第1030話 憤懣
イダラマ達は町の護衛らしき者達の視線に晒されながらも特に何かをされる事も無く、無事に『
旅籠町にあるような『予備群』の屯所や、ケイノトにある『
「それじゃあイダラマ様、少しここで待っていてもらえますかい」
「まずはワシらが顔見知りの『
イダラマの護衛を務めているアコウとウガマはそう言い残すと、建物の前に立っている『
「イダラマ、気づいているかい?」
「ああ、もちろんだよ『
エヴィとイダラマは、アコウ達が居なくなった後に小声で話し合う。
「ねぇイダラマぁ? 君がどういう話をここの連中にするつもりか僕はそれを知らないし、興味も無かったんだけどさ。もし失敗して
「ふっ、そんな心配はいらぬよ。
睨みあっているとまでは言わないが『大魔王』である『エヴィ』と『
どうやらエヴィがこの事を口に出した理由は『ゲンロク』の里を襲撃した時よりも、この視線だけで
すでにエヴィはこの世界が大魔王領域の魔族が多く居る『アレルバレル』の世界よりも、強き者が多く居る事を理解し始めていた。
――『天衣無縫』の異名を持つ九大魔王『エヴィ』。
『魔』に突出している者や『武』に長けている魔族が多い大魔王ソフィが選んだ『アレルバレル』の世界の『九大魔王』達。
ソフィが九大魔王に選んだ理由は持っている強さだけではなく、自分の持つ強味に溺れる事なく、常に前を向いて今後も研鑽を続けていける者達である。
そしてこの『エヴィ』もまたソフィに『
彼がイダラマという一癖も二癖もある人間と行動を共にする理由は『
彼は別世界から『アレルバレル』の世界に跳んできたユファのように『
しかしその九大魔王の大先輩である『ユファ』先輩のおかげで、元の世界に戻る方法は必ずある筈だと『エヴィ』は考える事が出来たのである。
エヴィは必ずこの世界から『
(この世界に跳ばされたのが僕で良かった。待っていてくださいね、ソフィ様! 貴方が『アレルバレル』の世界に戻られる前に、僕がこの世界の使える人材を配下にして、先にアレルバレルの世界に戻り『
エヴィが心の中でそう考えていると、アコウとウガマの二人が建物から出てきた。そのアコウとウガマの二人は、ほっとしたような表情を浮かべていた。
どうやら中で話がついたようで『
エヴィがイダラマと交わした契約はまた一つ上手く進んだという事だろう。そう考えたエヴィがあらゆる感情が入り混じった笑みを浮かべていると、イダラマに報告を続けていたアコウとウガマは喋っている途中であったが、邪悪な笑みを浮かべているエヴィを同時に見る。
『
「イダラマ。もう中に入っていいんだったらさ、早く入ろうよ。僕も色々とこの鬱陶しい視線に我慢が出来なくなってきちゃったよ……」
イダラマに向けられていた数々の視線が、先程からエヴィへと向けられていたのであった。
「ふっ、そうだな『
「「は、はいっ! い、行きましょう!」」
アコウとウガマを先頭にイダラマとエヴィ達も『
…………
「中から指示が出るまで入り口を固めておきなさい」
「既に『一の門』と『二の門』。そのどちらにも『
「そう、ご苦労様。じゃあ私も中に入るから、指示をすぐに受け取れるようにしておきなさいね」
「分かりました、お任せください『ヒナギク』様」
配下の『
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