147. 異世界778日目 王家の遺跡の秘密

 王宮に戻り、宝物庫で同じ物がないかを確認することにした。あと国王陛下にも確認したいことがあるので時間がとれたところで呼んでもらうことにする。



 宝物庫にあった道しるべの玉は全部で3個だが、すべて使用済みだ。一つだけ使用されていない物が残っていたのか?でも今まで何回も儀式が行われていたと考えるとそれが使われていなかったというのは考えにくいよな?


「すみません。今回クリストフ殿下が使った玉は従来あったものから選んだと言うことで間違いないですか?」


「ちょっと待ってください。」


 そう言って何人かに話を聞きに行ってくれた。


「申し訳ありません、確認をしていませんでした。なんでも今回は宝物庫の中で新たに見つかった物だったらしく、他の物よりも輝いて見えたためそれを使うことにしたらしいです。」


「新たに見つかったというのは一つだけだったのでしょうか?」


 転移できるものがあるか無いかで今後の対応が大きく違ってくるな。


「確認したところ、二つ見つかっていたようです。王家の試練には1つしか持って行かないため、クリストフ殿下の部屋に保管されておりました。これになります。」


 今あるものよりも若干明るい輝きをしている道しるべの玉があった。鑑定してみると確かに未使用となっていた。よし、最悪これでなんとかなるかな?




 しばらくしたところで国王陛下の時間ができたというので部屋を移動する。


「今回調査したところ、もしかしたらクリストフ殿下たちは別の場所に転移したのではないかと思われます。」


「転移だと?転移魔法でも使ったというのか?」


「実はあの道しるべの玉ですが、指定された場所に転移する機能がついている物があるのです。自分たちも一度それを使用して命が助かったことがあります。」


「まさか伝説のような話が実際にあったとは・・・。」


「そこで確認なのですが、この王家の儀式ですが、もともとは別の場所で行っていたという話はないでしょうか?道しるべの玉が示す位置が今回行った場所ではないように思うのです。お気づきかと思いますが、通常であればすべての値が0になるところに行くものだと思うのです。

 おそらく今回転移したのはその場所ではないかと思います。王家にそのような遺跡の場所についてなにか心当たりはありませんか?」


 こう言うとしばらく考えていた国王陛下は口を開く。


「ここからの話は先に話した内容よりも機密事項が高い。決して口外してはならないと約束してくれるか?君たちを信用して話そうと思う。」


「はい、それはもちろんです。」


「たしかにそのような話はある。城の禁書にもそのような話が書かれているが、詳細はあくまで口頭にて伝えられていた話なのだ。ただし詳細については私も正式には聞いていない。というのも私の4代前の王がそのことを正式に伝える前に亡くなってしまい、一部の話が伝わらなかったのだ。

 今わかっているのは、古代遺跡を封印したこと、その遺跡への道はわからないように王家の血によって封印されたこと、簡単には見つからないように偽装されたことだけなのだ。」


「何か危険なものを封印したと言うことではないのですか?」


「話は3代前の王が8歳の時に聞いた話らしく、断片的にしか伝わっていないのだが、何かを守るために遺跡を封印したと言うことらしい。」


「内部からだったらその通路の場所もわかるかもしれませんね。」


「外から入るのを防ぐために偽装したようなので、内部はおそらく通路の痕跡が残っているだろう。」


 転移については転移先に何かがあれば転移はできないと言うことだった。転移してしまったと言うことはちゃんと転移されている状態なんだろう。「石の中にいる」というのはないはずだ。

 転移先がどんな状態なのかわからないが、たとえ無事だったとしても出口がどこにあるのかわからないと言うことではないかと思う。場合によっては光がないことも考えられるし、場所がわからなければ出口の見当もつかないだろう。


 転移してみるか?でもそこに魔獣がいたらどうする?おそらく100年以上は経っているから魔獣がいたら階位が高いものが生き残っている可能性もある。魔道具で隠密を使えばなんとかなるか?でもそこから抜け出せるという保証はない。でも出口のある可能性は高いはずだ。


 危険はあるかもしれないが、クリスさんたちを見殺しにはできない。行った先が大体どこなのかわかっている人間と、全くわからない人間では考えることが違うはずだ。ここで助けに行かなければずっと後悔することになるだろう。


「国王陛下、申し訳ありませんが、道しるべの玉を使用させていただくことはできるでしょうか?確実とはいえませんが、自分たちもその場所へ飛んでみようと思います。」


「大丈夫なのか?」


「行けるかどうかもまだわかりませんし、行けたとしても確実に助けられるということではありませんが、このままだとおそらくクリスさんたちは戻ってこられないように思うんです。可能性があるなら行ってみたいと思います。

 ただ、高階位の魔獣がいたときのために志願兵を同行させていただくことはできますか?自分たちだけだと高階位の魔獣がいた時点ですぐにやられてしまいます。ただおそらく転移できるのは人数制限があると思います。クリスさんたちのことを考えると少なくとも5人は転移できると思いますのでどのくらい志願してくれる人がいるかわかりませんが、4人以上お願いしたいと思います。」


「行ってくれるのか?」


「ええ、友人と呼んでくれたクリスさんのためにも頑張ってみます。」


 後悔するよりはやって後悔した方がいい。確実に死ぬと決まったわけではないし、戻ってこられる可能性もそこまで低くないはずだ。


「イチ、一人で行く気じゃないわよね?」


「いや、ジェンは残ってよ。二人一緒に危険を冒す必要は無いよ。」


「なに言ってるのよ。何のためのパーティーなの?こんな時に一緒に行かないようだったら意味が無いでしょ。」


 ジェンの目を見ると、どう考えても引いてくれそうにないな。


「国王陛下、申し訳ありませんが、自分たち二人と少人数でも対応できるメンバーをお願いします。」


「わかった。手配しよう。」


 今からすぐに準備をしても夜になってしまうため、出発は明日の朝一に行うことにした。皆のことを考えると早めに行った方がいいのかもしれないけど、無理して助けられなければ意味が無いからね。行くときは万全の体勢で行かないといけない。



 明日の0時に王宮で待ち合わせることにしてからいったん宿に戻ることにした。いくつか準備をお願いしてから王宮を出てからカサス商会に向かい、必要な道具を色々と買っていく。後は食料関係を追加で買い足してなんとか準備は完了する。


 宿に戻ってから早々に眠りについて明日に備えることにした。さすがに興奮はしているが、ちゃんと休まないと明日からが困るので仕方なく魔法を使って眠ることにする。こういうときに役に立つのが闇魔法?だ。実は眠りを誘う魔法を使うことができたのである。魔獣を眠らせるなんてことはできないけどね。

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