226. 異世界1587日目 ハルマの鍛冶屋

 久しぶりにハルマに戻ってきたので、早速鍛冶のお願いに行こうとカルマの店に行ってみるが、店の入口が閉まっていた。


「あれ?ここだったよね?」


「ええ、場所はここで間違いないはずだけど・・・。」


 確かにカルマのお店という看板は出ているんだが、入口は閉まっている。


「おかしいなあ?この時間に開いていないと言うことはないはずだけど・・・。」


 入口を見てみると、「作業場および店舗移転の案内」という紙が貼られていた。


「移った場所は表通りになっているけど、何かあったのかな?まあ場所がいいところに移ったと言うことは悪いことでは無いと思うけど・・・。」


「人気はあったみたいだから何かのきっかけで繁盛したのかもしれないわよ。」


 案内のあった場所に行くと、2階建ての大きな店舗があった。


「ここ?えらく一気に大きなところになってるね。間違いないよね?」


「裏の方がどうなっているかわからないけど、すごいわね。店の名前は合っているからとりあえず入ってみましょう。」


 店舗部分は前の店の3倍くらいの広さになっていた。置いているのはやはり高レベルまでしかないのでやはり良レベル以上は注文となっているのだろう。レベルの高い商品は展示品としていくつか並んでいるだけだ。商品を見るとカルマさんのところの特徴があるので間違いなさそうだ。


「すみません。カルマさんにお願いしたいことがあるんですが、呼んでいただくことはできますか?」


 前にいた店員のカレンさんはいなかったので店員と思われる女性に声をかける。


「申し訳ありません。親方はいろいろと忙しくてちょっと難しいですね。装備の注文でしたら他のものが対応しますのでそれでもよろしいでしょうか?」


「ええ、お願いします。」


 しばらくすると、あのとき新人だったタレンダさんが奥からやってきた。


「タレンダさん、お久しぶりです!!」


「あああっ!!ジェニファーとジュンイチじゃないか!!久しぶり!!元気にしていたか!!」


「ええ、他の皆さんも元気ですか?」


「ああ、元気元気!!こっちに入って来いよ!!お前達なら大丈夫だ。みんな驚くぞ!!」


 関係者以外立ち入り禁止となっているドアの方に誘われたので先ほどの店員に挨拶しながら中へと入って行く。店員は何が起きたのかよくわかっていない状態のようだ。



「「お久しぶりです!!」」


 鍛冶場に入ったところで声をかけるとみんなの視線が集まる。作業をしている人は前よりも増えているようだ。その中にはもちろん知っている顔もあった。


「「「おおっ!!ジェニファー!!とジュンイチ!」」」


 やっぱり目に入るのはジェンが先なのね。自分はついでのようだ。まああのときのジェンのもて具合を考えるとしょうがないけどね。

 すぐにカルラさんもやってきて、見知った人達と一緒に話をする。結婚したことは連絡しておいたので、「やっとひっついたのか。でも、正直うらやましいな。」と散々言われてしまったよ。




 少ししてカルラさんの仕事が一息ついたと言うので2階の部屋へ移って話す。最初に今回移転した経緯を説明してくれた。


 今から2年くらい前にかなり身なりのいい騎士から装備の注文があり、その依頼を受けて装備を作ったらしい。すると気に入ってくれたのか、その騎士の知り合いという人が数多くやって来るようになったようだ。


 もともと手狭になってきていたので場所の移転を考えていたし、ちょうどいい場所が空いたので、思い切って場所を移したようだ。前の場所も倉庫兼見習いの鍛冶場として使っているらしい。

 こっちでは例の魔道具を設置し、時間に関係なく鍛冶ができるようにしているようだ。ただ根を詰めすぎるといいものが打てなくなるので、よほどの時以外は時間に制約を設けているらしい。ちなみに魔道具はお金をかけて高性能のものをつけたと説明しているみたい。


「今回やってきたのは装備の調整か?」


「えっと、実は新しい装備を作ってもらおうかと思ってきたんです。」


「装備の買い換えか?そんなに痛んでいるようには思えないが・・・。」


「一応自分でも手入れはしていますし、定期的に鍛冶屋に調整を頼んでいるので今のところ問題ありません。今回はもっと上のグレードの装備に変えたいと思っているんです。」


「前のものより上となるとオリハルコン製になるからかなりの値段になるぞ?金は大丈夫なのか?最近やっとサビオニアからの鉱石が入るようになったとは言え、オリハルコンはやっぱり高くなるぞ。それ以前に材料がすぐにそろうかも怪しいからな。」


「ええ、それは分かっています。実はオリハルコンなどの素材を手に入れることができたのでそれで作ってもらえないかと思ったんです。」


「オリハルコンを手に入れたのか!?それはすごいな。」


「ええ、偶然にも古代遺跡を見つけることができて、そこにあった素材を回収してきたんです。ですのでオリハルコンやミスリルなどの素材は出せますので剣と短剣をお願いできないかと思っているんです。」


「わかった。素材を出してくれるのなら値段はかなり抑えることができるぞ。もちろん手間賃はもらうがな。最後の仕上げは俺がやるとしても他の注文もあるからやっぱり1ヶ月くらいは見てもらわないといけないぞ。」


「ええ、それで十分です。それでその間、またここで働かせてもらえないかと思っているんですが、大丈夫ですか?」


「それはこっちも願ってない申し出だ。おまえ達が居ると他の奴らの気合いの入り方が違うからな。もちろん教える方も手加減はしないぞ。」


「ええ、そっちのほうが助かりますよ。」


 話はすぐにまとまって、装備ができるまでここで働くことになった。賃金については装備代から差し引いてくれるようだ。



 話が一段落した後、新しい人達に紹介してもらう。この日は休みの人もいたが、今は鍛冶職として8人、販売員として2人、事務員として1人が働いているらしい。

 鍛冶の腕はムニワさんの次に他の鍛冶屋から移ってきたタルトさんとなるらしい。その下に前から居る3人のカルキアさんとサーザさん、タレンダさんと他から移ってきたムスダさんがいて、マルトさんとカルトさんは新人でまだ見習いらしい。指導係として前と同じくムニワさんがやってくれるようだ。

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