92. 異世界404日目 車に乗って北上

 朝食をとってから宿をチェックアウトして町の外へ。サクラの町とはしばらくお別れだな。町から少し歩いたところで収納バッグから車を取り出して出発する。やはりあまり大々的に車を収納バッグから出すのはねえ。



 最近は荷物を収納バッグに入れているので結構早く走れてはいたんだが、さすがに走って行くよりもペースがかなり速い。まあ走るのと変わらないなら車買う意味がなかったけどね。

 ずっと一人で運転していると結構疲れるので途中休憩しながら交代で走って行く。1時間おきくらいに小休憩を取り、お昼は眺めのいいところで食べる。収納バッグ様々だ。


「なあ、途中の泊まりはどうする?」


「普通に町に泊まればいいんじゃないの?」


「いや、町の間隔がバスの移動とかに合わせているから、町の間隔に併せて泊まっていくとちょっともったいないことになってしまうんだ。バスよりも走る時間も長いし、速度も速いからね。」


「それじゃあ、拠点に泊まるってことでいいんじゃない?最近の拠点はかなり快適だし、防犯関係の魔道具もつけたから大丈夫でしょ。」


「わかった、そうしよう。5時頃まで走った後は町までの距離(町と町の間の距離は大体わかっているし、車に走行距離は出る)を確認して、ちょうどよければ町に泊まり、ない場合は拠点を出すのにいい場所を見つけて泊まっていくことにするよ。なのでよさそうな場所があったら言ってね。」



 一日に走るのは通常は300メヤルドくらいであるが、走る時間が長いことと、重量軽減魔法があることでペースも上がり、400~500メヤルドくらい走っている。索敵も使っているので魔獣に衝突する危険性は低いしね。

 索敵に引っかかって避けられない場合は、遠距離からの火魔法で一気に片付けている。まあそうそう強い魔獣は出てこないから素材の買い取り額もしれているし、それだったら先に進んだ方がいい。


 魔獣石の消費は軽減魔法の効果もあるが、それでも1日7000ドールくらいだ。まあこのあたりはしょうがないと言えばしょうがないのか。どう考えても一般の人がもてるものではないな。1日に7万円使うなんてとてもではないが無理だ。良階位以上の魔獣だったら1~2匹でそのくらいの収入が得られるので元は取れるんだろうけどね。



「だけど、島で造った拠点をこんな風にずっと使うことになるとは思わなかったね。すぐに捨てることになるかと思っていたのに、今はあまり捨てることを考えられないよ。」


「そうね。土魔法のスキルが上がれば結構簡単に作れるのかと思っていたんだけど、そんなに簡単に作れるものではないみたいだしね。」


 熟練した土魔法使いでも一気に家を作り上げるというのはできず、やはりこの規模のモノを作るには数時間かかるという話だった。


「収納バッグもあるのでもう割り切って持ち運びのできる家という認識になっているからなあ。魔法の訓練もかねていろいろと手を加えてきているしね。」


「他の冒険者と話をしたことがあるんだけど、こんな拠点を作るという考えがそもそもないみたいなのよね。まあ収納バッグの関係もあるとは思うんだけど。」


「優階位とか高階位の人たちは家を作ってもらってそれを収納して持ち運んでいるみたいだよ。」



 建物のドアは蝶番にドアノブも付けてかなり使いやすくした。ドアにもガラスをはめ込んで綺麗な装飾まで取り付けている。窓の数も少し増やし、寒い時用に雨戸のようなものも付けられるようにした。


 建物は土色で味気なかったので白っぽい土から薄いタイルのようなものを作って壁に張りつけることでかなり印象が変わった。漆喰のようなもので固めていくだけですぐにくっつけられたのでよかった。


 部屋の中のベッドはベッドマットだけでなく、最近は布団や毛布、枕なども新調している。浄化魔法を使うのでいつでも快適だ。

 ソファーと小さなテーブルを置いて、雨の日でも快適にくつろげるようにしている。このセットもジェンの趣味で揃えたものである。セットで5万ドールとかだったと思う。


 庭のところには加工したテーブルに建物と同じようにカラフルなタイルを貼って綺麗に加工し、イスもちゃんとした家具を購入した。


 コンロは前からあまり変わっていないが、お湯を沸かしたり、簡単に炒めたりするくらいなら十分だ。なにかいいものがあれば購入して置き換えるつもりだ。持ち運びできる手頃なコンロが売っていないんだよなあ。まあ需要がないんだろうけどね。


 浄化魔法があるんだが、やはりあった方がいいと言うことでシャワー室も作ってみた。お湯を出す魔道具があったのでこれをセットし、排水についてはトイレと同じような魔道具があったのでそれを利用することで問題も出ない。お風呂はさすがに諦めたけどね。


 ちなみに周りの塀は少し厚さを増して、槍のような返しをつけて攻撃を防げるようになっている。魔道具で魔法耐性もつけているので上階位の魔獣くらいまでなら十分に耐えられるレベルになっている。

 今は塀の中には飛んで入ることができるので足場は全て取り払っている。


 塀には8本の柱を立てて木の屋根も取り付けた。明かり取りのために屋根と塀の間には空間を開けているが、ひさしのようにせり出しているので雨でも大丈夫だ。

 風が強い時は危ないので取り外しはできるようにしている。まあこの屋根は無くても家の方で十分雨はしのげるけどね。風魔法で雨の時でも濡れないようにできるから塀の中での移動は全く問題ない。


 もうここまでやってしまえばかなり高級なバンガローと言った感じだろうか?いろいろと魔道具をとりつけたので、一晩に300ドールほどかかってしまうんだが、下手な宿に泊まるよりは十分快適なので、このくらいは必要経費だろう。




 朝と昼は買ってきた食べ物で済ませたが、夕食は簡単ながら料理をしてみた。まあ炒め物とか揚げ物が多いけどね。さすがに煮込み料理は時間的に厳しい。


 収納バッグのお陰で新鮮な刺身とかも食べられるのはありがたい。蟹三昧をした時も最高だった。野営でこんなものを食べていたら他の冒険者に怒られそうだね。

 後片付けは浄化魔法で一発なのでかなり楽だ。乾燥まで終わるのであとは収納バッグに収納するだけ。後片付けって何?っというレベルだ。ゴミもまとめて収納バッグに入れておいて後でまとめて燃やしているので問題はない。



 こうなってくるとやはりもう少し調理用具を充実させたくなってしまう。これからいく国は魔術だけで無く魔道具も充実しているみたいなので何かいいものがあれば買うことにしよう。

 バーベキューセットとかもいいなあ。電子レンジみたいなものがあれば一番いいんだけど、どう考えてもこの世界ではないだろうね。自分で作れるかなあ?




 夜は明かりも十分なので宿と同じように勉強したり、魔符核を作ったりしていつもと同じ時間に眠りにつく。

 たまにはお茶をしたり話をしたりとかなりまったりした時間を過ごすこともある。こうやって話す相手がいるというのもいいねえ。




 結局10日目の昼過ぎに州都であるラーマトに到着する。通常だと15日くらいかかるようなのでかなり早いこととなる。北上するにつれて確かに気温も下がってきたが、長袖を着れば十分なレベルだ。


 結局ちょうどいいタイミングで町に着かなかったこと、拠点の居心地がいいことから町に泊まったのは大雨のときの一回だけでここまでやってきた。




 ラーマトはアーマトやオーマトよりちょっと大きなところだった。おそらく他の国との流通の通り道になるせいもあるのだろう。船よりも陸続きの方が人の往来は頻繁になるだろうしね。


 まずは宿を確保することにしたが、今回はすぐに出ていく予定なので特に考えず、サクラにあった宿と同じシルバーフローに泊まることにした。サクラと4つの州都に展開している宿らしいので、それほど差はないと思う。さすがにサクラよりも安くて1750ドールと言う値段だった。

 贅沢な宿もここまでと決めているので、このあとは高くても二人で1000ドールくらいのところにする予定だ。



 3泊分予約してから商店を見て回る。魔道具関係や魔法関係のものが結構多いのはアルモニアの影響かな?この後アルモニアに行くのでのでここでわざわざ買う必要はないだろう。


 いつものように骨董屋にも寄って、めぼしいものはないか見ていく。露店とは違って掘り出し物はあまりないんだが、時々いいものも見つかるのである。特に壊れていたりするものについてはね。



 この後、混み始める前に夕食を取ることにした。事前に宿や店の人においしい店を聞いていてよかったよ。まだ寒いこともあり、暖かいシチューをお願いする。野菜や肉のたっぷり入ったミルクスープでかなり温まった。


 宿に戻ってからお風呂を堪能して早々に眠りにつく。ここもサクラほどはないけど大きめのお風呂があったのでよかった。




 翌日は朝食を取ってから図書館へ。ここは魔法関係のものが充実しているというのでやってきたんだが、やはりサクラの図書館と比べると規模が違う。ジャンル的に充実していると言うだけでそこまで目新しいものは見つからなかった。まあアルモニアに期待しておこう。


 役場に行ってから町や地域の情報の確認と、出てくる魔獣の確認を行う。やはり寒い地域となるせいか出てくる魔獣の種類が変わってきている。本格的な狩りをするのはサイレウムなんだが、途中で出会う可能性もあるので確認はしておかないといけない。


 他にもいろいろな店を見て回り、道具や食品などめぼしいものがあれば購入していく。寒さ対策の服も購入しておかないといけないしね。

 こうやって買っていくとさすがに収納バッグの容量も気にしないといけなくなってくる。魔獣の素材を持って帰ることを考えるとねえ・・・。はやく収納魔法を覚えたいところだけど、覚えても最初は容量が小さいみたいだから結局は容量の制約は出るんだけどね。


 夕食は白菜のようなものやネギのようなものなどに豚肉の入った鍋のようなもので体も温まって美味しかった。こっちの世界ではみんなで鍋をつつくというのがないんだが、地域的なものなのかな?こたつに土鍋というのに憧れる・・・。


 宿に戻ってからお風呂に入って早めに眠りにつく。明日はまた朝一から移動開始だ。

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