第1730話 最後まで行動を共にする覚悟
鬼人族の族長である『
何故なら『妖魔団の乱』に身を委ねた妖魔達の狙いが、彼ら妖魔召士であったからに他ならない。
そしてその『妖魔団の乱』を引き起こす事となった鬼人の『
(小生らがようやくこの場で得た情報でさえも、サイヨウ様であればすでに得ていた可能性も否めぬ。もしかするとサイヨウ様がこの世界から去った理由というのも、この妖魔団の乱という事変に関連した何らかの理由が関係していたのかもしれぬな……)
妖魔召士のエイジは顎に手をあてながらそう推測すると共に、ゲンロクもまた目を細めながら思案の海に潜る。
(成程……。サイヨウ様が突然居なくなったのには驚かされたが、紅羽や朱火を『式』になされたのには、この『妖魔団の乱』に関係する理由があったのやもしれぬ)
この場に居る『エイジ』や『ゲンロク』達は、鬼人女王の『紅羽』や、妖狐の『朱火』といった妖魔達が『サイヨウ』の『式』とされた事実を知っていた為、サイヨウがすでに彼女達を『式』にしているという事実を省みて、今知らされた情報をサイヨウ自身はすでに得ていて、その上で被害を食い止めるために『式』にしたのかもしれないと推測を続けるのだった。
妖魔召士の中でもサイヨウの直弟子であった『エイジ』や、当時の四天王であった『コウエン』達は『妖魔団の乱』の主だった者達をたった一人で相手取り、苦戦を強いられながらも何とか収めた上で彼女達を『式』にして見せた事を知っている。
――それも禁術を用いた望まぬ契約ではなく、彼女達に納得させた上での従来の妖魔召士の『式』契約である。
そして『サイヨウ』は『妖魔団の乱』が収まって瞬く間にこの世界から去ってしまった。
妖魔召士組織に属する他の四天王たちには別れの挨拶を告げたというが、直弟子であった『エイジ』には結局顔すら見せなかった。
後に四天王の妖魔召士である『
伝承によれば『転置宝玉』とは膨大な魔力を吸い取って術者を別世界へと送るものであるらしく、管理を行う事が出来るのは『妖魔召士』を束ねる長だけであり、一介の妖魔召士であったエイジにはそれ以上のことを調べられる権限もなく、その時は『サイヨウ』が何処へ向かったのか、悔しくも知る事が出来ずに終わってしまった。
――しかし今のエイジは、
そして偶然にも何処へ行ったのか分からなかった『サイヨウ』の居場所は、ソフィという別世界から来た『魔族』達から無事であることを知らされた。
サイヨウがこの世界から去った理由として、かつての『妖魔団の乱』と引き起こした『紅羽』や『朱火』を『式』にした事が関係している事は、すでに可能性としてエイジも考慮は出来ていたが、そこに新たに鵺の代表格である『真鵺』の名が出てきたことはエイジも初耳であり、少なからず衝撃を受けるのだった。
エイジは過去にあれだけサイヨウの足取りを掴もうと願い多くの行動を起こしたにも拘らず、あれだけ手を尽くして何も分からなかったというのに、ソフィ達と知り合う事が出来た事によって、トントン拍子に謎であったことが解明されていく事に、縁というのは本当に不思議だと考えるのだった。
もちろん単なる偶然なのかもしれないが、あのままケイノトの裏路地でひっそりと今も暮らしていたならば、自身が再び『妖魔召士』組織に戻って組織の長となる事も、更にはこうして妖魔山の中腹に来る事はなかっただろう。
(毒を食らわば皿までだ。ここまできたら最後までソフィ殿と行動を共にして、行き着く先に何が待っているかを見届けようではないか……)
妖魔召士の長であるエイジは、奇しくもソフィと出会ってからここまでの情報を得る事が出来た。ならばこれからも彼と行動を共にすれば更なる情報を得る事が出来るだろうと、半ば確信めいたものを感じ取りながらエイジはこの『妖魔山』で共に最後まで行く覚悟を持つのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます