第15話 今の強さ
トラウマを克服する為にこれから頑張ろう。
だが、それにしても────
「なぁ、アナ……この部屋ってさ……」
「中々良かろう? 夫婦になるのに新居がないと不便であろう? あの後に急遽用意したのだ。褒めて良いぞ?」
腰に手を当ててドヤ顔でそう言ってくるアナ。
そうなのだ。この洞窟の中に部屋があるのだ。周りを見渡すと────キッチンやリビングなどもある。
しかも、俺がミアを助けている間に作ったという……どんだけ凄いんだアナ。
「部屋は便利だし、ありがたいから良しとしよう。凄い助かるよ。アナは凄いなぁ」
俺は絶賛する。
だって、洞窟での生活に不安しかなかったから部屋があるというだけでも助かる。しかも俺が住んでた村のどの家よりも中身は立派な部屋だ。
「いつか、我の初めてをレオにあげたいからの! ちゃんとした部屋がほしいかったのだ! このベットは特にお勧め品だの! 疲労回復の魔法が付与されておる貴重品────これで何回でもヤレるの!」
初めてなのに肉食系なアナさん半端ねぇっす!
魔道具って言うのかな? 色んな物があるんだな……父さんに渡した短剣といい、便利だな。
というかアナの鼻息が荒くてちょっと怖い……話を変えよう。
「なぁ、ここって確か────試練の洞窟とか言ってたなよな?」
「うむ、此処は神が、この世界の奴らが試練を受けるために作られた洞窟だの。クリアすると恩恵貰えるぞ? 昔から、そんな場所はあるからのぉ」
ダンジョンとは、また違うんだろうか??
「そうなんだな。ダンジョンとは違うのか? 後、アナは此処クリアしたのか?」
「ダンジョンも神が作ったと言われておるが、目的が違うの。試練関連は強くなるために、ダンジョンはこの世界のために存在しておる。クリアはしとらんの。というか、我には
目的の違いか。
アナにも攻略不可とか難攻不落すぎだろ……。
「アナで無理なのか?」
「無理だの。物事には相性という物があるしの」
確かにそれは大事だな。
「封印されてる期間寂しかったろ? これからは俺がいるよ」
「からかうでない! しばらく、ヤル事もヤレんではないか! 我の初めてはいつ奪われるかの?!」
話を戻さないで! 耳が痛い。
今は無理です……後────せめて5年は待って下さい。
「さて、此処で暮らすのはかまわないんだが、これからどうする?」
「レオは弱いから特訓だの」
そういえば……いつの間にか、レオって呼ばれてたな。発作が起こった辺りぐらいかな? まぁその方が何かいいな。
……っと、特訓か────悪くないな。
「弱いとはストレートに言ってくれるな。地味に傷付くぞ……」
「我の夫なら強くならねばならぬ。我はレオに守ってほしいぞ?」
「ぶっ!?」
グハッ……もう勘弁して下さい……顔近づけてウインクされたら、可愛すぎて死にそうです。
主に物理的に出血多量で。まぁこれぐらいでは死なないんだけどさ……鼻血止まらないよ!?
「かわゆい奴よ」
「……それで何するんだ?」
俺は情けない顔をしながら話を戻す。
「我に悩殺されるとはまだまだだの! そっちも早く強くならなばな……」
いや、聞いてます? 特訓何するのよ?!
それに、ちゃんと行為が出来る様になったら鼻血は解決する!
絶対だっ! ……たぶん……。
「それで何するのさ?!」
「特訓は……我と模擬戦だの……」
それ、大丈夫なのか? 俺には惨殺される未来しか見えないんだが。
「とりあえず、やるかの!」
その後────直ぐにアナとの訓練が開始された────
◆◇◆◇◆
「ぐっ……いつつ……っ!? アナちょっ、ストッ……」
絶賛、一方的に虐殺されてます。ハードモードです。
前の戦闘がいかに手加減されていたか、よくわかります。
骸骨姿でなくても大丈夫らしいので、今回は生身で相手してもらってます。
たまにワンピースが捲れてパンツが見えそうになって、凝視してます。
本当ご馳走様です。ただお駄賃は大ダメージとの引き換えだけど……。
たった1時間で何十回と殺されていたりする。
というか────結構動いているのに────
────パンツが見えないとはどう言うことだ!?
ちなみに俺の攻撃はと言うと。
「
ヒュッ
「ほっと」
とな具合で軽く避けられる始末。まぁ穿通鎖は初見殺し的な技だしな。もう通用しないな。
パンツも見えない……動いてもらう為に色々と策を練っているというのに……。
例え、八岐の鎖で捕まえる事が出来ても、直ぐに解かれてしまう。
これは、八方塞がりだろう。そもそも生身の綺麗な姿だから本気で攻撃しずらいわ!
ただ、良い事もある! もちろんパンツ云々ではない。
避けるのが段々と上手くなってきた。アナは数を撃ってくるスタイルで攻撃してくるんだけど、そのお陰で回避能力は上がっている。
もちろんパンツを見る為に観察能力も上がっているはずだっ!
しかし、どうにもならん。
後────良い事? と言ったら、やたら復活スピードが上がってるぐらいかな?
だから────考えた末に俺は作戦を思いついた! やられっぱなしは性に合わないしなっ!
「アナっ!いくぞっ!」
まず、俺は八岐の舞16本を魔法を逸らすために回避に使う事にした。
そして、鎖が巻きつけれるぐらいの大きめの土で出来た槍みたいな物を────連射する。
もちろん、アナにも向けて範囲的に撃っているのでバレる事はない。
「そんなチャチな魔法で隙でも狙っておるつもりかの?」
「さぁ、どうだろうな?」
俺はポーカーフェイスで答える。
アナからまた攻撃が来るが、次の回避に俺は設置した土槍に鎖を巻き付け、アクロバティックに回避する。
たまに、鎖を放ったり、初級魔法をランダムに使いながら呼吸を乱すように動く。
「なっ!?」
アナを翻弄する事に成功した俺は、更に使っていたように見せかけていた鎖を見えなくする。
不可視の鎖だ。その鎖だけは強靭にするために魔力をしっかり込めておく。この戦闘中に器用に使いこなす事も可能になってきたのが幸いした。
それらをこっそりアナの近くに配置した。
「さぁ、チェックメイトだっ!」
不可視の鎖を巻き付けて可視化する。
「なにっ!?」
アナは鎖を破ろうとするが、その前に俺が鎖を引き寄せる────
その間もアナは魔法を撃ってくるが、俺は捨て身で近付いているので、お構いなしだ!
そして────
「捕まえたっ!」
「ぬっ、どうするつもりなのだ?」
「どうするって? もちろん……んっ」
キスをする。
胸が苦しいけど、耐えられる。
「んんっ……ぷはっ」
「可愛い嫁さん殴るなんて出来ないだろ?」
キザっぽい台詞を言う。
アナは驚いて、赤面している。
可愛いなぁ。
俺はニヤニヤする。
────って、痛い!
「やりおったな! お返しだの!」
その後、散々成す術なくボコられました。
「酷いな〜〜」
「全く……戦闘中に何をしとるか……」
「……すまん、アナが可愛いのが悪いっ! だから俺は悪くない!」
俺は責任転嫁をする。
可愛いのが悪いっ! これは真理だっ!
「レオ……胸は苦しくないのかの?」
そうだな……自分からする分にはまだ我慢出来るし問題なさそうだな……。
「アナからしてもらっていい?」
「うむ……」
近くに寄って、屈むアナ。
そして、唇が近付くと────
「はぁ……はぁ……はぁ……」
いきなり動機に襲われる。
ダメだな。前世で言うパニック障害的なものだろう……。
発作は相手から迫られると起こるっぽいな。
「やはり、無理かの?」
「はぁ……はぁ……ごめん、まだそっちからは無理みたいだ」
「なに、時間はある。ゆっくりで良い」
ありがたい。心の病は正直、直ぐには良くならないからな。
話を変えよう。
「戦闘方法はどうだった? 攻撃に関しては威力足りてないのわかってるから言わなくていい」
「そうだのぉ〜、最初は全然だったが、途中から回避は良くなっておったし、最後の戦略は中々良かったし、戦術も形になっておった。油断はしておらんかったが、捕まってしもうたわ。攻撃はわかっておるだろうが、あえて言う。火力がない! あれでは、倒せてミノタウロスぐらいだの」
いや、言わなくて良いって言ったじゃない? 暴露ったな! 火力不足なんてわかってるさ。
それでもミノタウロスは倒せるなら上々じゃないのか?? 俺7歳だよ?
ちなみに戦略と戦術ってあるけど。
戦略:『成果を出す為にどう動くのか?』
戦術:『戦略を実現するための手段』
という意味で捉えてくれていい。爺ちゃんがそう言ってた!
つまり、ここでの意味合いとしては、俺がアナを捕まえるために取った行動(土属性の初級魔法、鎖を使い、翻弄して流れを自分の物にする)が戦略で、実際に行動手段として不可視の鎖を悟られずに捕まえたのが戦術となる。
人間考えないと、ろくな事にならないからね。
「やっぱ、火力不足だよな〜。何か良い方法ないかな?」
「そうだの〜、純粋に他の魔法訓練していくかの? 体術は問題なさそうだしの。他は……召喚魔法とかでも選択肢は増えるのぉ」
方法としては色々あるのな。今気になるのは────
「固有魔法使いって、他の初級魔法以外使えるのか?」
「もちろん可能だの。我も固有魔法使いじゃぞ?」
はぁっ!? 聞いてた話と違う!!!
「初級魔法以上の魔法使えないって聞いたんだけど?」
「ん? そんなはずはないはずだがの……少なくとも500年前は固有魔法使いは戦術の幅が広くて相手にしづらかったぞ? 属性には適性はあるものの、熟練度次第では強くなるの」
なんたる事だ……まだまだ強くなる可能性はあるのか! やる気出てきたぞぉぉぉっ!
「むっ」
考える仕草をするアナ。
「どうした?」
「そのような話になってる仮説がわかった。おそらく、今の時代はそんなに強い輩がおらぬのだろう。昔は強い魔物もたくさんおったし、訓練もしっかりしておったぞ? 確かに固有魔法使いは成長速度が遅いが、適性魔法については問題なく使えるのは我が証明しておる。つまり、努力不足という事だの!」
なっ、なるほど。説得力あるな。
それより、アナさん。今どこから眼鏡出したの?
何処ぞの美人先生みたいなんだが。
髪の毛もポニーテールになってるし! 狙ってやってるなら、俺のライフは0よ?
まぁ、美人先生アナさん曰く。つまり、俺は努力不足だという事だな。ずっと訓練してきたんだが、才能が無いのだろうか?
しばらく、無言で考えていると。
「ちなみに、レオは7歳にしては異常だからの? 普通に固有魔法使いでなくても、そこまで使える奴おらんからの。我の時代でもごく稀にいたぐらいだしの。まだまだ伸び代はあるから安心するが良い」
良かった、少し安心出来た。
「……ってことは、魔法の訓練はこのまま継続するとして、他の手を考えるか……。そういえば召喚魔法とか言ってたな。俺に適性あるのか?」
「ふむ、どれどれ? ────解析」
そんな魔法もあるのか。便利だな魔法。アナの適性も多そうだしな……模擬戦という名の一方的な虐殺では多種多様の魔法使ってたしな。
「こっ、これは!?」
驚いてるけど、何かあったの!?
「おっ、わかったのか? どうだった?」
「わからんの。レオに関しては何故か解析でけんの……」
……なんでだろ? でも大体の属性魔法使えてたから試して行ったらいいか。
「とりあえず、召喚魔法使ってみようぜっ! 出来るかもしれないしさ。契約魔法も見様見真似で出来たしっ! それでどうやるんだ?」
「軽すぎるの……しかも契約魔法とか見様見真似で出来るもんじゃないのにの……」
いや、そんな事言われても出来たからな……やらねばわからぬ!
召喚魔法使ってみたいしっ! 憧れだしっ!
「いや、使えたら戦術の幅が広がるしいいんじゃない? それで召喚魔法どうやるの?」
「はぁ……とりあえず魔力を込めて、そして唱えるだけだの。『我の召喚に応じよ』と。それだけだの。まだやってはならんぞ?!」
「えっ!?」
「まさかやったのか!?」
やっちゃいましたよ……小声で言いましたよ? ダメなら、もっと早く言ってくれよ!
────目の前に魔法陣が現れ始めた。
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