175. 異世界1139日目 長い船旅

 出航までに拠点の整備や車の整備を済ませる。車は前と同じ型なので特に問題は無い。整備もちゃんとやってくれていたみたいでトラブルもなかったしね。

 そのあとは訓練をしたり技術の鍛錬をしたりとそれなりに忙しくしていた。ジェンは2回ほど遊びに行っていたが、自分と二人でも出かけたりと息抜きもした。

 せっかくなのでメイルミの宿でも少し手伝いをさせてもらったんだが、ジェンを見かけた常連さんたちは久しぶりの姿に喜んでいた。ただ結婚したことを聞いてかなり落ち込んでいたらしい。


 ルミナさんからはナンホウ大陸のことについて色々と情報を教えてもらった。やはり貴族という立場でないとかなり大変そうな国らしい。いろいろと生の情報が聞けたのはかなり助かった。




 出航は朝早いので宿の二人は見送りに行けないと残念がっていたがさすがにそこまで迷惑はかけられない。二人にお礼を言ってから港へ行くと、アキラとマラルは見送りに来てくれていた。

 船はすでに岸壁に停泊していて前にタイガ国から乗った船よりも一回り大きい感じだった。資料では全長220キヤルドとかなっていたからね。ただデッキ部分が広めに作られているみたいで、側壁にある窓もかなり小さい印象だ。

 受付で乗船券を受け取ってから、乗船口へ。二人は出航まで見送ってくれるようだがここでお別れだ。


「気をつけて行ってきてね。つらいと思ったら戻ってきたらいいからね。」


「体だけには気をつけてね。」


「二人もあまり無理しないようにね。」


 3人で抱き合って泣いていた。



 乗船口はやはり二つに分かれており、入口で身分証明証と一緒に乗船券のチェックを受ける。乗船まではまだ時間があるせいかそこまで混んでいない。平民用の方は結構混んでいるんだけどね。ギリギリになってくる人が多いのだろうか?

 階段を上ってから船内に入ると、係の人が部屋まで案内してくれた。途中からエレベーターで移動するので階段を上らなくて良かったのは助かった。結構上の方の階になっているので眺めはかなり良さそうだ。


 部屋の鍵はカード式になっているのでここでカードを渡される。部屋に入ると右手にウォークインクローゼットのようなところがあり、荷物が置けるようになっているんだが、もちろん荷物があるわけではないので正直いらないスペースではある。左手には洗面台とトイレが別々にあった。かなり広いトイレだし、洗面台もかなり大きい。

 短い通路のようなところを進むと、その奥はかなり広い部屋となっていて大きめのソファーにテーブルセットとこれまた大きな机と椅子まで置かれている。部屋の奥は部屋が区切られており、寝室となっているみたいで大きなベッドと小さなベッドが並んでいた。

 部屋の奥の窓際は半分はお風呂で半分がテラスのようになっている。テラスにもテーブルとイスが置かれているんだが、壁には小さな窓がいくつかついているだけだ。このため室内はそれほど明るくないので照明をつけないといけないレベルだ。

 お風呂には広い脱衣所と浴室があるんだが、浴室には小さな窓があるだけなので、外を見ながらという感じにはなりそうにない。外洋航路なので危ないのかねえ?

 残念ながら調理ができるようなところはないが、これは仕方が無いか・・・。まあ食事は基本無料で食べられるからいいんだけどね。

 部屋の中はやはり土足で入るようになっているので、浄化魔法で綺麗にしてからスリッパのようなものを出しておく。やはり室内で靴というのはいやだからなあ・・・。



 一通り部屋を確認した後、デッキに出てみると、眼下に見送りの人達が見えた。デッキは貴族用で人数も少ないので結構ゆっくりしているのはありがたい。見送りの中に二人の姿を発見して手を振ると向こうも気がついてくれたようだ。


 ジェンはこの距離ならなんとかなるかもと風魔法を使って二人に声の回線をつなごうとしているみたいだ。


「この距離で届くの?」


「ちょっと無理かなあ?手伝ってよ。」


 二人で位置を確認しながら空気の回線を伸ばしていく。


「マラル、アキラ聞こえる?」


「「え?え?ジェンの声?」」


「そうよ。魔法でこの距離だったらなんとか声が届くみたいなの。見送りありがとうね。」


「すごいわね。こうして話せるなんてちょっと驚きだわ。」


 さすがに距離があるせいか、時々声が聞こえなくなるが十分に意思の疎通はできるレベルだ。しばらく話をしていると出航時間になったみたいで合図の鐘が鳴らされて徐々に船が動き出した。


「「それじゃあ、いってきます!!」」


「「いってらっしゃ・・・」」


 残念ながらここまでが限界のようだ。手を振りながらお別れを言う。




 二人が完全に見えなくなったところでいったん部屋に戻ってから船内を見て回ることにした。


 貴族エリアにはレストランが2つ、遊技場やダンスホールがあり、デッキにはプールなどが設置されている。そして共用のエリアには舞台とレストランが一つある。共用と言っても入れるのはある程度の価格の部屋に泊まっている人だけみたいなんだけどね。実質的に貴族エリア、高級エリア、普通エリアという感じに分かれているみたいだ。

 自分たちが入れるのは共用のエリアまでで普通のエリアには入れないようだ。おそらくトラブル防止のためなんだろう。共用エリアに入るときも確認があるくらいだからね。



 船内を一通り見て回っているとお昼になったので貴族エリアのレストランで食べることにした。ここでは常に音楽の演奏がされているのでちょっと贅沢な感じである。

 他に食事をしている人達はいかにも貴族というような服装をしている人がほとんどで、ラフな格好をしているのはほとんどいない。特にドレスコードということは聞いていないんだけど、あれでも普通の格好なんだろうなあ・・・。

 ちなみにこちらの世界ではドレスコードというものは一応あるみたいだが、結婚式や何かのイベントの時くらいで食事の時に服を規定することは普通は無いらしい。ただナンホウ大陸ではある程度規制があるようなことは言っていた。

 やはり国によって若干異なるのか、おそらくナンホウ大陸と思われる貴族達の服装はどちらかというと原色に近い色合いが多いような気がする。偏見かもしれないけど、このような服の人にはあまり近づかない方がいいかもしれないね。


 食事の後は腹ごなしに少し訓練をする。デッキに周りを囲まれた訓練場のようなところがあったので良かったんだが、さすがに訓練をしている人の姿はない。まあ貴族エリアだからなあ・・・。冒険者をやっている貴族っているんだろうか?貴族の当主とかはいないだろうなあ・・・。


 このあとシャワーを浴びてさっぱりしてから舞台を見に行く。夕食は音楽を聴きながらのんびりと食べることにした。今回も食事や飲み物はすべて無料となっている。というか、すべて込みの料金体系なんだろう。まあアルコール関係はある程度制限されるけどね。

 最近は少しお酒も飲み出して少しずつだけど飲めるようになってきている。今のところ主に飲むのはワインと水割り位なんだけどね。お店でカクテルも飲んでいるんだけどまだあまりよくわかっていないのでジェンにお任せ状態である。


 食事の後はのんびりとお風呂に入ってくつろぐ。お風呂はかなり広いのでありがたい。こういうときは魔法で水が供給できるというのはいいよね。地球だったら水の制限がかかるだろうからね。


 せっかくなのでバーのようなところに行って軽くお酒を飲む。ここはさすがに有料となっているんだが、部屋の鍵を見せると後でまとめて精算となる。1時間ほどいろいろな話をしてから部屋に戻って寝ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る