第1464話 ソフィの魔力吸収の地を体験するミスズ

 現在『妖魔退魔師』組織の本部の建物の中にある『牢』を含めた、そのひとつ前の一室で『魔神』の『聖域結界』とソフィの『死の結界アブソ・マギア・フィールド』が施されている。


 『魔神』が『結界』を張った後に、ソフィがその『聖域結界』に隠蔽してもらう形で『死の結界アブソ・マギア・フィールド』を張った為に、相当に『魔』に自信があるモノにしかこの場で可視は出来ていない。


 その証拠に『ミスズ』は本当に『結界』が張られているのかとばかりに疑問を持った程で、これから失礼を承知で試させてほしいと願い出たのだが、それを聴いた『魔神』は『ミスズ』に対して『ソフィを信用していないのか!』とばかりに静かに苛立ちを見せていた。


 そしてこの『結界』の中で『ミスズ』はゆっくりと自身の得の刀を鞘から抜くと『青』で『形成付与』を行い始める。


 ――次の瞬間、ミスズの『形成付与』を行おうとする『魔力』に対して、ソフィの『魔力吸収の地』が発揮された。


「!?」


 いつものように行おうとした『青』による『形成付与』だが、少量の『魔力』しか使わない筈だというのに『魔力枯渇』を引き起こした時のように、ミスズは発動が確認出来なかった。


 更にはその消費しようとした分の『魔力』がごっそりと奪われる感覚を味わい、ミスズは驚きで目を丸くするのであった。


「『魔力』を抜き取られるっていう感覚を理解出来たようだな? 今行った『オーラ』分の使おうとした『魔力』は全てコイツに奪われたってわけだ。たったそれだけの『魔力』でも奪われる感覚は存外に大きく感じただろう? だが、コイツの『結界』のやべぇところは、一度張った場所で半永久的に続けさせられる事だ。こいつの『結界』の内側で強引に動けなくされた挙句に、一方的に攻撃を加えられたところを想像してみろ。それも防御手段となる『魔力』は全て吸収されるんだぜ? 挙句にそこまで苦労して『魔力』を伴った『魔法』の効力は一切発動されないときたもんだ。それも一人二人じゃなくて『結界』に取り込まれた連中はその全ての生物が対象ときやがる。やってられねぇよ……」


 どうやら大魔王『ヌー』は目の前で『死の結界アブソ・マギア・フィールド』の効力を理解したであろう『ミスズ』に講義を行うように、滑らかに喋り始めるのだった。


 その饒舌さを省みるに、彼は余程このソフィの張った『結界』に苦い思い出を抱いていたのだろうか。彼は喋っている時も相当に不機嫌な様子であった。


「ああ……。ヌーの言う通りなんだよな。それも旦那の『死の結界アブソ・マギア・フィールド』は『魔力枯渇』を引き起こさせて終わりじゃない。むしろそれからが本領というように『魔力枯渇』を引き起こした連中から遠慮なく『生命』を対象に奪っていくんだ。それも自動的にだぜ? 戦闘中であればその『魔力』を気にしていたら旦那の『極大魔法』で消し炭だ。対策は『如何に魔力を使わずに逃げ回れるか』これしかないんだ。この旦那を相手に魔力を使わずに逃げ遂せる連中を俺はまだ見たことがない」


 大魔王ヌーだけではなく『煌聖の教団こうせいきょうだん』の大幹部であった、大魔王『セルバス』もヌーと同様にソフィの『死の結界アブソ・マギア・フィールド』の説明を始めるのだった。


 どうやら彼も過去にソフィの『死の結界アブソ・マギア・フィールド』を考察したのか、相当にこの『結界』に関して詳しい様子であった。


 ミスズは自身が体験をした事でようやく『ヌー』と『セルバス』の内容を理解する事が出来たのであった。


(成程……。我々『妖魔退魔師』達であれば『オーラ』さえ使わなければ、たいしてそこまでの影響を受けないようですが、自分がもし『妖魔召士』の立場であったならば、確かに『魔力』を封じられた状態で戦う事は困難を極めるでしょうね。これは『牢』から脱獄を防ぐという事に関しては、充分に適しているといえるでしょう)


 もちろん『牢』の内側から手足を縛って、目隠しまでをしている『ヒュウガ一派』達が外へ出る事をそこまでは心配をしていないが、ミスズは外からの侵入者の可能性を踏まえた上で、そう結論付けたのであった。

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