新魔王誕生編
第109話 第三者の到来
ソフィの提案を聞き届けたレルバノンが、答えを出そうとしたちょうどその時に、レルバノンの屋敷にある魔族が到着する。
その魔族が突然に屋敷の門前に現れたため、レルバノンの私兵達は慌てたが、直ぐに我に返り声をかける。
「き、君は誰かね? ここはレルバノン様の屋敷だ。用がないなら出て行ってもらえるか?」
シチョウは『レルバノン』の名前が出た事で驚きを隠しきれなかった。
(シス女王が居るものとばかり思っていたが、レルバノンだと?)
トウジン魔国出身のシチョウにしてみれば、すでに離れたとはいってもあの大国であるラルグ魔国で元No.2であったレルバノンを知らない筈がなかった。
「突然失礼な事だが是非聞かせて欲しい。お前達の言うレルバノンとは、
「!?」
シチョウがその質問を告げた次の瞬間、門番達は一斉に戦闘態勢に入るのだった。
「おいおい、俺は
シチョウは苦笑いを浮かべて、困ったなとばかりに両手をあげる。
その様子に門番達はどうしようかと仲間内で目配せをしていたが、やがて屋敷の中から一人の男が出てくるのであった。
「貴方は『トウジン』魔国のシチョウ様では?」
小太りだがやけに品のある恰好をしている男が現れた。
――その男の名は『ビレッジ』。
前回ミナトと薬草の取引を行ったレルバノンの配下であった。
そんなビレッジを見ても誰だか分からないシチョウだったが、自分を知っているという事はどうせこいつも『ヴェルマー』大陸の魔族だろうとあたりをつけるのだった。
「ああ、そうだよ。俺は『シチョウ・クーティア』、アンタの言う通り『トウジン』魔国の魔族で間違いはない」
シチョウがそう言うと『ビレッジ』はにこりと笑みを浮かべて、主の元へ案内すると申し出るのだった。屋敷の門番達はビレッジに頭を下げて、後の事をお願いするのであった。
……
……
……
ヴェルマー大陸に渡るという事で一応は話の結論が出たが、今ソフィは『レイズ』魔国のヴェルトマーの事が頭に
(目の前に居るシスの話によると、ヴェルマー大陸からこちらの大陸にシスを送ったというが、他者を出会った事のない
確かにそういった『魔法』はある事はあるのだが、発動には相当の知識が要るために扱える者は限られてくる。
ソフィが知る上で『根源魔法』である『ルート・ポイント』を扱える者は『アレルバレル』の世界では、初代皇帝が支配していた時代より前に居た『アレルバレル』で歴代最強の人間と言われていた大賢者『エルシス』。
そしてソフィが『アレルバレル』の世界を統治する発端となった『第一次魔界全土戦争』が起きる直前に出会った大魔王『ユファ』。
更にはかつてアレルバレルの世界の地でソフィと争った大魔王の『イバルディ』、大魔王『ディアトロス』、魔王『ヌー』、そして自身のソフィくらいのものである。
神域魔法とまではいかないが、最上位魔族が扱うには少々難易度が高すぎる『魔法』である。
それにヴェルトマーは『
それがどれだけの難しい事かは、この場では『ソフィ』にしか理解できないだろう。
たとえ天才であったとしても、古の超越魔法を会得するには『魔王』の資質に目覚めてなくては覚えられない。
(ヴェルトマーか……。それ程の卓越した能力を有しておったのならば、是非生きているうちに会っておきたかったものだな)
ソフィはヴェルトマーがこうして『最上位魔族』と聞かされてはいるが、内心では『魔王』の資質に目覚めていた存在であっただろうと確信していた。
そしてソフィが思いに耽っていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。
「どうぞ」
屋敷の主であるレルバノンがノックされた扉の方に声を掛けると、ドアが開いて『ビレッジ』が入ってくるのだった。
「レルバノン様。先程この屋敷を訪ねられてきた者がいまして、驚かないでください。その方は『トウジン』魔国の『シチョウ』殿です」
ビレッジがそう説明すると、その場に『シチョウ』が入ってきてレルバノン達に顔を見せるのだった。
その場に居た『ヴェルマー』大陸出身の魔族達は信じられないとばかりに目を丸くして、現れた魔族『シチョウ』の顔を見るのだった。
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