第833話 面倒な奴
シクウがソフィ達から離れてそのままケイノトの門の前まで向かっていった。そこでシクウに気づいた町の門人達は、何やら驚いた様子でシクウを出迎えている。
何やら門人の一人がシクウに問答を行っているようだが、そのまま門を開けて問答を行っていた門人がケイノトの町の中に入っていく。残されたシクウは別の門人と何やら会話をしているようだが、この位置からでは流石に何を話しているかまでは分からない。
少しして先程町の中に入っていった門人が、同じ狐面をつけた男を連れて戻ってきた。どうやらミカゲと呼ばれていた男が言っていた『退魔組衆』とやらだろうか。森で会った者達と同じ面をしている為、ソフィ達はそう判断するのだった。
再び門の前で会話を続けていたが、それを丘の上で見ていると、ふいにヌーがソフィに声を掛けてくるのだった。
「そういえば今更なんだがな……。お前『
隠幕とは姿と気配を完全に消す魔法の事であり、フルーフが考案して開発した『レパート』の世界での独自の魔法である。
「『
ソフィの告げた二つの魔法や呪文名前は、どちらもフルーフが編み出した新開発の技法であり、非常に強力な部類の物たちである。
アレルバレルの世界では『
この『
詠唱者も膨大な魔力を消費して行わなければならない為、大魔王と呼ばれる魔族であっても、魔王城に張っている『
「ちっ、仕方ないか……。しかし貴様はあれだな……。何でも出来る非常に厄介な存在の癖に、ここ一番で
ヌーは非常にダルそうな表情を浮かべながら、ソフィに向かってそう言うのであった。
「むっ……。中々言うでは無いか。我が使えない魔族だと言いたいのか?」
ヌーの物言いに少しだけソフィは傷ついたのか、いつもであれば聞き流すヌーの言葉に食って掛かるのだった。
「そもそも貴様程の魔力があるならば、想像を絶する程の神域魔法や『
信じられないとばかりに吐き捨てるように、ソフィにそう言って聞かせるのだった。横で話を聞いていたテアは、ソフィの話す言葉は理解していないが、契約者であるヌーの言葉を理解出来る為、二人の会話がヌーの言葉から何となくだが理解が出来ている。そして今にも喧嘩を始めそうなヌーの勢いに巻き込まれて、自分が戦えと告げられたら困るとばかりにテアは慌て始めるのだった。
「使えぬ物は仕方が無いでは無いか。我とて『レパート』の『
ブツブツとソフィにしては珍しい愚痴を吐きながら、フルーフにも不思議がられた『
「ちっ、てめぇが『世界間移動』を出来るならば、俺がいつまでもここに居なくてもすんだのによ」
ボヤいていたソフィだが、ヌーが今言った言葉を聞いて唐突にニヤリとするのだった。
「何笑ってやがる? 気味が悪い野郎だな」
「クックック、いやいや何でもない。さて、シクウの奴も町の中に入っていって時間が経つ。我たちもそろそろ向かおうでは無いか?」
「そうだな、さっさと行くぞ」
そう言ってヌーはソフィを先導するように歩き始めるのだった。その後ろを慌ててテアがついていく。
そしてその場に最後に残されたソフィは先程のヌーの言葉に、驚きと嬉しさが入り混じった感情を実感していた。
(クックック、お主は気づいて居らぬようだが、数千年前とは比較にもならない程に、
かつての『アレルバレル』の世界のNo.2であった頃のヌーであれば、面倒事を抱えた瞬間に放棄してソフィと別行動をとろうと画策していた事だろう。
しかし今は文句を言いながらでも、解決策を共に見つけようとする姿勢が見える。ただそれだけの事でもこれまで『アレルバレル』の世界に長く君臨してきた魔王は、ヌーが偶然では無く本当に成長しているという事に確信を持つのであった。
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