第1174話 天狗の妖魔と上位妖魔召士
(昔から人型になれる妖魔は稀有な例でランク『3』。少なくともランク『4』以上ならば、大半の妖魔は人型をとれるようになるといわれていた。そしてシグレの話す特徴を持った妖魔は恐らく
色々な妖魔が居るこの世界だが『
そして今『妖魔退魔師』側の組織で確認が取れている『天狗』は確か『
もちろん他にも確認が取れていない『天狗』の妖魔も居るだろうが、最近会合を行った『ゲンロク』の里に『ヒュウガ』の一派の姿はなくなっていた事を考えると、時期的に考えて『天狗』を使役したと見られるのは、この『ヒュウガ』一派の『ジンゼン』で間違いがないと見ていいだろう。
『王連』と上位の『妖魔召士』が複数人現れたのならば『旅籠町』の護衛隊達だけで何とかするという事は不可能である。最高幹部の組長クラスか、少なくても副組長を指揮官として、数名の『妖魔退魔師』で対処にあたらなければならない程の事態と言えた。
「シグレ隊士。その妖魔が『コウゾウ』に手を掛けたのですか?」
「そうなのだと思われます。私が目を覚ました時には奴らは影も形もなくなっていて、座敷牢には捕縛していた『妖魔召士』達の姿がなく、そこ……、に、コウゾウ隊長の亡骸が……!」
喋っていく内に目に涙が溜まっていくシグレだった。
「思い出させてしまったわね、ごめんなさい」
ミスズは必死に涙を流すまいと堪えるシグレを、自分の胸に抱き寄せて謝罪をするのだった。
「くっ……!! うっ、ううっ……!」
誰よりも信頼して付き従っていた『コウゾウ』の死を間近で見た事は、まだ10代半ばの年齢のシグレには余りにも辛すぎる出来事であっただろう。本部に連行されてきたシグレが、捕縛した『妖魔召士』達に向けた感情も今となってはミスズにも理解が出来る。
そして近しい者の死を目の前で見せられた事による影響は、容易に10代半ばの少女の精神を破壊してしまう。彼女は『コウゾウ』に手を掛けた者達を憎む事で、何とか自我の崩壊だけは本能で堪えたのだろう。
(いや、目をどす黒く変えて躊躇無しに相手の命を奪おうとした、あの時のシグレ隊士の様子を省みるに完全には自我を抑えられているとは言えないかもしれないわね)
シグレ隊士はじわりじわりと憎悪に浸食されていっている可能性がある。まともな部分も残っているが故に周りにも気付かれる事もなく、また本人もまた気付いていないのかもしれない。
恨むという気持ちを長い期間持ち続けていき、果たされる事がなく胸の内に抱き続けていくと、だんだんと自分を正当化しようとする脳の働きから、自分こそが正しく相手が悪いという気持ちが強くなっていき、最終的には自分の正当性が認められない事に疑問に変わってしまう。そうなれば次の行動に移るのも決しておかしくはない話である。
彼女はそれでもこの『サカダイ』まで、憎悪を抱きながらでも自分を律してこれている。それだけでも十分に驚嘆に値すると同じ経験を過去に持つミスズは、胸中でシグレの強さを認めるのであった。
(何か彼女をあと一歩というところで
ミスズは胸の中で泣き続ける10代半ばの少女の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと理解していくのであった。
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