第1395話 戦いたくのない相手
圧倒的な力を以てランク『8』の妖魔である『
(やはり全力で『
大魔王『ヌー』はこの世界に来てから大きく変わった点がある――。
それはもちろん強さという一点も変わったといえる点だが、それ以上に変わった点というのは『ヌー』自身に驕りがなくなった事であった。
これまでならば『
それはこの世界に来た事で周囲のレベルの高さを知った事で『ヌー』自身が反省を必要と考えるようになったからであるといえよう。
この世界に来る前もソフィを『
ヌーがこれまでよりも強くなる為に必要な『
『
――今、大魔王『ヌー』は恐るべき速度で強くなっている最中である。
そしてその事をヌー自身が理解しているという事が重要な点であった。
また一つ『武器』を携える事に成功したヌーは、自身が定めた『仮想敵』の居る頂を見据えながら強くなろうと考えている。
そしてこれからも大魔王『ヌー』は
彼の見据える先に居る『アレルバレル』の世界
……
……
……
『
――『妖魔退魔師』の多くの隊士を束ねる立場にある副総長『ミスズ』。
そのミスズが戦闘態勢に入ろうとしているところをみた『ヒュウガ』は舌打ちをしながら眺めていた。
こうなってしまった以上は、この化け物である『ミスズ』と戦う以外に選択肢は残されてはいないだろう。
しかし『ヒュウガ』にとっては、このミスズと戦う事は是が非でも避けたい事なのであった。
ハッキリと言って『ヒュウガ』にとっては『ミスズ』の存在は、あの袂を分かつ事となった『妖魔召士』の暫定の長であった『ゲンロク』と戦う事よりも厄介な事だと思っているからである。
ゲンロクも『妖魔召士』組織に所属する『妖魔召士』の中でもズバ抜けた『魔力』を有しているが、戦闘ともなれば『ヒュウガ』もまたそのゲンロクとある程度は渡り合える事が出来る。
ゲンロクもヒュウガも『最上位妖魔召士』と呼ばれる程の膨大な『魔力』を有しており、互いに『式』を必要とせずに自らの『魔力』を使った『捉術』を主戦場とする戦い方に秀でている。
素の『魔力値』が高いという事は、その『魔力』を活かした戦い方を可能とするという事であり、それは『捉術』一つを取っても『最上位妖魔召士』とその他の『妖魔召士』達とでは大きな差が生じるのである。
当代の『妖魔召士』組織に所属する『妖魔召士』で『最上位妖魔召士』として活動を行っている者は『ゲンロク』『ヒュウガ』『エイジ』『イダラマ』の僅か四人だけであった。
そして妖魔ランクが『8』以上の妖魔と直接戦える『妖魔召士』は、この『最上位妖魔召士』達だけとされているのだが、今の目の前に居る『ミスズ』という『妖魔退魔師』もまた、そのランク『8』の妖魔と身一つで戦える存在なのである。
これまでは『妖魔召士』と『妖魔退魔師』の組織同士で争いがなかった為に、直接『妖魔召士』と『妖魔退魔師』が手を合わせる事はなかったが、互いに間接的に高ランクの妖魔と渡り合ってきた者同士である。
つまり直に戦えばある程度はどうなるかが予想がつくというものであった。
ヒュウガが『ミスズ』と戦いたくない最大の理由とは、そのランクが『8』に到達している妖魔達に対して『魔力』ではなく、物理的に渡り合えるという点にあった。
何故なら、ランク『8』の妖魔達の持つ『魔力値』と、ヒュウガのような『最上位妖魔召士』達の持つ『魔力値』はそこまで大差がないのである。
つまり『魔力』を主体にして戦う『妖魔召士』である『ヒュウガ』にとっては、その『魔力』を使った戦いを行うにしても、ある程度は使う『捉術』の種類を絞らなければ、ミスズには通用しないだろうと予測付いているといえるのであった。
確かに実際に手を合わせてみないことには、本当に通用するかどうかは分からない。
しかし一つ一つ試していく余裕がある筈もなく、命のやり取りを行う以上は隙の少ない攻撃を使って臨機応変に戦いを強いられる事になるのは間違いない。
他の『妖魔退魔師』達が相手であっても、決して余裕をもって戦えるというわけではないが、それでもこの『ミスズ』と『シゲン』の両名だけは直接戦いたくはないと、ヒュウガは常日頃思っていたのだが。
その日が遂に来てしまったヒュウガであった――。
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