第41話突然のお誘い

あけましておめでとうございます。

書き初めです


――――――――――――――――――


その日団員全員から背中を押され屋敷に帰ってきたクロフォードは、出迎えてくれたロゼッタにどう話を切り出そうか悩んでいた。

ビアンカたちからは誘い方まで指定されていない。

つまり彼が考えなければならないのだ。

エントランスから動かない彼を見て何かを察したのか、使用人たちが周りから応援し始める。

「明日は仕事が休みだから、私と一緒に出かけないか」

よし、これでいこうと決め、彼は口を開いた。


「ロゼッタ。明日私は仕事が休みだ。一緒に出かけてやってもいいぞ」


「は、はあ……ありがとうございます……」


遠くの方で、使用人たちが落胆する声が聞こえた。

当の本人ははっとした顔で今なんと言ったか思い返し絶望している。

だが謝罪だとかそういう言葉は出てこない。


「あ、あの、旦那様、晩餐が冷めてしまいますから早く食べませんか?」


「ん、ああ……」


歩き出したクロフォードの後ろをロゼッタが追って歩き出す。

さらさらの銀髪を眺めながらロゼッタはぽつりと、小さな小さな声で呟いた。


「どういう風の吹き回し……?」


彼女はクロフォードと自分は政略結婚なのだと思っていたので、まさか外出に誘ってくれるとは思ってもいなかった。

あれが誘いかどうかは審議が必要であるが。

悶々としながら廊下を歩いて、部屋についたので顔を上げる。

その表情は悩みなど吹き飛んだという顔だった。

そっか、仲良しアピールか。

これが彼女の答えである。



「よし、出来ました奥様! なんてお可愛らしい! これで旦那様も悩殺ですよ〜」


動きやすい軽めのドレスを着て髪をふたつに結った姿のロゼッタを見てフローラが満足そうに頷く。

そうかなあ、と納得いかなそうな顔で鏡をみながらロゼッタは立ち上がり朝食を食べに歩き出した。


「おはようございます旦那様」


「っ……! お、おはよう……」


目に見えて動揺したもののロゼッタは気づくそぶりもなく、相変わらず自分で椅子を引こうとしている。


「奥様」


「あ、ごめん」


慌てて椅子から手を離した彼女は慣れていなさそうな流れでぎこちなく椅子に腰かけた。

なにか言わねばとクロフォードが口を開く。


今日も綺麗だな。

「今日は綺麗だな」


使用人たちの盛大なため息が聞こえた。

当のロゼッタは気づいていない。

そして言った本人はまただ……という顔をしていた。



「足元に気をつけろ」


「あ、はい」


もちろんセラがロゼッタをおろしているのでクロフォードは手をつないでいない。

その様子を見て呆れている三人組がいた。


「はあ?」


「そこは団長がおろしてあげなさいよ~! ってか妖精姫可愛すぎない……?」


軽い男物の服を着たペルシオと、彼女の片腕ずつと腕を組んでいるビアンカとドロテア。

近衛騎士団員はロゼッタのことを見たことがないはずだから当たり前だ。

ペルシオは侯爵家の娘なので少しは見たことがあったのだが。


「確かに栗色の髪に薄茶色の瞳で一見地味な感じがするけど、髪はさらさらだし肌は綺麗だし顔立ちも可愛い! なんであんなに可愛いのに素直に好きって言えないの~!?」


肌は透き通るように美しく、薄ピンク色のくちびるは形よい。

身長も大きすぎず小さすぎずでスタイルもいい。

そして何よりも、彼女たちのいる位置から一瞬だけ見えた口を少し開けた時の横顔は、女神と形容してもいいほどだった。

彼女たちは知らないが、事実である。


「信じられない……あんな人間いたんだ……」


「実は神の子とかあり得るんじゃない……? じゃなきゃニンフだよ……」


若干迷いつつロゼッタの前に手を差し出したクロフォードに驚いたロゼッタだったが、彼女はおそるおそる彼の大きな手の平に自分の手をそっと乗せた。


「旦那様、無理なさってるんだったらいいんですよ?」


心配そうに彼女は彼の顔を覗き込む。

少し動揺したクロフォードだったが、口から出てきた言葉はこれだった。


「いや、はぐれられたりしたらこちらが迷惑だ」


後ろの方で誰かが盛大にこけた音がした。


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新年早々へたれを見せてしまい大変申し訳ございませんでした。

反省はしておりません()

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