第584話 新たな協力者

 ソフィの居る魔王城を訪れたステアは、現在のアレルバレルの世界にある『魔界』の状況をソフィに伝えた。


 そしてその上で今の『煌聖の教団こうせいきょうだん』から、アレルバレルの世界を救って欲しいと願うステアは、再びソフィに『アレルバレル』の王として、再びこの世界の統治者になって欲しいと告げた。


 魔王軍でもなくただの魔族として、アレルバレルの『魔界』で生きてきた彼が、このアレルバレルの世界で『最強の存在』である『大魔王』の元へ来る事が如何に、だっただろうか。


 ソフィを怒らせるような真似をしなければ、ある程度は大丈夫だという事は知ってはいたし、過去の戦争の数々や、魔族同士の争いをなくすことに尽力してきたソフィを尊敬をもしてきたステアだったが、万が一何か失敗でもして、ソフィの逆鱗に触れてしまえば、あっさりと自分はこの世を去るだろうと理解していた為に、無事に伝え終えられた事でステアは安心して、心の底からほっとするのだった。


「ところでステア殿。現在ミラ達が何処に潜伏しておるのか、お主は知っておるか?」


 そしてそんなステアに向けて、再びソフィは口を開く。


「ミラというのは、教団の総帥の事であっていますか?」


「うむ『煌聖の教団こうせいきょうだん』という組織を作っていた事は知ってはいたが、我がこの世界に戻ってきた後はだな。一切その姿を見せてはおらぬのだ」


 リラリオの世界で『組織』の幹部である『ハワード』という大魔王と、大賢者と名乗っていたこちらもまた『組織』の幹部であろう『ユーミル』とは戦い勝利はしたが、肝心の組織の首謀者であるミラだけは姿も魔力もこの世界からは何も感じない。


 一体何処にどうやって潜伏しているのか、詳しく情報を得たいソフィはステアに尋ねるのだった。


「いや、申し訳ないのですが、私の得ている情報では、そちらに居る九大魔王の皆さんと戦いを繰り広げた後、傷を癒す為に幹部の者達を引き連れてどこか別の世界へと、姿を消したとしか存じ上げていません」


 どうやらディアトロス達との戦闘の後、ミラ達は直ぐにこの世界を去ったようであった。


「そうか。残念な事だ。奴だけはさっさと、と思っておったのだがな」


 ソフィがミラの事を話し始めた瞬間から、明確な殺意を感じ取ったステアは、冷や汗をかきながら生唾を飲み込むのだった。


「ソフィよ。ひとまずステアとやらの仲間達と合流してはおかぬか? 『中立』を保っている勢力が一体どれ程の規模なのか、一度把握しておくことが先決だと思うのだが」


 ディアトロスはこの世界に現在居ないミラよりも、先に好き勝手暴れているであろう教団の連中から、この世界の者達を救う事が先決だろうと告げるのだった。


「おお。そうだな。ひとまずステア殿。お主の仲間達をこの中央大陸に集めてくれるか?」


「分かりました。大魔王ソフィ。突然の来訪にも拘らず、話を聞いて頂いて感謝します」


 ステアはしっかりと最後まで話を聞いてくれたソフィに、感謝して頭を下げるのだった。


「こちらこそよくぞ知らせてくれた。よし、イリーガルにリーシャよ。道中組織の者達がステアを狙ってこぬとも限らぬ。お主達がステア達を護衛をしてやれ」


「はっ!」


「はい!」


 ソフィから護衛の任務を受けた二人は、直ぐに返事をするのであった。


 ……

 ……

 ……


 中央大陸から三つ程離れた大陸から『魔王城』の偵察を行っていた『ネイキッド』達は、魔王城に入っていった『ステア』の事を当然のように見張っていた。


 そしてステアが魔王城から出てきたところで、三人の部下たちに口を開いた。


「どうやら出てきたようだ。あいつが一体何をしに『化け物』達の所に向かったのかは知らないが、無事に出てきた所を見ると俺達の敵と判断してもよさそうだな」


「あの魔族は西側の大陸の魔族ですね。何度か私の部隊が奴らに教団に入るように告げましたが、最後まで抵抗していた奴らを束ねていた男です」


 ネイキッドと話をしているリザートは、忌々しそうにステアを睨みつけながらそう言った。


「成程。教団の誘いを断った奴か。さっさと潰しておきたいところだが……」


 ネイキッドはステアの背後についている『二人』に意識を向ける。


「どうしますかネイキッド隊長『本隊』の者達を西側の大陸に攻め込ませますか?」


「いや待て。奴の背後に居る連中は『九大魔王』の『処刑』に『神速』だ。くそっ! どうやら何やら大きな目的の為に護衛をつけたようだぞ!」


 ネイキッドは大魔王としては、かなりの力量を持っているが、それでも当然『九大魔王』達には確実に劣る。


 それも『九大魔王』の中でも『処刑』は、ネイキッドにとっては相性が悪く、かなり面倒な部類の大魔王に入る。下手に今手を出す事は自滅を招くだけだろう。


「今はまだ手を出すなよ。見張りを数人連れて西側へ向かわせろ。俺は『ユーミル』様の代わりに魔王城を見張る事にする」


「分かりました! オイお前」


「はっ!」


 『ネイキッド』から指示を受けた『本隊』の隊長である『リザート』は、更に配下の者に西側の大陸へ向かわせるのだった。


 ……

 ……

 ……

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