第1084話 妖魔山の存在と、イダラマ達

「どうやらその様子だと、何か心当たりがあるようだな?」


 目聡くスオウの様子を見ていたソフィが口を開くと、真剣な表情を浮かべたままスオウは軽く頷いた。


「いや、しかしまだ『妖魔召士ようましょうし』達の里から総長達が戻ってきていないのに、向かう筈が無いと思うんだけどね」


 何やら心当たりがある様子のスオウだが、煮え切らない態度で歯切りの悪い言葉を連ね始める。


「そのイダラマって『妖魔召士ようましょうし』は、今の『妖魔召士ようましょうし』組織はトップ側がガタガタで、いつ長が入れ替わるか分からない状態だから『妖魔召士ようましょうし』達が管理している『妖魔山』の管理を俺達『妖魔退魔師ようまたいまし』側に管理をさせてほしいと伝えて来たんだ。それでさっきも言った通り『妖魔退魔師ようまたいまし』と『妖魔召士ようましょうし』が決めた取り決めを向こうが破ったから、そのけじめを取りに『妖魔山』の管理を移させようと、総長達が『妖魔召士ようましょうし』達の里に向かったわけなんだけど、もしかしたらイダラマは『妖魔召士ようましょうし』から『妖魔退魔師ようまたいまし』に山の管理を移させた後に、自分達が『妖魔山』へ入って、なのかなって……」


 そこまで言い切った後、スオウは何かに気づいたような表情を浮かべた。


(もしかして副総長は『イダラマ』が山に入るかもしれないから、それを阻止するように俺に見張っておけと言いたかったのか?)


 唐突に思案顔を浮かべるスオウに、ソフィとヌーは顔を合わせる。


「じゃあその『妖魔山』だか何だかに『イダラマ』って野郎は向かったんじゃねぇのか?」


 見え見えじゃねぇかと言わんばかりにヌーがスオウにそう言うと、スオウは『やっちまった』というような表情を見せる。


「それではつまり『エヴィ』もその『妖魔山』とやらに、向かっているという事なのだな?」


 ソフィがそう言うとスオウは素直に頷いた。


「しかし分からぬな……。イダラマとやらも『妖魔召士ようましょうし』なのだろう? 同じ『妖魔召士ようましょうし』がその山を管理しているのならば、お主ら『妖魔退魔師ようまたいまし』側に話を持ち掛けずとも勝手にそのまま山に入ればいいのではないか?」


 セルバスやヌーもソフィのその言葉に、確かにその通りだと言いたげな表情を浮かべるのだった。


「それは出来ないでしょうね。彼はシギン殿の代からゲンロク殿の代に体制が変わった後に『妖魔召士ようましょうし』の組織から抜けていて『妖魔山』に入るどころか本来は、ゲンロク殿達の里にも出禁状態の筈です」


 サシャが詳しい説明を行うと、それまで項垂れていたスオウが言葉を付け加えた。


「イダラマって『妖魔召士ようましょうし』は同じように組織を抜けている『エイジ』殿とは違って、今代の『妖魔召士ようましょうし』達から半ば、絶縁されているような状態で抜けさせられていたようだからね。そりゃあ『妖魔召士ようましょうし』側が山を管理しているのならば、うちが管理している時以上に入る事は困難だと思うよ」


「分からないな……。その『妖魔山』に入るのが目的だったのならば、脱退させられるような状態になる前に、勝手に入ればよかったんじゃないのか?」


 それまで黙って話を聞いていた『セルバス』が『スオウ』達に口を開く。


「そんな事を俺達に言われても分からないよ。別に山に入るだけなら『妖魔召士ようましょうし』を敵にする覚悟があるならば誰でも入る事は可能だし、何かこれまで入らなかった理由でもあるんじゃない?」


 そんなのは当人でも無ければ分からないよとばかりに、セルバスに説明するスオウであった。


「確かにその通りだな。まぁイダラマとやらが今になって『妖魔山』に入った理由などはどうでも良いが、エヴィもその場に居るというのならば、我達も『妖魔山』とやらに入りたいのだが……、当然何か許可みたいなのが必要なのだろう?」


「もちろん当たり前だよ。そもそもまだ『妖魔召士ようましょうし』達が山を管理しているし、俺達に山の管理を移すのかどうかすらまだ分かっていないよ。まぁでも俺達『妖魔退魔師ようまたいまし』の組織の人間を襲ったんだから、遅かれ早かれ山の管理をこっちに譲り渡す以外、奴らは選択肢がないけどね」


 そう告げるスオウの言葉を聞きながらソフィは、その総長とやら達がゲンロク殿達の元から戻って来るまでは大人しく待っている他に無いだろうなと、半ば諦めるような表情を浮かべるのであった。

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