第142話 勘違い
「……おかしい」
ラルグ軍事統括司令のネスツは、先程から『
(そろそろミールガルド大陸の大半を制圧しても、おかしくない頃合いだと思うのだが……)
ミールガルド大陸にはほとんど強い者が存在せず、人間達と少数の魔物達が生息している大陸の筈である。
ラルグ魔国の魔族達であれば、そこまで時間をかけずとも制圧出来るだろうと踏んでいた。
しかしいつまでたっても戻らない部下達に、ネスツは何かが起きたとしか考えられなかった。
彼は『ビデス』の名を持つラルグの軍事統括司令である。
普段であれば直ぐに、軍兵を使って確かめに行かせるところであるが、今は『フィクス』の名前を持つゴルガーや、ラルグの王シーマがいる為に勝手な行動はとれない。
困った表情を浮かべながらも、まだこの大陸の遥か後方に待機している王達に伝えない訳もいかず『ネスツ』は仕方なくシーマ王に『
……
……
……
「どうやら王国の方も『サシス』の方も序盤は上手くいったようだな」
ソフィは魔力感知で多くのラルグの魔族がその数を減らした事を察知して、レルバノンにそう告げた。
「本当に恐ろしいですよ。貴方を護衛につけなければどうなっていた事やら』
レルバノンは被りを振りながら、大きく溜息を吐いた。
「だがこれで終わりではあるまい? まだ大きな戦力値を持った者達とその配下達が残っておるようだしな。」
今はまだ『ラルグ』の先遣隊達と『ラルグ』の混合部隊のみであり『殲滅作戦』の実行の為に残してあるラルグ魔国の全軍は健在なのである。
しかしそれでもある程度の戦力は減らしたのは確かであり、ラルグ魔国の本軍だけであればいくらでもやりようはある。
レルバノンはあらゆる状況に備えて準備を進めていたが、そのほとんどが徒労に終わりそうだと考え始めていた。
(ビレッジを使ってこの大陸の『
彼の予想を遥か斜めに事は進んでいく。
そもそもソフィを物差しで測ろうとしていた事、それ自体が馬鹿げていたのだろう。
レルバノンは心の底から『ソフィ』を
……
……
……
ネスツから『
どうやらこの大陸には、何かとてつもない秘密が隠されているらしい。
シュライダーが帰還しない理由や、ゴルガーが何か懸念を抱いている様子もある。
そして実際にここに来た事で多くの配下達がやられたという事実。
この事からシーマが導き出した答えは、
それも元々この大陸にいたのではなく、我々のように違う大陸から侵攻されたのかもしれない。
しかし現在の『リラリオ』の世界の中で、文明や文化が栄えている大陸はそんなに多くはない。
過去には確かにこの世界には『五つの大陸』があった。
人間の住む『ミールガルド大陸』、魔族が住む『ヴェルマー大陸』。
――そして過去に魔族の王であった『魔王』との戦争で
龍族が住んでいた太古の大陸『ターティス大陸』、精霊や妖精が住んでいた神秘の大陸『トーリエ大陸』、現在の魔族の半身が住んでいた魔人の大陸『ディアミール大陸』である。
ターティス大陸だけは、リラリオの原初の『魔王』でさえ手を焼き『大賢者級』とされる結界魔法で大陸ごと異世界へ封じ込めたとされるが、諸説があり龍族は滅ぼされたと一般的には伝わっている。
過去の事は分からないが現在は『ミールガルド大陸』と『ヴェルマー大陸』の二つ以外の大陸はあることはあるのだが、
長きに渡りようやくヴェルマー大陸を支配したのだから、ミールガルド大陸を支配し終えた後に他の大陸も調査をしようとは考えていたが、もしかするとそういった大陸からこの『ミールガルド』大陸に侵攻していった者達が居るのかもしれない。
龍族は人間の子供に姿を変えたりする事も可能であり、本来の力を隠したままで、生活に紛れ込む者もいたそうだ。
他の大陸としても龍族には匹敵しないが『トーリエ』大陸の精霊達の中には、四大元素を生み出す大精霊たちや『精霊王』と呼ばれる存在がいて現在の魔法使いの多くが、この四大元素を用いた魔法を使っているとされている。
レイズ魔国の魔法部隊も恐るべき魔力を持っていたが、トーリエ大陸の精霊たちの扱う『魔法』はそのレイズの『魔族』達を遥かに凌ぐ魔力を持っていた。
そして『ディアミール大陸』は魔人と呼ばれる人種が住んでいた。
魔人は魔族と人間の間といったような人種たちであり、力が強く魔力が高い人間といったような存在であった。
かつての『魔王』との戦争でその多くの魔人は滅ぼされて、残った魔人もまた『魔王』に支配されて魔族として生きるようになった。現在の魔族の中には過去を遡ると魔人の先祖を持つ者もいる。
三大陸共に過去に滅んだ大陸ではあるが、何かの拍子に復活して『ミールガルド』大陸を影から支配しているのであれば『ラルグ魔』国軍の魔族達でも確かに苦戦はあり得る。
どの大陸が復活していたとしても言えることは、
――しかし。
「今更関係がないな。俺は『ヴェルマー』大陸を統一する『魔王』となった。どの大陸の王が居ようが全て屠ってくれる……」
――彼には彼の
過去の『魔王』に出来た事なのだから、現代の『魔王』にも出来る筈なのだと『魔王』を自称する『シーマ』魔国王は最終的にそう結論付けたのであった。
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