歳の弟のケビンは青。遺伝の法則も何もあったものじゃないわ。
私たち家族は、辺境の田舎暮らし。特に裕福でもないけれど、田舎で暮らす分には全然問題ない。裸足で走り回って、木から果物をもぎ取ったり、ハーブを採取したり、キノコ狩りをしたり、スローライフという意味では、とても贅沢な暮らしなんじゃないかな? ビバ、スローライフ!
そんなことを布団の上でつらつらと考えていたら、キッチンから良い香りが漂ってきた。うふふ、夜ご飯の時間ね!
いそいそとリビングへ向かうと、そこには仲良く夜ご飯の準備中の母さんと父さんがいた。ケビンはすやすや寝ている。
「ミア、木から落ちたと母さんから聞いたぞ。もう大丈夫なのか?」
「うん! もう大丈夫!」
「私も手伝う!」お皿を食器棚から出して、カトラリーを並べていると、食事がどんどん食卓に運ばれてくる。3人で食べ切るには多いんじゃない?
「あ、ミア、カトラリーはもう1人分出してくれるかしら? 村長もいらっしゃるのよ」
「村長? なんで?」
「村の子の7歳の誕生日には、村長が出席するっていう決まりが昔からあるのよ」
「へぇ〜知らなかった」
私たちの村は、人は少ないがとにかく広いので、家族以外の人に合うことがほとんどない。村長にも1年に1度のお祭りの時にしか会ったことがないのだ。
ドンドンと玄関の扉を叩く音と「お〜い、来たぞ〜」という声がする。
「村長が来たみたいだわ、ドアを開けてきてくれる?」
「分かった!」
引き戸の玄関の扉に走り寄ると奥に人影が見えた。ガラガラと開けると、白いお髭の村長さんがいた。
「いらっしゃい、村長さん!」
「ふぉふぉふぉ、今日はお招きありがとう。ミア、7歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう!」
私を囲んでの誕生日会が始まった。今日のメニューは、父さんが捕まえた、なんだか知らない大きな鳥の丸焼きだ。この鳥は捕まえるのが難しいんだって。でも、すごく美味しいの!
「この鳥、よく捕まえることができたな。食べるの久しぶりじゃぞい」
「はっはっは、裏の山に入って行ったら、ちょうど木の上で一休みしているところを見つけられたんですよ。気付かれないまま、射ることができました」
「気付かれないままって、どんだけ遠くから射ったんじゃ……さすがじゃな」
実は父さんは村一番の射手なんだって! その調子で母さんのハートまで射抜いたってわけ。だって、二人は本当に仲良しなの。
私だっていつか、素敵な旦那様を見つけて……。いや、まずは旦那様よりも、猫よね! 猫!!
今世の私は、猫をひっくり返して、お腹に顔を埋めてスーハーする「猫吸い」を絶対にするのだ……!
密かに決意を固めていると、食後のデザートの時間になった。デザートは、私の大好きなアップルケーキだ。母さんの作るアップルケーキは林檎たっぷりでしっとり爽やか、とっても美味しい。砂糖の代わりに蜂蜜を使う。前世よりもある意味贅沢だ。
アップルケーキをうまうまと頬張っていると、玄関の扉をペシペシと叩く音がした。お? こんな時間に誰?
街灯もない夜は真っ暗なので(でも星空はとっても綺麗)、普通は外を歩かないのだ。村長さんも、泊まっていかれる予定なのに。
「こんな時間に誰が? 動物がぶつかったのか? 念のため、俺が見てくるよ」
と父さんが玄関へ歩いていく。好奇心旺盛な私はもちろん、父さんの後ろにくっついて行った。
「やっぱり動物がぶつかったか、風の音だったんだな」
玄関の引き戸の奥には人影なんてなかったから、そう結論付けてリビングに戻ろうとしたら、また「ペシペシ」という音がした。
思わず父さんと顔を見合わせる。なんの音……?
もう一度、外を見つめる。あれ? よーく見ると、引き戸の下の方に、なんだか可愛い影が見える。丸い顔に、ちょこんと三角お耳が見えるのだ……!
「猫! 猫だー!」扉に飛びつき、勢いよくガラッと開ける。
「おいっ、ミア……!」後ろから焦った声が聞こえるけれど、関係ないわ。危険な動物じゃないはず。だって、そこには猫ちゃんがいるのだ……!
猫ちゃんが……! あれ? 戸を開けたそこには、猫の頭にフクロウの身体をした生き物がいたのだった。あ、あれ…?
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