異世界ゲートウェイ
桃邑梔
扉
第1話
いつもの天井を三秒程確認して、のっそりと起き上がる。
欠伸をしながら、カーテンを開けっぱなしにした窓から外を確認した。
「夜か」
だが、関係はない。
曜日も時間の概念も、山田登には不必要だった。だから、時計は見ない。もっとつけ加えれば、月日も季節も今の登の生活には全くの意味を成さない。
そこまで言えば、ひきこもりかと勘違いされそうだ。
「会社に行くか……」
登は出社の準備を始めた。洗面所へ行き、顔を洗う。歯磨きしながら、用を足す。台所に戻り、冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出し飲み干す。
すぐに黒スーツに着替えて、玄関へ。玄関に置いてある姿見をチェックする。至って普通の平凡な顔。黒髪、黒目の日本人。背だけは高い。登が唯一誇れるのは背丈だけだろうか。真っ黒なスーツのせいで、その背丈が際立っている。
雰囲気イケメンになれるものを、何もしない伸ばし気味の髪のせいで台無しな風貌だ。
目も耳も隠れ放題の伸びた髪に、黒縁眼鏡。黒スーツの長身細身の男。一見したら、視線を逸らしたくなること間違いなしである。
登は姿見に映る自身に皮肉な笑みを向けた。それが、登にとっての『いってきます』である。
玄関を開ける。
「満月綺麗だな」
月を一瞥してから、登は一歩踏み出した。二歩、三歩。出社完了。
『異世界ゲートウェイ』
登は隣家の扉を開けた。
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