第18話ルールーリアが聞いたこと
「クリスティン嬢は絶世の美少女と名高いんだろう?」
エルウィンが話し始める。
「国王陛下の正妃候補だとは聞いていたんだが妹によると国王は聖妃を溺愛しているらしいね。」
「そうですね。私の娘ほど正妃に似合う者はいないと思うのですが…… 国王陛下も困ったものだ。」
ははは、と苦笑いを浮かべる。
「そこでボクは思ったんだ。ぜひヒューベル王国の次期王妃、僕の正妃になってもらいたいってね。それでも国王陛下がいいというのならボクは何も言わないけど。」
窓の外で風が揺れた。
二人とも窓に顔を向ける。
鳥が羽ばたいた。
綺麗な青いナイチンゲールが、慌てたように飛び去って行く。
「おや、あれは幸せを運ぶと言われている青いナイチンゲールだね。何かいいことでもあるのかな?」
前公爵が笑みを浮かべた。
「さて、話の続きだが。こちらにも有益な話だ。このままでは適齢期を過ぎてしまう可能性もあるからね。あまりよく知らないだろうから、娘の話でもしようか。話を聞いてそれでも、というなら考えよう。」
「話の分かる方で助かるよ。」
パタパタパタ。
ジャン……バジルの仕事部屋に、ルールーリアが勢いよく飛び込んでくる。
誰もいないのを確認すると、ルールーリアはすぐに人間の姿になった。
「どうしたんだ、ルールーリア。忙しいんだぞ……」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!ジュリアが……ジュリアが!」
「ジュリアになにかあったのか!?」
勢いよく席を立つ。
「今公爵家で、隣の国の王子が妃にしたいって!」
「は!?ふざけるな!ルールーリア、先に帰ってジュリアに伝えろ!」
ジャンが聞こえない程度の大声で叫んだ。
「わ、分かった!」
「アランドル!こっちにこい!」
不機嫌を隠さずアランドルの腕をつかむジャン。
周囲にどよめきがはしる。
「バジル様、不機嫌すぎだろ……」
「アランドル様……ご愁傷さまです……」
「ちょっとバジル、なんかご愁傷さまですとか言われてるんだけど!?」
「知るか。」
ジャンはそう言うと、そのままアランドルを引きずって国王の政務室へと向かった。
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