第1054話 妖魔山の管理問題
ゲンロクの里から帰還したヒノエ達は、直ぐに『
そしてそのイダラマ達は『
今後の事を話す為に『ヒノエ』からの報告を受けた総長シゲンは、副総長ミスズを本部の会議室に呼び出したのであった。
「総長、今回の一件の事なのですが、本当にイダラマ殿の話を優先して良かったのでしょうか」
「ヒノエが言っていた奴らが提示した条件の事か」
「うちの管理している土地に入り込んだ一件だけで『コウヒョウ』の利益と護衛料の上乗せは、相当に大きい益の話です。余計な問題を増やし兼ねない『
確かに今後『
しかしこの数年はランク『8』以上の妖魔が山から降りて来て、災いを引き起こすような真似はしていない。つまりはこちらから何もしなければ『妖魔山』はそこまで危険はない筈だと双方の組織も考えているのである。
コウヒョウの条件を蹴ってまで『妖魔山』の管理権を得る事にミスズは、魅力を感じる事が出来なかった。それにあのイダラマという男をミスズは、信用ならない人間だと考えているのであった。
(突然やってきてこれまで何年、何十年と山の管理を『
先日の話し合いの場でイダラマが言っていた『
(私達『
副総長ミスズはイダラマが何を目的に動いているのか、それを探り当てたいとこの時から考え始めるのであった。
(ひとまずは今回のヒノエ組長の一件で『
心の中でそう結論を出しているミスズは、自分に総長から視線が向けられているのに気づいた。
「あ、す、すいません……。少し考え事をしてしまっていて……!」
シゲンが何も喋っていなかったという事には気づいているが、総長の前だというのに心ここに在らずという態度を取ってしまった事をミスズはシゲンに詫びるのであった。
「気にするな。お前が組織の事を想ってくれている事はよく知っている。あのイダラマ殿の事を考えていたのだろう?」
「は、はい……。おっしゃる通りです」
考えていた事を言い当てられてしまったミスズは素直に白状するように頷いた。
「いいかミスズ。これは『コウヒョウ』の条件などより『妖魔山』の管理権を得る事は、俺達にとっては最大の
「え?」
どういう意図か分からずミスズは、口を挟まずにシゲンに視線を送る。
「お前も知っての通り、各地に蔓延っている妖魔達は、元々は全て妖魔山に居た妖魔達が原因だ」
このノックスの世界に妖魔が出現し始めのは『
「そして俺達の所属する『
――それはかつてこの世界の平和を守る為に、妖魔山に蔓延る妖魔達を完全に滅ぼそうとした両組織が結託して攻め込んだ『
その『妖魔山制圧作戦』が失敗に終わった後、更にその後の数十年の間は何度か『妖魔山』を制圧しようと企んだ組織の人間が居たようだが、その全てが失敗に終わってしまった。
『
そしてその時代の者達によって、ランク『9』以上の妖魔が居る区域は『
その禁止と決めた両組織の時代が長かった為『妖魔山』のランク『9』以上の区域に入る事は、禁忌の行いと認識されていった。
その所為で今日まで妖魔山の高ランクの居る場所へは立ち入らず、また入るという事を考える事すら、許されなくなってしまい、現在でもランク『9』の妖魔ですら『妖狐』と見た目が『鬼人』の妖魔が居る事しか分かってはおらず、ランク『10』の妖魔に至ってはどんな生物が居るのかすら分かってはいないと表向きはされているのである。
しかし当代の『
その詳細や結果は当然知らされてはいないが、ランク『9』の妖魔すら討伐されたという話が表に出てこない以上、結局は失敗に終わったのだろう。
だがシゲンがその事を知った時、いつかは自分もその場所に入りたいと、そしてランク『9』以上の妖魔と戦ってみたいと考えていたのであった。
(過去に『
前時代では『
そしてそんな彼らの時代が来たと同時に『妖魔山』の管理を得る好機が舞い込んできたのである。
『
シゲンはミスズにこの事を話しながら、静かに心の中で闘志を燃やしているのであった。
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