第678話 潜在するシスの力、三色併用
エルシスはあらゆる対応策を用意していたが、ヌーの汚染魔法はその対応範囲の埒外だった。
予想以上にヌーの汚染魔法である『
バルドの『
ヌーの極大魔法を阻止しようと魔法を展開しようとするが、汚染された空気を吸い込んだ事で、肺に絶する痛みと吐き気がエルシスを襲う。
今のエルシスは、まともに
(駄目だ……! 十秒、いや二十秒は呼吸を整える必要がある!)
冷静に今の自分を分析するが、どんなに最適な行動をとろうと考えても今この瞬間に出来る事はない。しかしその息を整える時間を敵は与えてくれそうになかった。
ヌーの手の平から、死を届ける極大魔法の眩い光が見える。
(……ソフィ、我が友よ。私はキミを……、必ず―――)
絶望が訪れるその瞬間でさえ、エルシスは決して目を閉じる事無く目を見開く。そして大事な親友の為に、最後まで諦めなかった。
エルシスは目を閉じなかったおかげで、エルシスとヌーの間に割って入る一人の女性の姿を
「貴方だけは必ず死なせない!!」
『
――神域『時』魔法、『
「な、何だと!?」
ヌーの『
「……!!」
エルシスは自分を守ってくれた女性。九大魔王『ユファ』の姿を驚いた目で見つめる。
そしてそのエルシスに
(……か、身体が!? これは……、そうか。キミなんだね?)
ユファがこの場に現れた事で、エルシスが宿るシスの身体が急に自己主張を始めるかのように、熱くなって行くのを感じたエルシスは一つの結論を出す。
シスが強引に表に出ようとしているのを察したエルシスは、この場面であっても逆らう事をせずに、前に出ようとする『
「……クソが、邪魔をしやがってぇっ!!」
ユファと圧倒的な戦力値差があるヌーは、ユファに向かって攻撃をしようとしたが、そのユファを掴む手が背後から伸びる。
そして汚染された空気をその身に浴びて、エルシスでさえ苦しんでいたというのに、平然としながら大魔王シスは、ユファを自分の背後に引き寄せた後、攻撃しようとするヌーに向けて、魔瞳『
――次の瞬間。
シスの目を見たヌーは、身体が動かなくなった。
「なっ……、何だと!?」
「し、シス!?」
ユファの目に映っているシスはいつもとは違う恐ろしい形相で、ユファを殺そうとしていたヌーから視線を外さず、唸っているような声を漏らしながら恐ろしい程に魔力を上昇させていっている。
――
エルシスと過去にソフィが言っていた、シスの中に眠るもう一つの存在。
潜在するシスの力。その正体は大魔王ソフィの中に宿るモノと、同一のものである。
かつてこの力に目覚めたシスと、ソフィは戦った事があった。
しかしあの頃とは違い、今のシスはエルシスの戦い方もシスの成長も相まって、大魔王自身の力も増している。
『
誰よりも近くで『
――まるでその力を、最初から自分で操っていたかの如く完全にトレースしていく。
エルシスが表に出ていた頃のシスの魔力値は、すでにシスが目覚めた時点で更に上がっていたが、現在はその状態の時と、
――彼女の周囲を覆っているオーラは
『
――『
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