220. 異世界1495日目 タイカン国の港町

 久々の港町なのでちょっとテンションが上がっている。町に到着してからまずは聞いておいた宿を予約してからさっそく港に行ってみると、昼前だったのでまだいろいろと魚が売られていた。魚は温かいところの魚だけではなく、寒い地域の魚も多い。この沖の方で暖流と寒流が混じっているのかもしれないな。


「すみません、ここの魚は生で食べたりはできますか?」


「お、生魚を食べるのかい?それだったら下処理をしたものがあるけどこれでいいか?」


 そう言って血抜きをした切り身を出してきたんだが、せっかくなら自分で処理した方が綺麗だよなあ・・・。


「すみません、血抜きは自分でするので、いけすの魚を捌いてもらっていいですか?」


 いけすに入っていたハマチのような魚を絞めてもらい、水魔法で綺麗に血抜きをしてから浄化魔法もかける。そのあと三枚に下ろしてもらって、最近購入した甘口の刺身醤油でワルナと一緒に味見をしてみる。

 うん、脂ものっていて美味しくて十分に食べ応えがある。他にもいくつか魚を捌いてもらい、近くのテーブルを借りてお昼にすることにした。


 浄化魔法や血抜きを見たせいか、店の人が少し味見をさせてくれないかと言ってきたので食べさせるとえらく感激していた。


「あの短時間でここまでちゃんと血抜きができるのか・・・。ここで働く気はないか?」


「いやいや、さすがにそれは無理ですよ。」


「まあそれはそうだろうな。今あるだけでも手伝ってもらうことはできないか?あとでお礼は十分にするからさあ。」


「まあそのくらいなら・・・。」


 簡単に引き受けてしまったせいでかなりの魚の処理をやらされることになった。まあサービスと言ってかなりの魚をもらうことができたからいいんだけどね。しかも夕食までごちそうになったし。明日からしばらく買い物に来ることを伝えてから宿に戻る。

 宿は1000ドールのダブルの部屋で、こざっぱりしてきれいなところだった。朝食も簡単なものは付いているようなのでこの値段なら十分安い方なのかもしれない。




 翌日は朝一から港に行って、新鮮な魚介類をいろいろと購入する。貝はアサリやハマグリみたいなものから牡蠣やホタテのようなものまであったので購入したついでにここでも食べていくことにした。やはり牡蠣の炭火焼きは最高だ。ポン酢に醤油でさらにおいしさ倍増。浄化魔法をかけて生でも食べたけどね。

 牡蠣の養殖はまだ行われていないみたいで、天然のものしかないのか値段は結構するのは仕方がないところか。魔法があるので殻ムキも楽だし言うことなしだね。牡蠣はジェンも大好物だったみたいで、二人でかなりの量を食べたので、お店の人もあきれていた。こんなに食べる人も多くないのだろう。


 しばらくの間、毎日港に通って食べまくっていたせいか、店の人に顔を覚えられてしまった。まあ買う量も多かったからね。店の近くを通ったときに、今日のおすすめと言われたときに気に入ったものは大量に買っていたから覚えられるのも当然か。

 しばらく通っていると、漁師を紹介してもらって漁にも連れて行ってもらい、釣りたての魚をその場で食べたりとかもして、港町をかなり満喫することができた。

 船では釣りもさせてもらったりもしたしね。ついでに海にいる魚の魔獣も何匹か倒すこともできた。このあたりは特に船の上までおそってくるような魔獣はいないらしいけどね。




 ミントウアリアを出発してから次に行った大きな町は、少し内陸に入ったところにあるルイトウというところだ。ここは農作物が豊富なところで、ここでもいろいろな食材を買い込む。どこかの業者かと言われてしまったよ。

 いろいろ買ったり注文していたら、市場の仕入れの時に同行させてもらってほしいものをまとめて購入できたのは助かった。お店で買うより安くしてもらえたし、欲しいものも十分に買えたからね。果物とかも結構いろいろと手に入ったのはよかった。ヤーマンとかだとかなり高いものも、こっちではかなりの安値だったからね。



 この国に来るまでに魔獣の肉以外の食材がほとんど無くなっていたんだけど、かなりの量をストックすることができた。数ヶ月分は買ってしまったかもしれないなあ。まあ腐らないから大丈夫と思って買いすぎるのはしょうが無いところか。


 いろいろと寄り道しながら移動していたこともあり、モクニクとの国境の町アルトバに到着したときにはすでに4月になっていた。


~ジェンSide~

 王都のタイカンでいろいろとお酒について情報を仕入れていたので途中はいろいろと寄り道をしてもらった。さすがにルートから外れすぎるところはあきらめたんだけど、それでも10軒以上の酒蔵に寄っていろいろと買うことができたのはよかったわ。本当はもっと寄りたいところもあったけどね。


 そのうちの一軒はかなり有名なお酒を造っているところで、売ってもらえるかどうかはわからないと言われていたところだった。せっかくだからと寄ってみたけど、やっぱり売ってくれなかった。どうやら協会に入っている会員にしか売ってくれないということだった。


 ダメ元でハスカルさんの名刺とそのときに書いてもらった紹介状を見せてみることにした。というのも、もらった名刺に今言った協会の肩書きが書いてあったのを思い出したからだ。


「協会には入っていませんが、この紹介状ではだめですか?」


 そういって名刺を渡すと、ちょっと驚いていた。


「こ、これは副会長のハスカルさんの名刺?こっちはハスカルさんの紹介状?」


 しばらく紹介状を読んだ後で、こっちをにらんで言ってきた。


「・・・もし、今からいうお酒のどれかを少しでいいので飲ませてくれるなら売ってもいい。」


 言われたお酒のうち二つは持っていたのでそのうちの一つを出すとかなり驚いていた。さすがにそのときの顔を見ると、そのまま引っ込めるわけにもいかず、試飲をさせてあげるとかなり感激していた。


「さすがハスカルさんの紹介状を持っているだけあるな。今言ったお酒が本当に出てくるとは思わなかったぞ。半分冗談だったんだがな・・・。

 会員でなくても会員からの紹介状があれば売ることにはしていたんだよ。試飲までさせてもらったからには秘蔵のお酒も含めて売れるものを出すから買いたいだけ買って行ってくれ。」


 そう言ってかなりの数のお酒を出してくれたので買える分は全部買っていくことにした。かなりの金額になったけど、次の機会はないのでイチには目をつぶってもらった。もちろん私の小遣いからもお金を出したわよ。


 だけどハスカルさんって、この界隈ではかなりの有名人みたいね。あのとき会えてよかったかもしれないわ。

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