217. 異世界1453日目 タイカン国

 せっかく新しい国に来たんだから、やっぱりこの国を楽しまないといけないよね。


「ジェン、せっかく新しい国に来たんだからいろいろと回っていこうと思うけど、どこか行きたいところはある?」


「久しぶりに大きな港町に行ってみたいというのはあるわね。もう新鮮な魚もあまり残っていないから仕入れておきたいわ。」


 たしかに大型の魚はもう切り身が少し残っているくらいになっていたような気もする。あれだけ仕入れていたけど、結構日数も経っているし、寄付とかもしたから仕方が無いよな。


「たしかにこっちの大陸に来てから港町に行く機会が少なかったからなあ。途中の小さな港町だとあまりいい魚も仕入れられなかったしね。

 今は1月で秋くらいになってきているんだけど、少し北上すれば結構温かいらしいよ。なので王都に移動してから徐々に北上していく感じでタイカン国を見て回るかな。西海岸の方に行けば大きな港町もあるみたいだからね。」


「そうね。王都は冬になっても雪が積もると言うこともほとんど無いみたいだから、いろいろと見て回りましょう。」


 地図を見ながらおおよそのルートを確認するが、日程については成り行きでいいだろう。まずは南下して途中寄らなかったアルマに行き、そこから西にある王都のタイカンへ。そこから北西にある港町のミントウアリアに寄ってからルイトウを経由してモクニクとの国境の町アルトバに向かう感じだろう。

 あとどのくらいこっちの世界にいられるのかはわからないけど、それを気にしていたら何もできないから残りの時間は余り考えずにやりたいこと、できることをやっていこう。




 まずは途中に寄っていなかったアルマまで南下する。アルマはもともとこのあたりでは結構大きな町だったが、サビオニアへの窓口となっているロニアの町との中継点になっていることもあり、手狭になってきたらしく、町の規模を広げるための工事が行われていた。


 町に入ってから宿を予約して役場へ行くことにした。今回の遺跡調査で魔獣を狩っていたんだが、ムニアの町では買取額が若干安いという話を聞いていたので売っていなかったのである。まあせっかくこっちに戻って来るのなら若干でも高いところで売った方がいいのは当たり前だからね。

 今回は良階位の魔獣だけでなく、優階位の魔獣まであったので最低金額とは言え、結構な金額となるはずだ。もちろん普通のところで買い取ってもらった方が金額が高くなるんだが、せっかくなので役場に買い取って実績ポイントもつけておくことにした。

 優階位へ上がれるための実績ポイントはかなり必要なのであと3年近くこっちでがんばったとしても上がれることは無いと思うけど、せっかくなので実績はためるようにしている。優階位の魔獣をガンガン狩ることができればなんとかなるかもしれないけど、さすがにそれもきついからなあ。


 さすがに冒険者も多くて買取の方にも少し列ができていた。もう少し早めに着いていたら良かったんだけどこれはしょうが無い。


「おいおい、ここの買取は基本的に良階位以上の魔獣の素材だぞ。上階位までは町の買取に出すのはわかっているよな?」


「上階位でも買い取りできる魔獣を狩ったのかもしれないだろう。頑張っているんだから茶々を入れるなよ。」


 誰に言っているのかと思ったらどうも自分たちに向かって言っているようだった。まあ自分たちの見た目では良階位には見られないかもしれないね。普段は温度調節の魔道具のついたマントも羽織っているから装備もわからないからね。


「ご心配ありがとうございます。ちゃんと買取対象の魔獣の素材なので大丈夫です。」


 自分たちの順番が来たところで素材を出すと先ほどの人達が驚いていた。良階位の灰牙豹や優階位の魔豹や大蹴兎の毛皮は見たらある程度わかるからね。


「おい、あれって優階位の魔獣の毛皮だろ?」

「まさかあの二人優階位の冒険者なのか?」

「やべ・・・。」


 買取を終えて頭を下げていくと、かなり緊張した顔をしていた。持っている素材を見たところ良階位の下位のものなので良階位になったばかり位なのかもしれない。




 ここの町にはカサス商会も出店しているので顔を出すと驚いていた。サビオニアに行っているはずだったのにいきなりタイカンにいれば驚くだろう。なんとか国境を越えてこれたと言うことでごまかしていたけど、いずれはどうやって来たかわかるだろうな。

 魔符核の納入を求められたので作っておいた分を渡すとかなり喜ばれた。まああれから半年くらい経っているからね。需要は大分落ち着いてきているようなので足りなくなるほどではなかったようだ。

 前までは振り込んでもらっていたんだが、最近は貯金だけでなく、そのまま魔獣石で受け取っている。収納魔法があるので必要ないからだ。インスタントラーメンの特許代などは振り込んでもらっているが、こういう場合は魔獣石で受け取っている。



 町はまだ貴族支配の時の名残が所々残っている。エリアは現在は分かれていないんだが、もともと貴族エリアだったんだろうというところもあった。もともとの貴族エリアと思われる場所の家は大きなものが多く、今はお金を持っている人達が住んでいるのだろう。

 ヤーマンとは異なり、貴族というのはなくなっているが、貴族がすべて殺されたりしたわけではないので、財産はかなりとられたとはいえかなりの資産を持っている元貴族もいるだろう。日本のもと華族みたいなものかもしれないね。


 町はいろいろと拡張していることもあり、かなり活気がある。あちこちで建設も行っているし、屋台などのお店もかなり出ていて通りの賑わいもすごい。出店でも色々と売られているが、かなり怪しげなものも多いのはよくあることか?なにか掘り出し物はないかと探してみるがだいたいがガラクタだし、値段相応のものだ。

 まあそれでも久々に賑やかなところなのでジェンと二人でいろいろと買い食いしたりと見て回るだけでも楽しかった。



 宿はロンさんから聞いていたところにしたんだが、特に良くもなく悪くもなくという感じの普通のところだった。宿代は二人で1000ドールとかなのでまあ普通だろう。

 宿の一階にある食堂に行くと先ほど少し絡んできた冒険者の姿があった。せっかくだから話を聞いて見るかな?


「こんにちは。もしよろしければ話を聞かせてもらっていいでしょうか?」


「なんだ?・・・え、あ、はい、かまいませんよ。」


「いえ、そんなに気を遣わなくてもいいですよ。先ほどのことも別に気にしていませんので。あと自分たちは良階位ですし、年齢も下だと思いますので。」


「いや、見た目だけで判断して悪かった。それについては謝らせてくれ。」


 思ったよりも律儀な人たちだった。話を聞くと先ほどの3人と女性の冒険者が2人の5人パーティーのようだ。


 彼らはここ最近はこの町を拠点にしている良階位の冒険者で半年ほど前に昇格したらしい。今日は遠征から戻ってきたところのようだ。

 自分たちはヤーマン国の冒険者であることを伝えると、一度は他の国に行ってみたいんだよなあとうらやましそうにしていた。今は車の購入を考えてお金を貯めているところらしい。タイカン国内はある程度いろいろと行ったことがあるみたいでいろいろと情報を教えてもらった。

 こっちももし行くことがあったらと他の国のことを色々と話す。自分たちが二人で狩りをしていることにかなり驚いていた。まあ普通のパーティーは3人以上というのが多いからね。


 結局この町で2泊してから王都を目指すことにした。やっぱり別の国に来たら王都に一回は行っておくべきだろうしね。

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