旅の終わりはきっとまほろばに似ている

楓馬知

プロローグ

 旅ってなんですか?


 滑走路を見失って着地できなくなった飛行機みたいに旅ばかりしていると、時折そんな質問をされる。

 俺にとって、その問いに対する答えは決まっている。


 旅とは、探すことだ。


 今回もあてもなく放浪する旅路で、数え切れないものを見つけた。


 目の前の光景も、その一つ。

 この世の宝物すべてを集めたのではないかと錯覚するほど、尊く美しい景色。

 遙か遠くに大きくも小さく、それでいて雄大にそびえ立つ名峰。

 澄み渡る空から降り注ぐ陽光を受けて、煌々と光り輝く果てしない水面。

 人々が生きる世界がともにあり、大自然に囲まれた神秘的かつ清高な別世界。


 照りつける真夏の太陽と、心地よく清々しい山風が、袖から出た腕を撫で下ろしていく。


 どうしようもなく残酷で、取り返しがつかないことばかりの俺たちの世界。

 日常から遠く離れた夏休み。

 一ヶ月以上もの長き旅。

 自らが運転する自動車で、日本全国、たどり着ける最果てまで。


 かつて、大切なものをなくした。

 俺を取り巻く世界から、数え切れないものが零れ落ちていった。

 だから、旅に出た。

 失ったものを探す、旅に出た。

 旅をすれば、自分が変わる。

 世界が変わる。

 そしてそれは、旅に出る前よりもずっと素敵なものになる。


 俺、ただ一人だけだった。

 だからこその一人旅だった。


 しかし、今回の旅は違った。

 俺の傍らには、目の前の素晴らしい景色、〈まほろば〉に心を動かされている少女の姿がある。


 年下でありながら、クラスメイトの少女。


 高校生になった。自動車を運転できる年齢になった。旅に出ることができるようになった。いろんな、経験をしてきた。

 まだまだ人生を知らない俺たちにとって、それは長い長い旅だった。

 この場所は、俺たちの旅の終着点。

 少女との旅を、ともにしてきた時間を、見つけた想いを、きっと生涯、忘れることはないだろう。



 俺は、年下のクラスメイトと旅をした。

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