13. 異世界9日目 最後の異世界を楽しむ

 いつも通りに起きてから朝食を食べに行く。朝食はスクランブルエッグとソーセージ、パンにサラダと珈琲だ。材料が一緒か分からないが、こっちにもちゃんと珈琲や紅茶があり、味は一緒みたいな感じ。まあ植生が一緒だったら使い方に気がつく人もいるだろうね。


 食事の後は荷物の確認をしてから宿を出る。今日は高級宿を予約してから町をうろついて宿に早めに入って宿を堪能。夜は目的の場所に出かけるという感じかな?



 高級宿に泊まるつもりなんだが、残念ながらほんとに高級なところはその宿を使っている人からの紹介やある程度の身分がないとは入れないようだ。一見さんお断りというやつだろう。よくわからない客を泊めて常連客に迷惑をかけられると困るだろうから仕方がないことだな。

 最高級とはいえないが、紹介とかがなくても泊まることのできる高級な宿は確認していたのでとりあえずその宿に行ってみる。




 入口にはガードマンが立っているので正直入っていいのか躊躇してしまう雰囲気だ。建物は5階建てなんだが、かなりの敷地となっているみたい。

 入口に案内の人も立っているので声をかけるとフロントまで誘導してくれた。貧乏そうな格好だが特に偏見を持った対応ではないので安心する。内心はわからないけどね。ロビーはかなり広くて天井も高い。さすがに普通は泊まることはないレベルのところだな。


「いらっしゃいませ~~~、宿泊の予約でしょうか?」


 かなり美人のスタッフが受付をしていた。


「すみません、実は今日泊まりたいのですが大丈夫でしょうか?」


「今日ですか?えっと・・・部屋は通常部屋しか開いていませんが、大丈夫ですか?」


 泊まれる部屋は上級と通常の2種類あるんだが、上級の部屋はやはり紹介がないと泊まれないらしい。


「通常部屋でいいのですが、一人でも泊まれますか?」


「それは問題ありませんが、朝食は宿泊代に含まれますけど一人で一泊6000ドールとなりますよ。」


 結構な値段だけど、お金は足りるからまあいいか。


「大丈夫です。その金額でお願いします。何時から部屋に入ることができますか?」


「部屋には入れるのは4時からとなります。」


「わかりました。それまで荷物を預かってもらうことはできますか?」


「えっと、宿泊予定の方の分であれば大丈夫ですが・・・すみません、宿泊される本人なのでしょうか?」


「そうですけど、だめですか?」


「! いえ、大丈夫です。予約となりますので先に1000ドールの予約金を入れてもらう必要があります。よろしいでしょうか?」


「わかりました。」


 どうやら自分は予約にやってきた使用人か何かと思われていたかな?まあそれはしょうがないか。1000ドール支払うと、引き換えに番号の書かれたカードを渡された。荷物を預かってもらってから宿を出る。

 とりあえず宿は確保できたところで一安心だ。




 昨日で狩りは終わりの予定だったが、時間的にも余裕があったのでもう一度狩りに行くことにした。昨日も行った草原エリアへと足を伸ばして適当に狼もどきを狩っていると、木の上に大蜘蛛を発見。自分の頭よりも少し大きいくらいの蜘蛛で麻痺毒をもっている肉食の蜘蛛である。さすがに大きいのでかなり見た目がグロい。

 それなりにすばしっこいようなんだが、かみつき攻撃さえ気をつければそこまで恐れることはないようだ。少し離れたところから風魔法で攻撃すると足の半分を切断できたのであっさりと倒すことができた。

 先に見つけることができたのでよかったが、気がつかずに木の下を通っていたら危ないところだった。こういうときに索敵スキルがあると便利なんだろう。

 残念ながら素材になるような部位はないみたいなので討伐実績のみである。足は食べることができるみたいだけど、あえて食べなくてもいいよね。2時間ほど狩りをしてから町に戻り、6匹の狼もどきの牙を買い取ってもらう。



 お昼をどうしようかとお店を探していると先日魔法の訓練で一緒になったユータとカナと会ったので、一緒に昼食をとることにした。

 彼らも大分訓練してスキルも上がってきたのでそろそろ本腰入れて冒険者業をやろうかと考えているようだ。残念ながら治癒士としては勉強ができていないので今の時点では諦めているらしく、剣士と魔法使いというスタンスでやるらしい。クーラストさんと同じスタンスとなるのでいろいろと助言をもらっているらしい。

 宿泊は家があるので問題はないらしく、ある程度稼げるようになったら他の町にも行ってみようと考えているようだ。無事に成長できればいいねえ。




 このあと少し町をうろついて、チェックインができる時間になったところで宿へ戻る。支払いを済ませてから部屋に案内されると、さすがに値段が高いだけあってかなり豪華だった。エレベーターもあったしね。おそらく地球のような動力ではなく、魔法で動くものだろうけど、使い方は地球のエレベーターと同じだ。

 部屋の鍵はドアはオートロックになっているようだ。部屋は全部で3部屋あり、リビング、簡単な台所、寝室になっている。ベッドもかなりふわふわだ。

 一通り部屋の確認が終わった後、そうそうにお風呂へと行くことにした。部屋にはトイレと意味ないくらい立派な洗面台と普通の大きさのお風呂はあるんだが、共同の大きなお風呂があると聞いていたのでちょっと楽しみだ。


 こっちの世界では普通はシャワーを使うくらいで、体を拭くくらいが多く、魔法を使える人は浄化の魔法を使っている。浄化の魔法と言っても普通は体を拭いたくらいの綺麗さになるくらいなので、宿に泊まれない場合の手段としての利用が主らしい。

 宿やある程度の家庭にはシャワー設備があり、高級宿や金持ちだけがお風呂を使っている感じのようだ。とはいえ、お風呂がそこまで好きではないと言う人も多いようで、国によってはお風呂がないところもあるようだ。まあ地球でもお風呂がそこまで好きな民族って日本ぐらいのような気もするね。



 お風呂は地下にあると言うことなので行ってみると、広めの脱衣所にロッカーのようなものがいくつも並んでいた。ロッカーには鍵がついておりここに荷物を入れてはいるようだ。お風呂の案内を見ると、裸もしくは湯浴み衣を着て入るようになっている。湯浴み衣は薄い布のパンツのようなものだった。

 浴室に入ると、20人くらいは入れそうな石造りの大きな湯船と5人くらいの小さな湯船があった。小さな湯船は温度が高いみたい。洗い場もシャワー付きで並んでいてスーパー銭湯という感じだな。地下と言うこともあり、露天風呂はないのが残念だ。まあ町中なのであまり意味が無いか。

 さすがにこの時間には他のお客もいないので貸し切り気分だ。早速体を洗ってから湯船に浸かってお風呂を堪能。温泉でないのは残念だけど、大きなお風呂はいいねえ・・・。年に数回は家族旅行で温泉とかに行っていたからなあ。最近は自分も妹もあまり一緒に行かなくなってきたので両親二人で楽しんでいたようだけどね。



 部屋に戻ってから一息ついたところで宿に併設しているレストランへ。夕食はコース料理となっているのでちょっと場違いな感じだが気にしないことにした。とりあえず宿泊客であればドレスコートまでは必要ないらしいが、さすがに少し見栄えのする服に着替えていく。


 スープにサラダ、メインにお肉と続いているが、やはり魚は出ないのは内陸のせいかな?デザートのケーキもなかなかおいしくて助かった。劇甘のケーキとか出たら勘弁してほしかったところだ。



 そしてこれがメインイベントとなるんだが、ホテルの横にある併設のバーに移動。「ここでは成人、ここでは成人。」と言い聞かせながら中に入る。時間がまだ早いせいかお客はほとんどいない。

 スタッフに案内されてボックスになったソファーに案内されると、ちょっときわどい格好をしたお姉さんが二人やってきた。一人はかわいい感じでちょっとスレンダー系の女性で自分とあまり年齢が変わらない感じだ。もう一人は20代前半という感じの美人で胸が・・・。


 事前に確認したところ、ちょっとしたおさわりはいいらしいが、お店ではあまり羽目を外さないように釘を刺されていた。


 自分の両側に魅力的な女性が二人。もちろんこんなところに慣れていないので挙動不審になってしまう。さすがにプロなのか、いろいろと話題を振ってくれたのでなんとか落ち着いてきたんだが、ボディータッチをしてくるとそれだけでもう興奮状態になってしまう。



 かなり軽めに作ってもらったお酒を少し飲んでテンションも上がってきて、胸を触らせてもらったりとかはしたんだけど・・・それ以上はだめでした。へたれと言われてもしょうがない。


 一応そのためのお金は残っていたんだけどね。がんばるつもりだったんだけどね。大人の階段は上れなかったよ。まあ、これだけでも結構なお金を取られたけど、至福の時間は味わえたので後悔はない。



 最後の夜と言っても徹夜してまでやりたいことがあるわけではない。というか夜で歩くにはあまりにもリスクが高すぎるのでベッドに入るとすぐに眠りに落ちていった。



~魔獣紹介~

大蜘蛛:

初階位中位の魔獣。森や林に生息する蜘蛛の形をした魔獣。大きなものは大人の頭くらいの大きさで、巣を張るわけではなく、木の上で獲物が通るのを待ち、頭上から襲いかかる。隠密スキルを持っているせいか、索敵に引っかかりにくく、見つけるのが難しいため、木の下を通る場合は注意が必要。

麻痺毒を注入する牙を持ち、かまれるとその部分が麻痺してしまう。血液を介して全身に広がるが、全身が麻痺するほどは強くない。麻痺した獲物は糸で縛ってから食べられるため、生きたままという恐怖と痛みを味わうこととなる。

大人だと麻痺の効果が薄く、軽くしびれる程度となるが、子供がかまれると重篤な状態に陥る場合があるので注意が必要。見つけた際にはできるだけ退治しておくことが推奨される。

見た目よりは素早いが、足を切ってしまえばとどめを刺すのは楽な作業となる。1本ずつでも足を切り落としていくようにするとよい。

素材としての買い取り対象はない。地域により足の部分を食べるところもあるようだが、一般的には食用されていない。

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