九大魔王編

第250話 別世界の大魔王イザベラVS九大魔王イリーガル

 アレルバレルの世界に居る『ソフィ』の魔王軍の最高幹部『九大魔王』の一体、破壊の『ブラスト』の配下達がついに行動を開始するのだった。


 ――ブラストから部隊への命令は一つだった。


 それはダイス王国に居る人間達の根絶である――。


 大魔王ソフィを最優先に考えるブラストにとって、そのソフィを倒す為に勇者という存在を作り上げて討伐させようとしたダイス王や、そのダイス王に付き従う王族に貴族、更には取り巻きの連中に何も知らずに従う人間達を決して許すつもりはなかった。


 ソフィがもしこの場に居れば、罪もない人間を狙う理由にはならないと止めるかもしれないが、現在この『破壊』のブラストを止める者は居ない――。


 九大魔王の中で一と評されている通り、その残虐性は『魔王軍』に所属する魔族の中でも類を見ない程である。


 そんな彼がソフィの忠実な僕となったのは過去にイリーガルに紹介されて、ソフィと戦う事になった後の事であった。


 ブラストよりも先にソフィの配下として加わっていた『九大魔王』である『イリーガル』に、ソフィと言う大魔王を紹介されたブラストは、自分がソフィに負ける事があれば魔王軍に属すると条件を出してソフィと戦う事になった。


(※当時はまだ九大魔王ではなく、と呼ばれていた時代であった)。


 すでにこの世界の王であったソフィに比べると若輩者であったブラストではあるが、自分が負ける事など考えられず、たとえソフィが相手であろうが苦戦はないと踏んでいた。


 ――しかしブラストは瞬殺されてしまう。


 破壊の衝動に襲われながらブラストはソフィを殺すつもりで挑んだが、そのソフィには全く相手にすらならず、全身を切り刻まれて燃やされて完膚なきまでにブラストは敗れ去った。


 膨大な魔力を有しており、使える魔法の数も『災厄の大魔法使い』と言われていたユファに並ぶ程の大魔法使いであるブラストは、これまで一度たりとも負けた事がなかった。


 しかしそのブラストはソフィによって、全身を切り刻まれる痛みや燃やされた熱さ、そして何より初めて死に対する恐怖を味わう事となった。


 そしてその時にブラストが抱いた気持ちは、復讐でも戦慄でもましてや畏怖でもなく、であった――。


 彼の『破壊』の衝動を上回る程の感情を覚えさせた『ソフィ』に対して『敬慕の念』すら抱いたのである。


 その事は彼自身が一番信じられない事であったが、自分が長年抱き続けて来た『破壊』衝動を忘れる程の強烈なソフィに対しての感情に気づいた時、ブラストは『』と納得したのだった。


 そして気がつけばブラストは、ソフィの眼前で跪いていた。


 ソフィは試すようにブラストを見ていたが、やがて配下になる事を快諾し『九大魔王』の『三番目』の配下となった――。


 それからは幾度となく人間の勇者とやらが魔王城に乗り込んでは、返り討ちに合うのを見てきたが、その度にブラストはストレスを貯めていた。


 


 ソフィの手を出すなとの命令の為に、今までは『破壊』の衝動にも負けずに手を出さずにいたが、今回ソフィ様が居なくなった事が、ダイス王の仕業であるならばソフィ様の配下として、動かざるを得ない。


 建前としては十分だろうと判断したブラストは、今回を機にダイス大陸を焦土に化すつもりであった。


 そして現在ブラストの命令により、ダイス大陸へ到達したルード達は、主の命令に従う為に『破壊』の限りを尽くそうとしていたのだった。


 ソフィに従う九大魔王は誰もがソフィを『最強』と口を揃えて述べるが、No.2は自分であると考えている者は多い。


 人間の大陸のダイス王国の大臣として派遣されているディアトロスは、一番最初の九大魔王であり名目上No.2という座にいるが、ルードはディアトロスがブラスト様より強いとは思ってはいない。


 自分の主がソフィ様の次に強い筈だと信じて疑わないルードは、たとえ他の九大魔王に止められたとしても、この侵攻を止めるつもりはなかった。


 主であるブラストや全ての魔族の頂点に立つ、が直々に止めない限り、ルードは攻撃をやめないだろう。


 そしてアレルバレルの世界にある人間達の大陸に到着したルード達だが、そこでルード達は虚を突かれる事となるのであった。


 ……

 ……

 ……


 ソフィが長年拠点としていたアレルバレルの『魔界』にある魔王城。現在はダールの世界の王である『イザベラ』という男がその城の玉座に座っている。


 そしてその魔王城に今、戦力値30億を越える大魔王『イリーガル』が向かってきていた。


「成程、どうやら『九大魔王』と呼ばれておる者はこいつの事か。どうやら噂に違わぬ力の持ち主たちのようだな」


 イザベラはあと数分でここに到着するであろう『イリーガル』と戦う為に力を増幅させ始めた。


 ついに『大賢者』が率いる組織の者達と、ソフィ直属の配下『九大魔王』達との戦争が幕を開けるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る