宵の惑い

@anko37564

第1話

ヨミは羽虫の死骸でまっくろに汚れた窓ガラスを拭き終わり、

ふうとため息をひとつつくと同時に

まるで恐ろしい夢から覚めたかのような浮遊感に身震いし、急いで身支度をすることにした。

そうだ 今日は予定が入っているのだ。

割れてガタガタになった爪で、錆まみれの冷たい業務用のクローゼット(本来は精肉を吊るしておく冷蔵庫である)を開けると、肉の腐った悪臭とコバエが溢れ、まるで自分の希望ある未来に糞尿をなすりつけるかのように顔の周りを飛び回った。

私はギリギリとはぎしりをし、血管がきれるような怒りに脳を充血させたが、

ここで憤死していては希望も何もないので、そこはいつものようにふうとため息を一つつき、今日の素晴らしい予定について思いをはせて気持ちを落ち着かせた後、

汚らしい豚の血がついたナース服を一枚取り出して、下品にもその場で着替え始めたのだった。

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