闘技場編
第498話 尊敬と畏敬
ユファから『
しかし元々魔法使いでもないラルフは、この魔法を発動する為に必要な『魔力』が足りてはいない。
ユファの提案で『青』の練度を少しでも高めながら魔力値を上げる事にしたのだが、それでも尚、この『根源魔法』を扱う程の魔力には達せなかった。
だが、元々魔力が数千程度しかなく戦力値も100万未満だった彼が、人間より遥かに強い『リラリオ』の魔族が届く事さえ出来なかった『魔王領域』に達してるだけでも十分に努力をした結果を残しているといえるだろう。純粋な人間としては、ここが限界地点だと目されるのが普通の事である。
魔力値の上昇というものは、確かに生半可に行える事では無い。
だが、青を体現するという事は、そんな魔力値の上昇とは比べ物にならない程に難しい事なのである。青のオーラを纏える程の者が、単純に魔力が足りないからといって、魔法を覚える事が出来なかったというのは些か不満が残る結果ではあった。
「もう一度やってみましょうか」
もう何度も発動を試すラルフにユファの声が掛かる。
ラルフは頷くと再び『レパート』の『
――ここまではほぼ完璧だといえるだろう。
ここから後は『魔力』を魔法陣に乗せるだけなのだ。それだけで魔法陣は回転を始めて効力が発揮されるのだが、あと少し『魔力』が足りないだけでその発動が行われない。
やがて魔力が足りずに魔法は不発に終わり、魔法陣はゆっくりと薄れて消えていった。
「……くっ!」
――もう何度目の失敗だろうか。
ラルフは自分の魔力の足りなさに悔しそうな表情を浮かべる。
魔法を教えているユファもまた、弟子の悔しそうな表情を見るたびに心を痛める。
今までもあらゆる者達に『魔法』を教えてきたユファではあったが、その全ての者達が『
(どうすればいいかしら? 『青』の練度は短期間ではもう上昇は難しいでしょうし、魔力自体の上昇は才能の問題であるし簡単には行えない。ラルフの寿命がもう少し長ければ、シスの時みたいに『炎の連矢』のような低位の魔法を反復練習させたりして、魔力値の上昇を図るところだけど、そんな事を続けていれば闘技場に間に合わせるどころか『
ユファは心の中でどうするべきかと、自問自答を繰り返すのだった。
今のラルフであのリディアと戦うのであれば、速度を一気に高めて『殺し屋』としての技術を用いて一気に相手の急所を狙い、短時間で一気に勝負を決めるしかないだろう。
そう考えていたユファはこの考え方自体をやめて、別のアプローチをするべきかと、そこでも迷いが生じ始めた。
『レパート』の『
すでに魔法や物理といった攻撃に対して、有効的に『障壁』は機能をしているし、覚えること自体は、間違いではなかっただろう。
ユファは一旦『
「やっほー!」
昔のレアに似せた格好と髪型をしている魔族がユファ達を見かけると、笑顔で挨拶をしてくるのだった。
「あの方はソフィ様の紹介にあった『魔王軍』の方では?」
「ええ、そうね。確か私が『アレルバレル』の世界から帰った後に『九大魔王』入りした子らしいわね」
直接ユファとリーシャの面識は無い。ユファが『九大魔王』として認められた時には、まだ現在のソフィの魔王軍の最高幹部とされる『九大魔王』の面々は『ディアトロス』『イリーガル』『ブラスト』の三体の魔族だけであった。
その後に『第一次魔界全土戦争』を経て『ホーク』やその他の魔族達が次々と『九大魔王』として名乗りをあげる事になったが、その頃にはもう『ユファ』は『レパート』の世界へと戻っていたために、現在の『九大魔王』となった『魔王軍』の最高幹部達とは面識がなかったのである。つまりリーシャの事をよく知らないのも無理はなかった。
空からゆっくり下りてきたリーシャは、ユファを見ながらニコニコしていた。
「貴方。リーシャと言ったかしら?」
「は、はい! 貴方が『ユファ』様ですね? ソフィ様から『金色のメダル』を与えられた『四人目』の
長い歴史の中でたった『九人』にしか渡されていないソフィの『
別の世界から来たあらゆる『魔』を司る『大魔王』。
その存在に会えたリーシャは、キラキラした目で『
「え、ええ。確かにソフィ様には『金色のメダル』を与えられたけれど……。私はきっと『九大魔王』の中では一番弱いかもしれないわよ? そんな目で見られても困るのだけど」
『アレルバレル』の世界の出身の純粋な『九大魔王』と自分とでは、相当な実力差があるだろうと『ユファ』は思ってそう口にする。
しかしそのユファの言葉を聞いても『リーシャ』は、
「一体何を言っているんですか? 『
真っすぐに見つめるその視線は、ユファが強くなる事を信じて疑っていなかった。ユファでさえ視線を外させて照れさせる程のリーシャの視線は、ゆっくりと横に立つラルフを捉えた。
「そしてお兄さんが、ラルフさんでしたよねぇ?」
「ええ。
リーシャはラルフの言葉にうんうんと頷いて、嬉しそうにしていた。
どうやらリーシャにとって主であるソフィの仲間は、自分の仲間でもあると考えていて、強いかどうかとか『人間』や『魔族』といった『種族の違い』は全く気にしていないようだった。
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