第933話 突きつけられた現実
どうやらヌーはエイジの力についてはもう自己解決したようで、それ以上の質問等は無かった。エイジはもう少し色々と聞かれると思っていた為に、少しだけ肩透かしを食らったが、それでもヌーという男が力の探求に諦観したわけでは無く、今はまだその時では無いと、彼の中で判断しただけだという事を理解しているエイジは、納得した様子で頷くのであった。
「小生達『
しかしそこでどうやら話が終わるような事は無く、一段落したと思った話には続きがあったようで、ヌーは取り換えたグラスを一度手元に置いて喋り始めたエイジの方に視線を向ける。
「目か……。しかし俺はさっきもお前に視線は合わせていたが、こちらの『
ヌーの言葉には諦めているような、含みのあるような言い方だったが、決して諦観しているワケでは無い。他意があるわけでは無く、ただ単にそこにある現実を淡々と告げただけであった。
「『
「ふっ……」
ここで初めてヌーは脱力したような笑みを浮かべて、視線に諦めの色を見せた。
今エイジが告げた言葉の中に含まれた、本当の意味にヌーが気づいた為であった。あくまで今エイジが言った『
その事に気づいて尚、ヌーは持論を展開する為に口を開いた。
「実際にその目の影響を受けた俺の印象だが『
つまりお前が言うように、格上の野郎に『
魔力で劣る以上はその『
分かりにくかったが、これはエイジがヌーに対して『
『
『
これら多くの要素を相手に今のヌーでは、太刀打ちなど出来るワケが無い。しかしそれでも、この旅籠に来る前にヌーは元の世界へ帰る事を拒否して、この世界に残るという選択を取った。
だからこそエイジは仕方なく、
エイジはヌーの言葉を聞いて、グラスを傾けながら酒を呷る。そして空になったグラスをテーブルに置いた後、ヌーに頷きを見せるのであった。
「お主は元に居た世界では世界征服を狙える程に強い魔族だったかもしれないが、この世界では小生から見てお主はとるに足らない存在だ。それでもソフィ殿の助言を無視してこの世界に残ったのだ、そうであるならば、ソフィ殿にこの世界に居ても大丈夫だと、そう納得させるだけの立ち回りを覚えるのだ、ヌー殿」
ヌーはこの旅籠に来る前にソフィに向けられた殺意よりも、余程恐ろしい感覚を今、エイジに味わわされている。現実を突きつけられた状況で楽しく飲んでいた酒の気分は吹っ飛んでしまい、血の気が引いたように顔を青くさせながら、震える手で取り換えたばかりのグラスを握りしめるのであった。
……
……
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