第702話 ヴァルーザ龍王の決死の龍呼

 ヴァルーザに向かって放たれた『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』は、スベイキア龍兵であるコープパルス・ドラゴンよりも火力も高い。


 戦力値40億の龍族の火であり『

 そしてこれまでであれば、相殺をする事がやっとのヴァルーザだったが、今回はその向けられた火に対してヴァルーザは『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を放つ準備すらしなかった。


(……何故やり返してこない? そのまま諦めて焼かれるつもりか!)


 火は真っすぐにヴァルーザと、その背後で倒れているシェアーザに向かっていく。

 そしてヴァルーザの元に、火が届いたかと思ったその瞬間。


 ――『龍呼ドラゴン・レスピレイ』。


 紅く光る目でガウル龍王の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を見つめた瞬間、ヴァルーザを覆う火は、その勢いがなくなったかと思うと、そのまま今度はヴァルーザが放ったかの如く、ガウル龍王の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』が跳ね返っていった。


「なっ……!?」


 自身が今も吐き続けている火は自制出来ず、そのまま自らの体に襲い掛かって来る。


「「ガウル様!?」」


 ガウルの側近達は慌てて自らの火によって、焼き尽くされようとしているガウルの元へ向かっていった。


 ――だが、それが自らの首を絞める行為になるとは、この時点では誰も理解出来ていなかった。


 なんとかガウル龍王は、自身の放った『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』から身を避ける事に成功するが、そこでヴァルーザの居た場所を睨みつけようとするが、さっきの場所には見当たらずに何処へ行ったのかと周囲を見回す。


 そこで自分に向かってメッサーガや、ジラルド達が向かってきているのを確認して、直ぐに奴を探せと、声を掛けようとしたところで、視界の片隅に映った上空でヴァルーザがこちらに向かって『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を吐こうとしているのを見てしまった。


「お、お前たち!! こっちに寄って来るんじゃない!! は、早くはなれ……っ!」


 しかしガウル龍王の決死の言葉も虚しく、側近達は猛スピードでこちらへ向かってくる。

 そしてこちらに向かってきていた側近たち全員が、対象であるガウルの元に向かってきた瞬間、先程のガウル龍王の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』とは、比べ物にならない速度と火力の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』が放たれたかと思うと、一瞬でハイウルキアのガウル龍王とその側近達を包み込む。


 ピード、ジラルド、メッサーガの『』は、ヴァルーザ龍王の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』によってそのまま全員が、燃やし尽くされて絶命するのだった。


 ――余りに圧倒的な火力。そして見る者を怯えさせる程の紅い瞳。


 まさに今のヴァルーザ龍王は『スベイキア』大国の龍王にして、この大陸の王である『イーサ』龍王と見紛う程の威圧感を醸し出す程であった。


 しかしそんなヴァルーザも限界が近づいていた。

 無理な戦力値コントロールは、生命力を犠牲にして行われている。こんな方法でいつも以上の強さを、引き出して戦っている以上は無事で済む筈がなかった。


 戦力値コントロールで自身の持つ戦力値以上の強さを生命力で補うなど、大魔王領域に居る魔族達であってもやろうとはしない。魔力が枯渇して、生命力を魔力代わりに使うのとはワケが違う。


 大賢者エルシスの無理なによる、強引なでさえ、数秒で気を失う程の危険性を孕んだ力の上昇技と本人が言っているが、ヴァルーザ龍王が行っているこの戦力値コントロールは、そのオーラの併用によっての上昇の危険性など、


 それ程に危険な行為なのであった。


 更にその持続時間は数分に渡って行われた。

 それはつまり『ヴァルーザ』は、このまま気を失えば次には目覚める事が、出来ないかもしれないという状態であった。


 ヴァルーザは気を失いかけながらもシェアーザの安否が気になるのか、最後にシェアーザの元へ向かおうと、フラフラと空を飛びながら向かおうとする。


 ――その時であった。


「い、今だ!! 奴は虫の息だ、殺せ! 殺せぇっ!」


 スベイキア大国の王子『シェイザー』の声が辺りに響き渡ったかと思うと、コープパルス・ドラゴンの龍兵たちが一斉にヴァルーザに向かって『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を吐くのだった。


「お、王子……! お、お待ちください!」


 ネスコー元帥はその命令を言い放ったシェイザー王子に撤回させる言葉を掛けようとするが、もう何もかもが遅い。生き残っている『個別の軍隊』達は自分達の王を守ろうとするが、既に『個別の軍隊』の全員の体力も残り少なく空を飛んで向かおうとするが間に合わない。


 空を覆う程のコープパルス・ドラゴン達が、一斉に自身に向けて放って来るのをヴァルーザ龍王は、霞み掛かった視界で見つめるのだった。


 ……

 ……

 ……

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