第67話勘が鋭いお父様
「さて」
一応クリスティンとバジルが、住んでいることになっている屋敷。
二人はその屋敷の前で彼女の父親――レスト前公爵が来るのを待っていた。
使用人の準備もばっちりだ。
表の通りの方から声が聞こえてて来る。
「王宮で会うには会うが、こういう場所だとなかなかな……」
そして、前公爵が姿を現した。
「急なことを言って悪かったね、ティーナ。バジル・セルヴィール殿も出迎えありがとう」
相変わらず前公爵はバジルのことをフルネームで呼んでいる。
ただし、偽名だけれど。
「いえいえ、お父さまこそお忙しいのに訪ねてきてくださってとっても嬉しいわ!」
ふふ、と笑顔をを浮かべ、クリスティンが彼を招き入れる。
「ラビニ、先にお茶の用意を。バジル様のお屋敷、素敵だと思わない? お父様」
「ああ、さすがだね。この柱の彫刻なんて特にいい」
よかった、寸前に大慌てで掃除したことはどっやらばれてはいないようだ。
もう二度とあんなことにならないよう、定期的にこの屋敷を掃除するようにした方がいい。
「二人が上手く生活できているか気になってね。そう言えば一度も屋敷を訪ねたことがないと思ってきてみたんだが安心したよ。こんどはアランドルの屋敷にもいってみようか」
あ、変なところに飛び火した。
お疲れ様ですアランドル。
アランドルの屋敷も今誰も住んでいないのであの大掃除もう一回である。
「ま、まあアランドルお兄様もお忙しいでしょうし、今度はもっと早くからおっしゃってあげてくださいね? もしかしたら不備があるかもしれないわ」
「確かにそうだね。こんどから少しは余裕を持たせるとしよう。もちろんすぐに行ってもレスト公爵家の者に仕えている使用人がいれば素晴らしい屋敷を見せてくれるだろうけど」
嫌味ったらしい言い方だ。
窓際に埃でも見つけたのだろうか?
素人が掃除したから仕方がない。
「お兄様やお屋敷の方はいいかもしれませんけど、ほら、ナイチンゲールがね? お父様とはあまり面識がないでしょう?」
「そうだね。ナイチンゲール嬢とはあまり会わないな。彼女のような人をどこで見つけたのか本当に分からないよ」
当たり前である。
だってナイチンゲールは貴族でもない、なんなら人間でもない、ジャンによって人間にされたただの鳥なのだ。
身元が不明すぎるので、どうして結婚できたのかは分からないが、本当に身元が不明なので流された可能性が高い。
「さあ、使用人の彼女がお茶を入れてくれているんだろう? 冷めてしまってはもったいないし、移動しようか」
「そうね」
ちょっと前公爵の勘が鋭すぎるので、やばいかもしれない。
「さて、バジル・セルヴィール」
「……なんでしょう……」
一息ついて突然話の矛先がバジルに向かったので、彼はほんの少し顔を顰めた。
悟られたらだめだよ。
「私の可愛いティーナとはどうなんだい?」
「お、お父様!?」
嫁姑話改め婿舅話である。
嫁のいない所でやって貰って。
「リスティはそこにいるだけで花になる。見れば気分も上がるから彼女には感謝している」
「無愛想な君とはかなり正反対だね」
完全に嫌味である。
本当にセルヴィール家が嫌いだな、前公爵。
「ちょっとちょっとお父様、バジル様のことをそんなに悪く言わないで!」
ここで娘の反撃だっ!
「いつもはこうして無愛想な感じだけれど、いつもはもっと色んな表情を見せてくれるのよ、お父様ももっと歩み寄ればいいんだわ」
「う、うーんそれは……」
ちょっとそれは前公爵にはハードルが高いと思うよ、クリスティン。
「そうやって歩み寄ろうとせず言うのは良くないのよ、お父様?」
「わ、わかったよ。ティーナはいつでも優しいね」
さすが娘に甘い前公爵。
しっかり甘々である。
レスト公爵家は仲良しだね。
うん。
うん……
――――――――――――――――――
書き納めでございます。
今年も一年ありがとうございました! 忙しかったりスランプがあったりでなかなか更新ができませんでしたが、待っていてくださった皆さん、新規で読みに来てくださった皆さん、本当に感謝しております。
来年も私、森ののかの作品『刻印の花嫁~姫の嫁ぎ先は闇の国~』『隣国の姫は絶世の美姫、隣国の王は冷酷狼。~(注、どちらも噂です。)~』『人気アイドルの生活は国家機密級!?~俺らの秘密はバレると超ヤバイ!』『城出王女と近衛騎士~王女様は嫁ぎたくないので城出することにした~』『夢見る王女と童話の王国~婚約者の王子様は私の初恋の童話の王子様と性格以外そっくりでした!?~』をよろしくお願いいたします!
来年はたくさん更新するぞ~!!
次の更新予定日は一月二日です!
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