第700話 四面楚歌
ネスコー元帥はヴァルーザ龍王とガウル龍王の言い争いを耳にした後、明らかに戦い方が変わった。
自分からイルベキア軍の『個別の軍隊』に仕掛ける事はせず、イルベキア兵から攻撃された場合のみに限り、やり返すような消極的な戦い方となった。
更にネスコー元帥はスベイキア軍の中でも、彼の息のかかった兵士に指示を出し攻撃をやめさせた。
現在も多くのコープパルス・ドラゴン達は、イルベキア兵と戦ってはいるが、ネスコー元帥の命令によって、少数のスベイキア兵は、傍観に徹するようになった。
(私の出来る事はここまでだ。ヴァルーザ龍王)
ネスコー元帥が少し離れた空へと気づかれぬような速度で移動していき、そのネスコー元帥を追いかけるように、数体のコープパルス・ドラゴンも離れて行った。
ヴァルーザ龍王やシェアーザは、目の前のハイウルキアのガウル龍王や、その側近達に集中していた為、ネスコー元帥の行動には気づかなかった。彼らはガウル龍王達がどういう行動に出るか、目を光らせ続けている。
そして遂にガウル龍王が動いた。最終防衛ラインとなる拠点から少し離れたところから、一気にガウル龍王が、ヴァルーザ龍王に向かって来たのである。
「お前達、離れていろ!」
ヴァルーザ龍王の言葉に、国王を守ろうとしていた『個別の軍隊』達だったが、直ぐに命令に従って、迫りくるガウル龍王とヴァルーザ龍王の元から離れ始めた。
この大陸の龍族でガウル龍王と渡り合えるとしたら、今やヴァルーザ龍王の他には存在しない。
ガウル龍王はヴァルーザ龍王の斜め上の空から射程距離に入ったと見るや否や『
ヴァルーザ龍王もその火に対して避ける真似をせずに、同じく『
互いに『
「!」
ヴァルーザ龍王はその場から仕方なく離れようとするが、そのヴァルーザ龍王が向かう先には、先回りして動いていた『ハイウルキア』のNo.3『ピード』が居た。
「どけぇッ!」
ヴァルーザ龍王がそのままピードに向けて身体を突進させるが、ピードもヴァルーザ龍王に向けて突進する。互いに龍化をしている為、大きな体同士が正面衝突する形となった。
周囲に大きな音を響かせながら、ピードを弾き飛ばすヴァルーザ龍王。
ピードとのぶつかり合いでは、ヴァルーザ龍王が押し切る形となった。
そしてそのまま誰も居ない空へと、一度態勢を立て直そうとするヴァルーザ龍王だったが、背後から再び別の龍『ハイウルキア』のNo.4『ジラルド』が火を吐いてくる。
ハイウルキア軍の側近達は全員で『ヴァルーザ』龍王一人を追い回して攻撃を続けている。
この場に居るハイウルキア軍達は『龍化』にプラスして『
イルベキア軍の『個別の軍隊』達もスベイキア軍の『コープパルス・ドラゴン』相手に苦戦を重ねており、互いにどちらも手を出す事が出来ない状況であった。
ヴァルーザ龍王がやられそうになっている兵士達を見て、そちらへ移動しようと考えた時、遂にガウル龍王が攻撃を仕掛けてきた。
「配下の心配をしている場合ではないぞ! ヴァルーザ!!」
「!?」
ハイウルキア軍の側近達とは比べ物にならない速度のガウル龍王の攻撃が、ヴァルーザに襲い掛かってきた。
なんとか攻撃を避けたヴァルーザは、そのまま前方へ加速して離れようとする。
グングン追い縋って来るガウル龍王に対し、ヴァルーザは配下を助けようとしていたが、そんな余裕は掻き消されてしまい自分の事で精一杯となった。
更にヴァルーザを取り囲むかのように次々とハイウルキアの側近達が、上下左右から迫って来る。流石にこのままではいつかはやられてしまう。
多少のダメージと引きかえに、奴らの数を減らすしかない。そう考えた矢先、何とかヴァルーザを取り囲む、ハイウルキアの側近達を倒そうとするシェアーザが、ヴァルーザの元に近づいてくる。
それを見たヴァルーザはまずいと思った。
ガウル龍王がこちらではなく、シェアーザの方を見て嗤っていたからである。
「シェアーザ! 私は大丈夫だ、こっちに来るな!」
そう叫びながら再び襲い掛かって来る『メッサーガ』達の攻撃を回避する『ヴァルーザ』。
しかしシェアーザがこちらに反応を見せる前に、ガウル龍王の『
「ぐあっ……!」
『龍化』に『緑のオーラ』を纏うシェアーザは、コープパルス・ドラゴンの龍兵ともそこそこに渡り合える強さを持ってはいたが、ガウル龍王とでは流石に戦力値差がありすぎる。
「シェアーザ!!」
ガウル龍王の『
ヴァルーザは再び叫びながら、取り囲む敵を無視するようにシェアーザの元へ向かう。
ジラルドやピード達から攻撃を受けるが止まる事なく、落ちていくシェアーザを救おうとする。シェアーザはガウル龍王の攻撃によって、気絶をしているようであった。
『ヴァルーザ』龍王は恐ろしい速度で『シェアーザ』の元へ辿り着いたかと思うとそれを読んでいたガウル龍王が、再び『ヴァルーザ』と『シェアーザ』を対象に『
……
……
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