最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

第1214話 三組の組長とその組の隊士達

「キョウカ組長。気付いていますか？」

「ええ、勿論よヒサト。結界を上手く張っているみたいだから、何処から監視されているのかまでは分からないけれど、これは『妖魔召士』達とはまた違う感じがする。推測の域に過ぎないけれど、これは『退魔組』の連中だと思う」

　ケイノトの町の周辺を見張っていた三組の組長であるキョウカは『ケイノト』の門の方を一瞥しながら話しかけてきたヒサトに返事をするのであった。

「この監視の意図はやはり『ヒュウガ』一派と関係があるという事でしょう。もうこのように見張っているだけではなく、直接『退魔組』に乗り込んで『サテツ』達を本部へ連れて行きませんか？」

　見た目からは想像が出来ない程に強攻的な行動に出ようと口にする三組の副組長『ヒサト』に呆れるような視線を向けるキョウカであった。

「馬鹿な事を言わないで。まだ裏も取れたわけじゃないのにそんな勝手な真似をしたら、今度こそ『妖魔召士』達と完全に武力戦争になるわよ？　それに……、あの怖い副総長が徹底的に私とあなたを責め立てるでしょうね」

　ヒサトはキョウカのその言葉に、絶望に打ちひしがれたような表情を浮かべるのであった。

「ふふっ。貴方のその顔をする理由は『妖魔召士』達と戦争になる事を心配しているんじゃなくて、ミスズに責め立てられる事を想像したのでしょう？」

　にやりと厭味な笑みを浮かべながら、自分の大事にしている『副組長（ヒサト）』に告げるキョウカであった。

「当然ですよ。俺からしたら現代の『妖魔召士』達よりも何倍も副総長ミスズ様の方が怖いですからね」

　正直な言葉を口にするヒサトに対して、堪えきれないとばかりに笑うキョウカだった。

「正直でよろしい。私も昔はその怖いミスズ様に何度も何度も怒られたから気持ちは分かる。あの子の正体は『鬼人』かもしれないわよ？　それもとびっきり狂暴で手のつけられない鬼人の女王様かもね」

「はははっ！　やめて下さいよ」

「ククッ、貴方本当にミスズを鬼人と思ったでしょ？　今度会った時にミスズに報告しておくからね」

「ちょ、ちょっと！　本当に勘弁して下さいよ、キョウカ組長！」　

　キョウカとヒサトの会話を聞いていた他の三組の隊士達も、つられて笑い始めるのだった。

「それで冗談はこの辺にしておくとして、どうやらこの監視は組織的に行われている事はやはり間違いはない。私も『魔力』を感知するような事は出来ないけれど、奴らが交代をする時に僅かながらに『結界』が張られているところと、その周囲の違和を感じ取った。どうやらこの時間帯にこっちを見張っている連中は、ケイノトの門がある所から西側の方角に移動してこちらを見ているようね」

「流石はキョウカ様ですね。このままもう少し泳がせておいて、もう少し場所を絞り込むことが出来たらその周囲一帯を調べる行動に出てもいいですか？」

「手を出すような真似は駄目だって言いたいところだけど、流石にこのままだといつまでたっても埒があかないからね。明日まで待って『ヒュウガ』一派の者達が姿を現さなければ、こちらから行動を起こすとしましょうか」

　キョウカがそう言うと、副組長の『ヒサト』はケホケホと咳をしながら首を縦に振るのであった。

「ヒサト……。今日はもう休みなさい」

「いえ、大丈夫です。俺はまだ動けますよ、キョウカ組長」

「これは命令ですよヒサト。明日貴方には無理をしてでも動いてもらう事になるでしょうから、しっかりと休んでちょうだい」

　キョウカの目を見ていたヒサトだったが、やがては根負けしたようで溜息を吐きながら頷くのであった。

「分かりました、それでは申し訳ありませんが先に休ませていただきます」

「ええ、そうしてちょうだい」

　ようやく休むと口にしたヒサトに、満面の笑みを浮かべて嬉しそうにするキョウカ組長だった。