237. 異世界1762日目 オークション

「いい付与魔法の付いたアクセサリーがほしい。」


「・・・急にどうしたの?」


「いや、装備は十分なものがそろったけど、それに比べるとアクセサリーはまだ強化できてないなあと思ってね。自分たちで作れればいいんだけど、アクセサリーへの付与魔法は武器とかにするよりも高度な技術がいるから、まだいいものは作れないからな。」


「たしかにそうなのよね。素材がいい物になればさらに難しくなるからね。だけど、今以上のものとなるとそもそもなかなか手に入れるのは難しいし、金額的にも難しいんじゃないの?」


「そうなんだよなあ。アルモニアに行けば何とかなるかと思っているけど、かなりの金額がいるんだよね。今の残金は1500万ドールくらいだからいろいろとそろえるとなるとちょっと厳しいかな。」


「それじゃあ、あきらめるしかないんじゃないの?」


「それで前に言っていたように収納バッグを売ろうと思っているんだ。ただそのまま売るのとオークションに出すのでは値段差が大きすぎるんだよね。下手したら500万ドール以上の差が出ると思うんだ。ハクセンでもオークションをやっていればいいんだけど。」


「ラクマニアさんに聞いてみるしかないわね。」




 食事の時にオークションのことを聞いてみる。


「ハクセンではオークションのようなイベントはないのでしょうか?」


「オークション?何か買いたい物でもあるのか?」


「いえ、実は売りたい物があるのですが、できればオークションに出したいと思っているのです。」


「オークションに出す価値の物と言うことか?」


「ええ、実は収納バッグなんですが、収納魔法の容量も増えてきたのでいくつか売ってしまおうかと思っているのです。」


「いくつかと言うことは複数持っているのか?たしかに収納バッグならオークションの方が値段が上がるだろうな。特に容量の大きな物になればなるほどその差は大きくなるはずだ。」


「ええ。それでオークションがないかと思いまして。」


 王都では年に2回、1月と7月に大きなオークションが行われているみたいだった。7月の方が直接参加する人が多く値段が上がりやすいので出品者にはいいが、1月でも代理人や通信で参加するので極端な値段差は出ないらしい。


「出品する場合は保証人が必要だが、私が保証人になれば問題ない。オークションの開催は1月15日でその10日前に出品されるもののお披露目があるはずだ。出品物の鑑定やカタログ作りもあるので、たしか1ヶ月前が締め切りだったはずだが、今なら何とか間に合うと思うぞ?」


「本当ですか?それではお願いしたいと思います。」


「わかった。あとで連絡先や保証人の書類の準備をさせよう。」


 食事の後、ラクマニアさんから出品する内容を聞かれたので説明するとかなり驚いていた。


「本当にその収納バッグを出すのか?もう手に入れるのは難しいと思うぞ。と言っても二つも手に入れている時点で普通じゃないことだな。そう考えると今後も無理というわけでもないかもしれんな。」


「ええ、運が良かったと思っています。ただ収納魔法もかなり容量が増えてきたので今はそれよりも他に装備を充実させたいと考えています。」


「収納魔法は私も使えるが、収納バッグより使い勝手はいいのは確かだからな。

 しかしこの容量だったらおそらく一つ2000万ドール以上は確実に行くだろう。正直我が家で買ってしまいたいところだが、このサイズの収納バッグは値段が天井知らずだからオークションに出す方がいいだろうな。」


「すみません。」



 ラクマニアさんが保証人となってくれたおかげでオークションへの出品手続きはすぐに完了した。商品の確認をしてもらい、出品時の注意事項や補償内容などを確認して契約をすませる。最低価格を考えるとある程度アクセサリーを更新できるかな。




 折角なので事前の出品物の展示を見に行ったが、思った以上に規模がでかかった。さすがにこれだけの数は一度に裁けないので当日は複数の会場でオークションが行われるようなので、会場などちゃんと確認しておかなければならない。

 収納バッグは自分たちの二つの他には5キリルのものが1つだけだった。同じサイズのがいくつも出ていると価格が下がりそうだけど、これだったら特に問題はなさそうだ。出品される順番は当日にランダムに行われるので順番も重要になるけど、後の方が値段は上がりやすいのかな?まあどっちにしろ自分では調整できないので考えても意味ないけどね。

 このサイズの収納バッグが出るのは久しぶりみたいでかなりの値上がりが期待できるらしい。最初から2000万ドールで始まるらしく、30キリルの方はなんと2500万ドールからと言っている。スタート価格ですでに考えていた額よりもかなり高くなっているのは驚きだ。


 アクセサリー関係の出品もあったんだが、問題は価格だ。優レベルのものまで出ているけど、最低価格を考えると今の持っている金額だと、ちょっと難しいだろう。当日は一応アクセサリー関係のところを中心に見ていく感じかな。




 オークションの当日は会場周辺の警備がすごかった。まあ出品されているものの価値を考えると仕方がないことだろうけどね。収納バッグが出品されるところは他に興味を引くものがなかったので経過だけはあとで聞くことにした。ラクマニアさんの代理人が出ているようだからね。

 出品される順番が分かればいいんだが、順番はその場でランダムに決められていくのでいつ目的のものが出るのか分からないからずっと見ているわけにもいかないもんなあ。



 ジェンとはお互いに予算を決めていくつか購入できたけど、やはりアクセサリー関係はまったく手が出なかった。まあこんなところに出るくらいレベルのものなのでしょうがないんだけど。

 結局古代遺跡の遺物関係や薬関係のものをいくつか購入するにとどまった。使えるかどうかも分からないものだが、数万ドールくらいになるのは仕方がないだろう。



 自分たちの出品した収納バッグも無事に落札されたので代理人の人に話を聞いてみる。最初に出品されたのは5キリルのもので、大きな収納バッグが出ていたせいか、通常よりも安い450万ドールで落札されたらしい。

 その後30キリルの収納バッグが出品されたが、なんと3800万ドールまで上がったようだ。ちなみに以前ラクマニアさんのところでもほぼ同じサイズのものを購入したが3000万ドールくらいだったらしい。そして26キリルの方は通常価格を大幅に超えて3100万ドールで落札されたと言われる。

 小さな収納バッグをいくつも買った方がお得な気がするんだが、大きな荷物を運んだりすることも考えるとメリットが計り知れないようだ。収納容量が大きい方が荷物の軽減率も高いからね。箱ごと収納できるというメリットもあるからね。



 オークションのあと、数日したところで落札金の受け取りに行く。手数料は落札価格によって異なるようだが、今回は落札額の5%とられてしまうようだ。ただ貴族優遇で手数料は4%と少し安くなる。1%と言っても額が額なのでかなり大きいよな。60万ドールくらいの差が出るわけだしね。

 手数料を引いても6500万ドールくらいになったので、アクセサリー関係も結構いい物が購入できるだろう。

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