1-44 精霊族ナーク
「これで終わりだな」
大蛇に向け渾身の右ストレートを打ち込む。大蛇の体にヒビが入っていき、砕けていった。
俺は首を鳴らしながら、ため息をついた。
毎回こんな奴らを相手にしなければいけないのか。倒し方がわかればそこまで強いわけではないのだが、見つけるまでに時間がかかる。
数歩歩くと吐き気がまた襲ってきた。
「おげぇ」
俺は仕方なくゆっくり結界へ向かった。
白い魔力を放ち結界の中へ入ると見た目が同じような装備が沢山転がっていた。
「おいおい、この中から見つけろっていうのか」
気分が優れない状態で宝探しのような事をやらされるのか。
酷く落ち込んでいると声に反応したのかどこからか声が聞こえてきた。
「待っていたぞ。選ばれしものよ」
「俺も待っていた。早くヒントをくれ」
俺は謎の声にヒントを要求したが返事らしい返事が返ってこなかった。
「待っていたぞ。選ばれしものよ」
「おい、聞こえているのか?」
再度呼びかけてみるが先ほどと同じ返答が返ってきた。
「待っていたぞ。選ばれしものよ」
俺は頭を抱えた。吐き気がひどくなったわけでも頭痛がしたわけでもない。困ってしまったのだ。
この装備の中からどうやって見つけ出せと言うんだ。今回の案内役少々雑ではないか。最初の洞窟だけが親切だったのかもしれないな。
俺は白い魔力を出したがなんの反応もなかった。
どうしたものか。白い魔力でも無理となるともうどうすればいいのか分からないぞ。
気分があまりにも優れないのでそのまま少し休む事にした。
ああ、気持ち悪い。気分が悪すぎる。あの大蛇め、次似たようなやつがいたら覚悟しろよ。ん?なんの音だ?
俺は微かに聞き取ることができる何かが擦れる音に気がついた。
勢いよく起き上がると周囲の気配を探った。すると足元で何かが動いているのを感じた。恐る恐る足元を見るとそこには前にも見たことのある植物が生えていた。その植物の先にはいくつかの防具が結ばれていた。
白い魔力を出した状態で眠ってしまったから、植物が生えてきてしまったのか。それにしてもこいつらが持っている防具は一体なんだ?どれも違う種類のようだが。
俺はそれぞれの防具に白い魔力を送ってみた。するとボロボロだった防具は錆を落とし光輝き出した。
どういうことだ。聖剣を手に入れた時に聞いた話と全く違うぞ。どうなっているんだ。
悩んでも仕方のないことと割り切り魔法で異空間にしまうと体調が良くなっていることに気がついた。
「お前たちが俺を癒してくれたのか。感謝する」
植物は嬉しさを表現するように左右に動くと勝手に俺の体内へと戻っていった。
この植物は本当によく分からんな。勝手に出てきたり勝手に戻ったり、今回は救われたからよかったがな。
俺の頭にある疑問が浮かんだ。
聖武具を全て集めたはいいが、集めることで何ができるようになるんだ?試しに装備してみるか。
俺は先程収納した防具と以前手に入れた聖剣を取り出した。俺は一ヶ所にそれらを集めると白い魔力を送った。すると聖武具が先程とは比べものにならないほど光輝き始めた。
俺は眩しさのあまり目を瞑ってしまった。目を開けるとそこは今までいたところではない場所にいた。どこまでも真っ白の世界が広がっていた。
ここはいったいどこなんだ。
光の柱が落ちてきた。光の柱はそのシルエットを人型へと変えていった。
「お前が次の選ばれしものか」
翼を生やした美形の男が俺に声をかけてきた。
「そのようだな。お前はいったい誰なんだ」
異様なその姿に違和感を覚えつい話を遮り質問してしまった。
「俺は精霊族のナークというものだ」
「精霊族?いったい精霊族とはなんだ。この世界には人族と魔族しかいないはずだぞ」
ナークは驚いた顔をし、笑い出した。
「お前、自分が何者か分かっていないのか」
「俺は魔族のはずだぞ。お前のような翼は生えていないからな」
ナークは再び笑い出した。
「ははははは。この翼はな精霊族の力を解放することができたら生えてくるんだ。つまりいまだに生えていないお前は未熟者ということだな」
「どうやったら、精霊族の力を解放することができるんだ」
「そうだな。常時聖力を出し続けていればいずれ感覚がわかってくるだろう」
「聖力とは一体なんだ?魔力とは違うのか」
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