第912話 虚偽報告が齎した歪曲思想
エイジはどうやら先程ヒュウガが言い放った言葉に対して相当に頭に来ているらしく、恐ろしい形相でヒュウガを睨んでいた。
「落ち着け、エイジ」
そしてそれまでヒュウガの様子を窺っていたゲンロクは、ある一線を越え始めたエイジの魔力を落ち着かせる為に制止させるようにそう声を掛けた。
「……」
エイジはその言葉に少し落ち着きを取り戻す。今ここでヒュウガに対して争えば、色々と取り返しのつかない事となる。深呼吸を行いながらエイジはソフィを見ながら軽く頭を下げた。
エイジが冷静になっていくのを確認した後、ゲンロクは背筋を伸ばしながらソフィを見る。
「お主達は『
先程ソフィ達の話を聞いていてゲンロクは、色々と思うところはあったが、まずそこが気になっていた。ヒュウガが申していた通り、適当なホラを並べ立てているにしては、余りにも事の詳細を知り過ぎている。
――『
『
確かにそう言った術式は間違いなく存在している。当然その術式を編み出したのは、ゲンロク自身である。では一体、それはどの立場でその場に居合わせていたのだ? 彼らはどこかで妖魔に襲われているところをタクシンに助けられたと言う事だろうか。 しかしそれにしては、余りにも不可解なところが多すぎる。
タクシンに助けられたのであれば、今のような態度でタクシンに対して貶すような言葉を使う筈が無いだろう。
――では共に妖魔と戦っていたという事だろうか?
そうであったとしても彼は退魔士では無いだろうし、当然『
そこまで考えたゲンロクは、最後が一番有り得ない事だと考えるのだった。万が一にでも彼らが『
(いや、
それならば『
相手が『
…………
ソフィ達に質問をしている最中にゲンロクは、色々と頭の中で考えを張り巡らせるのだった。
しかしやはりと言うべきかゲンロクは、これまでのヒュウガやサテツの謂わば洗脳染みた報告のせいで、タクシンは退魔組の模範的な立場の存在というイメージが先行してしまい、使役している『式』が、嫌がっているところを無理に従わせているという言葉は、想像が出来ないでいるようであった。
「何故知っているか。それは我達が直接『
「「!?」」
ソフィが正直に告げた事でゲンロクやヒュウガ達は当然の如く驚いたが、味方である『エイジ』もまた、ソフィが普通に真実を告げた事で目を丸くして驚くのであった。
ヌーだけがソフィの横で立ったまま、どう転んでも構わないといったスタンスで不敵な笑みを浮かべていた。どうやら彼はここで戦いになってもそれならばそれで構わないと思っているようで、肝が据わっている様子であった。
……
……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます