第766話 式神の種類
札を回収したサイヨウがチラリとレイズ城の上空に居るレア達を確認すると、一時的に結界を解除する。目の前で結界が解除された事を知ったレアとキーリは、こちらを見ているサイヨウの視線に反応を示して、そのまま結界の内側へと入ってサイヨウ達の居る場所へと向かっていった。
「む……!」
「レアさん?」
サイヨウに遅れてラルフとリディアはこちらに向かってくる二人に、ようやく気付いて顔をあげるのだった。
「久しぶりねぇラルフちゃん、それにリディアちゃんも!」
レイズ城の中庭に降り立ったレアがそう口を開くと、ラルフは薄く微笑みながら会釈をする。リディアは返事をしなかったが、視線だけはレアに注がれていた。
「お主はソフィの配下のレアといったかな?」
ラルフに挨拶をしていると、サイヨウがレアに話しかけてくるのだった。
「あなたがサイヨウさんねぇ? 私を助けてくれたってきいているわぁ、ありがとうねぇ」
そう言ってサイヨウに深々と頭を下げるレアであった。
その頭を下げるレアをじっと両目で見つめるサイヨウだったが、何かを察した後に笑って口を開いた。
「何、お主は小生が尊敬するソフィの配下だと聞いておる。小生は当然の事をしたまでの事、気に召されるな」
そう言って顔をあげたレアに、優し気な声色で告げるサイヨウだった。
「ラルフちゃんを強くしてくれているようだし、貴方っていい人なのねぇ」
しみじみとレアがそう言うが、そこで優しい顔をしていたサイヨウに少しだけ翳りが見えた。
「レアさんといったかな? 悪いが小生は
「んぅ……?」
素直に褒めたつもりだったレアだが、思っていた反応と違う言葉が返ってきた事で、少しだけ眉を寄せてサイヨウを覗き見るのだった。
サイヨウとレアが、互いに視線を交差するが、そこで今まで無言を貫いていた、一人の剣士が口を開いた。
「おいサイヨウ。そろそろいいだろう? 次は俺の番の筈だ。さっさと出してもらおうか」
「むっ……、そうであったな。小生はこの者達の修行をせねばならぬ故、優先させてもらいたい」
「ええ、中断させてしまってごめんなさいねぇ。あ、でも邪魔にならない所で見学はさせて頂いても構わないかしらぁ?」
「それはもちろん構わぬよ。それでは『結界』を少し張り直させていただこう」
そう言ってサイヨウは、再びレイズ城周辺に結界を張り直す。
そして今度の結界はレア達が見学を出来るように、周囲にも分かりやすく張り直してくれた。
「それではレアさん、こちらに」
先に戦闘を終えたラルフがレア達を見学できるように、結界の外側へと連れて行ってくれた。
「ありがとねぇ。それにしても貴方のさっきの戦いっぷりは見事だったわよぉ!」
「ああ。修行を始めた頃に比べたら、雲泥の差になったな」
レアとキーリが同時にラルフを褒めると、ラルフは無表情のまま首を横に振った。
「ありがとうございます。しかし私はまだまだですよ。少なくともこれからアイツが戦う『式神』を相手に出来るようにならなくてはいけませんからね……」
そう言ってラルフがリディアを見つめると、レアとキーリもつられるようにそちらに視線を移すのだった。
視線の先ではリディアが構えをとっており、サイヨウが先程とは違う色の札を手に取りながら何かブツブツと文言を唱えていた。
「今回お主が相手をするのは、これまでより遥かに格式の高い妖魔だ。つまりランクも跳ね上がる。準備は良いか?」
「ああ、いつでも来い」
サイヨウはリディアに確認をした後、白い札に手刀をきりながら詠唱を始めた。すると先程の魔物が消えたようにボンッという音と共に、一体の妖魔が出現を始めるのだった。
……
……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます