第451話 発動羅列とスタック
その頃の『レイズ城』では、再びソフィが『
「む? シスとレア達が戦闘態勢に入ったようだな」
遠く離れた場所で二人の魔力を感知したソフィはユファにそう告げる。
「ええ。そのようです。シス大丈夫かしら?」
ユファは手を口元に持っていったり、オロオロとしながら必死にシスの魔力を感知し案じ続ける。
ソフィは最後に視線を自分に向けてきた時のレアの目を見て察した。
――あれは生半可な覚悟ではなかった。
(……どうやらレアよ。お主はシスに対して、並々ならぬ感情を持っているようだ。何を為すつもりなのかみせてもらうぞ)
そう言いながらソフィは『レパート』の『
魔法を使用する事を目的としているわけではなく、魔法を使う時に必要な『発動羅列』を『スタック』に使うために慣れさせているのである。
(※発動羅列とは、頭で描いたその魔法を現世に具現化するのに必要なその魔法の羅列)。
(※スタックとは、魔力を魔法に乗せる順番を決めるタイミング)。
戦闘をするための『基本研鑽演義』の一つであるが、これは『レパート』の世界だけではなく、あらゆる世界の『
単純に『魔力』を放つような単純な『魔法』程度であれば『スタック』を覚える必要はないが、
そのために相手に効果的に魔法のダメージを与えるのには必要な『魔』の技術であり、今覚えようとしている『上位魔法』は『アレルバレル』では無詠唱で難なく放つことの出来る程度の魔法ではあるが『レパート』の『
違う世界の『
簡単に違う世界の『
単に素の魔力が高く、別の世界ではすでに使い古した『魔法』であったとしても、別の世界の『
ソフィが『
『
レアが過去の『リラリオ』でエリス女王に『レパート』の『
それを『神域』と『
「ユファよ『上位魔法』までを覚えた後に、一度『
ユファはシスとレアの事が気がかりだったため、数秒程ソフィの言葉が頭に入ってこなかったが、じっとユファを見つめるソフィの視線にようやく気付いたのだった。
「すみません。もう一度お願いします」
無礼を承知でユファが聞き直すと、ソフィは頷き再び口に出す。
「それはつまり『アレルバレル』の世界の『
「うむ。端的に言うとそう言う事だな」
ユファはゆっくりと首を横に振る。
「ソフィ様……! それは絶対に止めておいた方がいいです。ご存じではあると思いますが『発動羅列』は『
ユファは早口で捲し立てるようにソフィに危険性を告げる。
「そこまで難しいか? しかしこのまま『
こうしている間にも『組織』の者達は『アレルバレル』の世界で好き勝手しているかもしれないと考えると魔法の発動自体は慣れ親しんだ『
「やはり私が直接『アレルバレル』の世界へ行き、ディアトロス様達に『根源の玉』を使って頂いてからここに戻ってきた方が宜しいでしょうか?」
「いやだめだ。それは絶対にならぬ。万が一お主が跳んだ場所に『組織』のミラ達が居れば、今のお主では
ソフィの言葉にユファは表情を曇らせる。
言葉がきつくなってしまったとソフィは感じたが、大賢者達の危険性を考えれば、事実を明確に包み隠さずに伝えておいた方がいいと決断した。
――それ程までに大賢者ミラは
大魔王ディアトロスは、自身や『魔神』よりは劣るとはいっても『金色の体現者』であり、
大魔王としての強さであれば『アレルバレル』の世界でも最上位
そんなディアトロスを戦って幽閉したという事であれば、最低でも大魔王『ヌー』と同等の強さは持っているだろう。
少し前に戦った『ヌー』は、今のソフィが出せると想定する、
それはつまり過去の『大賢者』である『エルシス』に匹敵する程の力まで、ミラの力が近づいてきているという事の証明であった。
そんな者が居る現在の『アレルバレル』の世界に、ユファが一人で向かったとして、奴らに遭遇せずにディアトロス達に伝えて安全に戻ってくる確率は恐ろしく低いだろう。
それに組織の者達は『レア』と『ユファ』を狙ってこの世界の『トータル山脈』にまで襲撃に来たのである。
ユファがアレルバレル世界へ向かえば、それに気づいた者達が一斉に、ユファを殺そうと動くだろう。そんなことまで分かっているというのに、ここで絶対に『ユファ』だけを『アレルバレル』の世界に行かせるわけにはいかなかった。
「ほ、本当に……。ち、力不足ですみません。ソフィ様……!」
自分が『九大魔王』と名乗らせてもらっている以上はもっと強くなければならないのにと、すでにずっと考えていたユファだったが、ここで再び自分の力不足加減を感じてしまい、悲しくなって項垂れてしまうのだった。
「それは違うぞユファよ。お主が影で今も研鑽を続けている事は、その素の魔力の上昇から見ても我は理解しておる。お主は我が認めた研鑽を怠らぬ
「ありがとうございます……」
ソフィの優しい言葉に慰められたと理解するユファだが、それでも自分の不甲斐なさに納得は出来なかった。
絶対に今回の不甲斐なさを帳消しに出来る程に強くなってやろうと、ユファが固く心に誓った瞬間であった――。
そして二人の会話はそこまでとなり、再びソフィは『
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