19. タイガ国へ
メイサンとルミナと再会してからしばらくは二人も一緒の宿に泊まることになった。というのも二人の住んでいる近くに宿が無くて、折角だからと宿に移ってもらったのだ。ジェンが出来るだけ一緒にいたいと言って譲らなかったからね。
メイサンもかなり身体の調子が良くなってきたようで、一緒に買い物に行ったりもしている。3人で一緒に買い物をしている姿を見ると本当に親子のようだな。年齢的には孫という感じだけどね。
他にもマラルさんやアキラさんにも会っているようだ。こっちに来てから一番楽しそうにしている。こっちも年齢的に親子みたいな感じなので端から見ると変な印象だろうな。
結局10日間もこの町に滞在することになってしまったよ。もう一日、もう一日と引き延ばしていたんだけどきりが無いし、ルミナさんにも発破をかけられていたからね。
オカニウムを出発してから北上していったんアーマトへ寄っていく。
前によく泊まっていたカイランの宿に行ってみると、息子のカインが結婚して夫婦できりもみしていた。大きくなったんだなあ。最初に会ったときはほんとうにちっちゃな子供だったのに・・・。息子はカインが小さな頃にそっくりだった。
さすがに素性を明かすわけにもいかないので普通の宿泊客として泊まったんだけど、夕食の時にカインと少し話すことができた。
「お客さんはこの町は初めてかい?」
「ええ、今回は初めてやって来ましたよ。」
「ここは知る人ぞ知る宿なんだぜ。なんせあのアムダの英雄のジュンイチさんが若い頃に長期間泊まっていたところだからな。まあそうは言っても普通の宿なんだがな。
俺も小さい頃には何度か会っていてな、最後にあったときには大きくなったなあと驚かれたもんだよ。奥さんのジェニファーさんはすごい美人でな。最初にジュンイチさんが連れてきたときは驚いたもんだ。ほかに・・・・」
しばらくいろいろと話をして行ったが、ほんとに元気そうだな。こうやって知っている人が自分たちのことを覚えてくれているのはうれしいものだな。
ちなみにカイドルンとランミル夫妻はカイン家族にこの家を譲ってから近くに住んでいるらしく、今も時々手伝いにやって来ているようだ。まだまだ元気らしい。
翌日役場に行って以前お世話になったと言うことでクラーエルと風の翼の話を聞いてみたんだが、残念ながらクラーエルの二人はすでに亡くなっていた。魔獣に襲われて命を落としたというわけでは無く、普通に寿命という感じらしい。
風の翼のメンバーのうちフェルナーさんはすでに亡くなっており、カルマさんとニックさんは冒険者を引退していた。
フェルナーさんは魔獣との戦いで負った怪我が元で亡くなったみたい。子供達はすでに成人して働いているようだが、冒険者にはならなかったようだ。
アーマトでは2泊ほどして、昔行っていたお店などを見てまわった。他の町と同じようにかなり変わってしまっているのは仕方が無いだろう。
この後アーマトから西へと向かい、タイガ国との境界にある山脈までやって来た。ここにやって来たのは遺跡の調査のためだ。
実はデリアンさんに分けてもらった資料にこの付近にある連絡通路のことが書かれていたのだ。場所の記載部分は失われていたせいで一般的にはナンホウ大陸で見つかった連絡通路と解釈されていたようだが、デリアンさんはホクサイ大陸の連絡通路の可能性について記載していた。
一応連絡通路の場所が数字で書かれていたが、現在もこの数字の意味は解明されていないし、資料の大部分はかけて残っているのは一部だけだから余計に分からないのだろう。
以前に書き写していた地図と地点の数値からヤーマンとタイガ国の間の山脈にある連絡通路と予想できたので、事前にクリスさんに連絡を取り、調査のことは伝えている。
この話をしたときにはやはりこっちにもあったのかいうのが感想だった。まあナンホウ大陸にあれだけ連絡通路があるのにこっちにないというのも変だからね。
ただ、予想される場所がかなり山の奥の方となるので、もし見つかったとしても実際に使えるようになるにはかなりの期間が必要となるかもしれない。タイガ側も結構厳しそうなとこに繋がっていそうだからね。
山の方へと入っていくと、徐々に魔獣のレベルが上がってきた。優階位上位の魔獣までいるので気を抜くと危ない。とはいえ、警戒しながら進むことでこちらが先手を打つことが出来るので危なげなく倒すことが出来ている。
前回の宿泊は小さな拠点を出して交代で休んでいたのだが、いろいろと試した結果、新しく造った拠点なら大丈夫だろうと言うことで今回はこれを使うことにした。まあ今回は周りに人がいることもないだろうからね。
日が落ちる前に十分な広さのある場所を見つけて拠点を出す。拠点は直径20mくらいの円柱状の岩で、高さは8mくらいある。この岩山の2階くらいのところに入口があり、中をくりぬいて部屋にしているのだ。
外壁は加工して自然の岩のままだし、入口は高い位置にあるうえ、ぴったりとはめ込んでいるため、まず知らないと分からない外観となっている。自分たちは飛翔魔法で出入りは自由だ。まあ最悪はしごも用意できるけどね。
魔獣についても認識阻害の魔道具でわかりにくくなっているし、前回確認したときでも問題は無いだろうと言うことになった。まあもし襲われたとしても外壁が厚いからいきなりやられるということもないだろう。
そして中は前の拠点よりも広く造っており、寝室にリビング、客用の二部屋に台所、トイレにお風呂と贅沢な感じになっている。一応警戒はするが、ずっと楽になるだろうな。
事前に近くにいる魔獣は退治しておくが、優階位の魔獣の行動範囲は結構広いから安心は出来ない。一応休憩は取るが一人はいつでも対応できるように警戒はしていたが、やはり前の拠点よりもずっと安心して休むことが出来た。
交替で見張りながら森の中を進むこと10日、やっと目的の場所までやって来た。
しかし目的の場所近くまでやって来たのだが、簡単には遺跡は見つからなかった。まあ書かれている位置の数値だとやっぱり範囲はあるからな。あと山の中腹がかなり崩れてしまっているのも問題だ。
ナンホウ大陸の連絡通路はありそうな場所がかなり限定されていたのでわかりやすかったんだが、こっちは結構な範囲が崖になっているので簡単には分からない。
おおよその当たりを付けてから地中の探査をやっていくとそれらしきものを発見する。探知が出来ないものが広範囲にわたっていあるのである意味分かりやすい。岩を除いたりして掘り進むとやっと遺跡のようなものが見えてきた。
さらに掘り進んでいくとやっと空洞部分に到達できた。中から空気の流れは感じることが出来るが、特に魔獣の気配は感じない。
中に入ってみるが、壁の一部が崩落しているところもあって結構厳しい状態だ。さすがにこのまま進むのも怖いので、いったん休憩を取って、十分に休養してから調査を開始する。
さすがに崩落したら危ないので、道しるべの玉を持って移動するしかない。もしもの時は転移すればいいからね。途中完全に土砂が落ちて埋まってしまっているところもあって掘り進みながらの移動となったが、さすがにこの中で寝るのは怖いのでひたすら歩いて行く。
しかし、いままで発見した中で一番状態が悪いなあ。使えるようになるまでかなり時間がかかりそうだ。壁とかも強化しなおさないととてもではないけど使えないよな。まあ一から掘るよりは断然楽だろうけどね。
寝ないでひたすら歩き続け、なんとか反対側に出たときには二日経っていた。きつい・・・。辺りを見てみるとやはり優階位の魔獣の気配がする。すぐ近くは近寄ってこないようだけど、これはまずいな。とりあえず拠点を出して交代で仮眠を取って体力を回復させる。
このあと魔獣を討伐しながら森を進み、森を抜けたときにはすでに15日経っていた。結局ここに来るまでに1ヶ月近くもかかってしまったよ。
ここからタイガにある、龍を見に行った町、チルトへ。町は高い城壁に囲まれたところのせいか町の規模は大きくなっていなかった。ここの役場に行ってクリスさんに連絡を取ってみる。
「クリスさん、お久しぶりです。さっそくですが用件に入って良いですか?」
通話にかかる費用も馬鹿にならないのですぐに本題に入る。
「わかった。連絡があったと言うことは見つかったと言うことなのか?」
「ええ、なんとか発見してタイガ国にやってこれました。今いるのはタイガのチルトという町です。」
「さすがジュンイチ達だな。まさか本当に見つけてくるとは・・・。」
「ええ、ただそれほど喜ばしい話ばかりではありません。実は・・・」
とりあえずおおよその位置と周りの状況、連絡通路の状況について説明する。細かなものについてはあとで書面でも送ることにしているが、場所については目印としておいてきた魔道具について説明をしておいた。
「状況は分かった。個人でどうにかなる話ではなさそうなので、兄にも相談してタイガ国との共同事業として進める方向で考えるよ。
報酬については事前に話していたものでいいのか?」
「ええ、それで大丈夫ですよ。それではまたそちらに行ったときには顔を出しますね。」
「ああ、待ってるよ。」
まあ、場所や状況を考えると、1、2年で使えるようになるとは思えないよな。まああとは経済性のメリットとの天秤になるだろうけど、ナンホウ大陸よりも価値は低そうなんだよなあ。
事前にヤーマン国からの依頼で山越えをしてきたということにしていたので手続きは特に困らなかった。狩ってきた優階位の魔獣を出したら納得してくれたしね。まあ冒険者の階位は良階位だからかなり驚かれたけどね。かなりの実績ポイントになりそうだ。
~~クリストフ王爵Side~~
サビオニアに行った二人から定期的に連絡は受けていたんだが、またとんでもないものを見つけたと連絡が入った。なんとヤーマンとタイガの間にある山脈を貫く連絡通路だ。
もともとナンホウ大陸での連絡通路が公開されたときにホクサイ大陸でもあるのではないかという話は持ち上がった。このため何度か調査が行われたが、手がかりすら見つからなかった。
今回遺跡の文献で連絡通路のことが書かれているようなので調査に行ってくると連絡があり、それから2ヶ月ほどで発見したと連絡があったのは驚きだった。
ただ連絡通路の状態がかなり悪いこと、出入り口付近には優階位の魔獣が多く生息しているため、すぐに使用できることではない事などを説明された。それでも大きな発見だ。
場所については事前に話していたとおり調査は出来そうなので早めに調査隊を組織しなければならない。いや、それより前にまずは兄に相談だろう。タイガにも連絡を取らないといけないからな。
戻ってきて早々にこれだけの偉業を成し遂げるとは、相変わらずだな・・・。二人の冒険譚はかなり創作のところも多いが、実際にはそれ以上に事もやって来ているからな。
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