第257話 ヴェルマー連合国、戦争準備
「ソフィ様。遂にレア共が来たようだぞ」
ラルグの塔最上階で椅子を並べて寝っ転がっていたキーリが起き上がり、唐突にソフィに口を開いた。
「うむ。しかし数人しか転移させられないのではなかったのか? この世界に乗り込んできた者がかなり居るようだが」
ユファ達の話では『世界間の転移』が出来る魔法は、レア本人と『レインドリヒ』の配下が数体程だと言っていた。
しかし現在この世界に現れた魔族達は数百を越える。余りに規模が違う為にソフィが不信な感情を抱くのは当然であった。
「それは俺にも分からねぇですが、ただ来ちまったもんはしょうがないでしょう。当初の手筈通りにトウジンの方へ行ってきますよ!」
キーリはソフィに
「うむ。お主であれば余程の敵が来ぬ限りは大丈夫だろうが、何かあればすぐに逃げよ。死ぬ事は許さぬぞ」
魔族とは違い『
「まぁ、俺が死ぬわけがないんだがよ。心配してくれてありがとうソフィ様! じゃ行ってくるぜ」
窓からキーリが飛び出すとそのまま龍の姿になり、大空を飛んでトウジン魔国へと急いで向かうのだった。
そしてキーリが飛び出した直後に数十体の龍がキーリの後を追いかけていく。どうやら始祖であるキーリの護衛の為に龍族達は、ラルグ魔国周辺で待機していたようであった。
ソフィはキーリ達が見えなくなるまで見ていたが、やがて配下達に『
…………
現在ラルグ魔国にはソフィの直属の配下達や、レイズのギルド長も務めながらにしてこの国のNo.2であるレルバノン。そしてNo.3の座に居るエルザに『レヴトン』達を合わせると、総勢三千程の数にのぼる配下が居る。
何より大魔王ソフィの国という事で、この国の戦闘面はひとまず何も心配はないと言っていいだろう。
というよりもこの国の王であるソフィが敗れた時点で、勝負は決すると言っても過言ではない。
次にソフィ率いるラルグ魔国と同盟を結んでいる『レイズ』魔国。
――覚醒した真なる魔王シスを女王とする魔法の大国である。
更に『災厄の大魔法使い』と呼ばれる『九大魔王』であるユファがレイズ魔国No.2として務めている。そしてNo.3の座に居座るのが『参謀長』のリーゼであり、このリーゼもまた前時代のレイズ魔国で魔法部隊長を務めていた実績を誇る。
そして一時は軍を離れたが、再度宰相の立場にあるユファの招集の声によって、軍に戻ってきたレドリアがレイズ魔国のNo.4の座を務めている。
彼女もまた魔法のスペシャリストであり、現在も訓練を続けていて現役の頃から比べてもその衰えを見せてはいない。
レイズ魔国の国民達も魔法の心得があり、有事の際の連携は他の国の追随を許さない程に結束は固い。
その『レイズ』魔国もまたレア達の軍勢の魔力を感知しており軍備が行われていた。
「シス。結界は更新しているけど、相手はレアだからね。油断しないでね?」
ユファの言葉にコクリと頷き、シスは次々と配下達に配置等の指示を送る。
レイズ魔国周辺一帯をレドリアと配下の魔導士達を置き、レイズ城や首都シティアスに『ユファ』の結界が張ってある。
そして参謀長リーゼはレイズ城で逐一配下からの『
――あらゆる防衛の手立てを用意してあるが、相手はただの魔族ではない。
戦力的にユファが最後の防衛ラインとなるが、もしここを突破されるような敵の主力が来た場合は、同盟国であるラルグやトウジンに連絡して、更には同盟を組んでいる連合国との連携をとる手筈である。
――そして最後にトウジン魔国。
前時代の戦争でほぼ壊滅状態となったトウジン魔国だが、現在は同盟国の復興援助もあり、国として再興し始めていた。
更にはラルグ魔国のソフィ王の配下にして、元リラリオ最大勢力である龍族達がトウジンの防衛に就く。
トウジン王シチョウもまた、最上位の魔族であり、現在は魔王に近しい程の力を身に着けている。
シチョウがレア達の軍勢の方向を見ていると、龍族達が猛スピードで『トウジン』魔国へ向かって来ていた。
それを見たシチョウは直ぐにキーリに『
シチョウが現在住んでいるディアスの屋敷付近の周囲一帯の広大な土地に、龍族達を集める為である。
そしてラルグ魔国からソフィの命令で、僅か数分という速さで始祖龍キーリが到着するのだった。
キーリに遅れて四千近い龍族達が、次々にディアスの屋敷付近に人型となり馳せ参じた。
腕を組んでトウジン王であるシチョウは、この場に現れた龍族達とその龍族を束ねるキーリに視線を送る。
「我が主ソフィ様の命により我ら龍族一同、トウジン魔国の作戦傘下に入る! なんなりと命令を!」
始祖龍キーリがこの国の王であるトウジンに頭を下げると、後ろに参じている人型を取っている龍族達が一斉にその場で跪いた。
如何にキーリ達の戦力値がシチョウの遥か上であろうとも、現在のキーリはラルグの魔国王であるソフィの配下である。
そしてそのラルグ魔国と五分の同盟を結んでいる『トウジン』魔国王であるシチョウの方がキーリよりも立場が上である為に、キーリは目上に対する礼儀を取るのだった。
「うむ、よく来てくれた感謝する! 龍族キーリとその配下達よ、すまないがこの国を守るのに協力を頼む!」
トウジン王もまたそう言って、キーリに頭を下げるのだった。
「御意! この国に災いを齎す者達は、我ら龍族の名を以て滅ぼさせていただく!」
そう言ったキーリを筆頭に龍族達は力を増幅させる。四千近い龍族達は、その全ての者達が戦力値が数千万から億を越える。
前時代この世界で神に近い種族として最強を誇った龍族達が、同盟となったヴェルマー大陸の魔族達を守る為にその力を示すのだった。
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