6. 異世界2日目 冒険者登録をやってみる
部屋に置いてあった目覚まし時計で0時くらいに起きる。さっそく食堂に移動してから朝食を出してもらうと、食パンにハムを焼いたものとカボチャっぽいスープとサラダという内容だった。
卵を使った料理はメニューには書いてあるが、ちょっと高いようなので宿の食事には出ないのだろう。養鶏はないのかな?卵かけご飯とか無理かなあ・・・。だけど値段もそうだけど、菌が怖いしね。でも魔法でなんとかなるのかな?
とりあえず他の宿も見てみたいが、宿がなくなるのも不安なのでとりあえず4日分追加で部屋を確保して、身支度を整えてから出発。そんなに悪い宿でもなかったし、この4日の間に新たな情報を得られればいいだろう。
役場に行くと入口にすでに人が並んでいた。役場は5階建ての石造りの建物になっているんだが、昨日は何の建物か分からなくて通り過ぎたところだ。
1時になったところでドアが開いて並んでいた人たちが中に入っていくが、冒険者のような格好の人たちは「治安・警備」と書かれたカウンターに並んでいる。しばらくすると行列のあったカウンターもすいてきたので空いたカウンターで話を聞いてみる。
「すみません。冒険者のことについて聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「は~い、いいですよ。この窓口は主に魔獣討伐に関わる依頼を紹介する場所となります。冒険者の登録をしたいと言うことでよろしいでしょうか?普通に職業について働くのであればあちらの業務斡旋のカウンターに行ってください。年齢は16歳からしか登録できませんので、身分証明証で確認しますが、大丈夫ですか?」
普通の仕事についてもしょうがないのでこっちにきたんだけどね。
「冒険者登録を行おうと思ってきたので大丈夫です。今は17歳ですので、問題ありません。」
「それでは簡単に冒険者について説明を行いますので、その内容に納得されるのであれば登録をお願いします。分からないことがあればその都度ご質問ください。」
「わかりました。」
「冒険者に登録すると依頼を受けることができるようになりますが、依頼には常時依頼と特別依頼の二つがあります。
常時依頼は主に魔獣退治や薬草などの材料集めとなります。魔獣を退治すると実績となりますし、種類によっては討伐報酬が出ます。それらがまとめられたファイルがあちらで閲覧できますのでご参照ください。
討伐記録についてはこのあと説明するカードに記録されますのでその記録をもとに実績ポイントの計算を行います。もちろん強い魔獣の方が実績は多くなりますが、弱い魔獣でもわずかですが実績となります。最初は無理せずに弱い魔獣から狩っていくことをおすすめします。
倒した魔獣で使える素材や食べられる肉もありますので討伐報酬が出ない魔獣でも部位がお金や実績になることもあります。素材や肉の買い取りはこちらで仲介も行っていますが、相場を見ての最低価格となりますのでご了承ください。
素材などは店に売ってもよろしいですが、実績のつく素材に関してはこちらで買い取らせてもらわないと実績はつきませんのでご注意ください。ただ実績になる素材はかなり強い魔獣のものとなりますので、最初はあまり考えずに直接お店に売れば良いかと思います。
魔獣の解体は登録されている魔獣や特殊な魔獣以外はこちらでは行っていませんので、自分で解体するか、解体してもらえるお店でお願いします。
薬草などの材料集めは必要な種類がファイルに書かれていますのでご参照ください。薬草は栽培ができるものが増えてきて、依頼のあるものはかなり少なくなっていますのであまり重視しなくてもよいかもしれません。ただその分珍しい材料については高値になりますので一度は目を通しておいた方がよいかと思います。」
とりあえず魔獣は狩ったら実績になるってことだけど、ある程度のレベル以上でないと買い取りはここでは行わないということか。
「魔獣を解体するお店って肉屋とかですか?」
「肉屋でも行ってくれますが、素材まできちんと解体したいのであればできれば公認の解体店で行うことをおすすめします。肉屋と違って手数料は取られますが、確実です。公認の解体店はこの紙に書かれていますのであとで見ておいてください。現在公認の解体店は10軒となります。お店によって扱う魔獣も若干異なりますのでご注意ください。
素材が肉しかない場合は肉屋でも問題ないと思います。また肉屋によっては品薄の商品を高く買ってくれる場合がありますのでそのあたりは個人で確認して下さい。」
解体は自分でできないのでお店に頼るしかないか。
「続いて冒険者カードの発行について説明します。身分証明証を提示いただけたらそのカードに冒険者の記録機能を追加します。機能を追加すると、冒険者としての記録がカードに保存されるようになります。
討伐した魔獣についてはこのカードに記録されていきます。ただ、討伐記録についてはその魔獣にとどめを刺した場合に記録されますのでパーティーで討伐の場合はご注意ください。
パーティーで討伐した場合、事前にパーティー申請をしていただいていればパーティーを組んでいる期間の討伐記録はパーティーメンバーで均等配分されます。分配率の変更はできません。ただし、階位が大きく違う場合は下位の方には実績は入りませんのでご注意ください。
記録を確認することでその実績を加算していきますのでこまめに更新された方がよいですが、少なくとも1年以内に記録の更新を行ってください。それ以上経過すると記録はあっても実績の加算や討伐報酬の支払いはされませんので注意してください。」
説明にあったこの身分証明証って正直チート機能なんだよなあ。いかにも魔法の世界の産物という感じで原理がどう考えても科学では証明できない。まあ便利だからいいんだけどね。
まあ一人一人に身分証明があることから考えても一人一人、一匹一匹に固有の情報があるんだろうな。神様がゲーム感覚でこのシステムを作ったのかもしれないね。神様になるゲームとかあったけど、そんな感じなのかねえ。
「次に冒険者カードの階位について説明します。
階位とはその方の実力を判断するためのもので、特、優、良、上、並、初の6段階となります。特が最も高く、初が最も低い階位です。この階位はすべての国で共通化されています。」
「世界規模のシステムなんですか?情報が共有化されているという理解でいいでしょうか?」
「実際には各国で管理体制は独立していますが、情報は共有化されるため、他の国でも冒険者カードはそのまま使えるようになっているのです。ただし政治が安定していない国や外交を閉ざしている国についてはそもそもその組織が成り立っていませんので対象外となります。」
「わかりました。とりあえずこのあたりの国では問題なく使えるという理解でいいですね?」
「その通りです。
登録すると最初は初階位となりますが、そのあとは実績を積み重ねることで階位はあげられます。並までは実績のみでの判断となりますが、それ以上であれば昇格試験があります。試験方法は階位によって異なりますので昇格の際に別途お聞きください。
ちなみに次の階位までの実績については聞かれればお伝えすることができます。」
まあよくある冒険者のグレードというやつだな。
「先ほど説明したパーティー内での階位ですが、常時依頼については初階位の人は良階位以上、並と上階位の人は優階位以上の人と一緒にパーティーを組んでも実績とはなりません。
特別依頼については一応配分されますが、規定以上の差があると通常の分配の1割しか入りません。このためパーティーを組むなら2段階の範囲内で組むことを推奨しています。
また、規定以上の差があってパーティーを申請する場合、半年に一回、パーティーを組む理由や低い方の階位の上昇具合の確認があります。これは不当に実績を搾取されていないかの確認のためです。」
実績だけを考えるなら、パーティーを組まないでとどめだけを刺せば実績ポイントはつくな。でもレベルという概念がないので実績以外についてはまったく意味がないから、そんなことやっている人はパーティーを組みたいけど階位が離れている場合の即席のときくらいかな?まあ、それでも実力がないと昇格もできないだろうけどね。
「階位をあげるには先にも述べました討伐の実績が評価の対象となります。また魔獣の素材についても評価の対象となりますが、ある程度以上強い魔獣のものでないと評価対象にはなりません。このあたりもファイルでご確認ください。
また階位が高くなりますと特別依頼を受けることがありますのでこれについても評価対象となりますし、高い階位になればこれらの依頼を受けなければ階位は上がらなくなります。各階位の情報については昇格の時に別途説明いたしますのでここでは省略させていただきます。」
「ちなみに階位の大体の割合はどのくらいでしょうか?」
「正確な数値は出せませんが、並までで全体の70%、上が25%、良以上が5%という感じですが、登録のみ行っている人もいますので実際の正確な数値は分かりかねます。」
まあ並階位が普通レベル、上階位からが高レベルという感じかな。
「現段階では関係はありませんが、特別依頼について簡単に説明をします。
特別依頼は脅威となる魔獣退治、護衛業務、特別な素材の確保などの依頼となります。依頼があった場合にこちらの窓口で依頼内容を発行しますが、受注に必要な階位は上階位からとなります。特に護衛依頼などは通常は良階位からがほとんどです。上階位だと近くの町への護衛くらいですね。
魔獣退治については緊急性が高いことが多いため、こちらから個別に依頼することが多いのですが、その場合はよほどの理由がない限りは断ることはできません。
これ以外に依頼者から名指しされる特別依頼がありますが、その場合は窓口だけではなく直接個人にも連絡が行きます。連絡は冒険者カードに連絡が入りますので窓口に来て手続きを行ってください。これについては階位の制約はありません。」
他にも依頼未達成の時の賞罰や違反事項などについても説明があったが、まあ予想通りの内容だった。未達成時の違約金は結構大きいけど、今回の期間であれば依頼を受けるわけもないから関係ないだろう。
冒険者と言うが、よくある何でも屋のような仕事というわけではないようだ。依頼の受注も整理券が配られているし、ある程度以上の階位が必要なのでよくある依頼の取り合いはないみたいだ。まあ自分にできるのはどうせ常時依頼のみだから関係ないけどね。
イメージで冒険者と解釈しているけど、実際は傭兵や狩人とか言った方が合っているのかもしれないね。まあそう解釈してしまうとなんかテンションが下がりそうだからなあ。
せっかくなので冒険者の登録をお願いして身分証明証に冒険者の記録を追加してもらう。費用は100ドールらしい。機能を追加してもらうと職業の欄に「冒険者 初階位」と記載された。うん、冒険者っぽい。
職業訓練のことを窓口に聞いてみると、剣術であればすぐに受けることができるとの返事があった。とりあえず武器などは借りることができるようなのでそのまま受けることにした。
受講料は初級者用で50ドールらしい。他にも個人の経営する道場もあるみたいで、ある程度のレベル以上になればそっちで受けた方がよいみたいだが、値段もそれなりにするようだ。初心者レベルであればここで受けるのが一番お得らしい。
訓練はこの建物の裏にある広場で行うらしいのでそっちに移動する。広場は運動場みたいな感じで地面は結構堅く固められている。すごく広いというわけではないが、訓練をするには十分な広さで、大きな屋根も造られているので雨の時でも問題なく使うことができそうだ。訓練を受ける人以外にも自注訓練をしているような人達もいた。
しばらくすると「訓練の受講生はこっちに来い!」と集合がかかったので指導員と思われる人のところに向かう。自分の他にも4人ほど受ける人がいた。年齢は12~16歳といったところか?
自分は一から剣の取り扱いや使い方を教えてもらう。他の人たちのレベルはまちまちだが、自分よりはうまく扱っているような感じだ。
小学校の頃に剣道をやっていたんだが、やはり剣道と剣術では勝手が違うのでどうしようもない。ある程度の基本的な型を習ってから素振りや指導員との対人を繰り返す。さすがにそう簡単に剣の使い方に慣れるわけではないが、しばらくやっているとなんとなく形っぽくなってきた・・・と思われる。
素人は剣などより槍の方がまだいいという話も聞いたことがあるくらいだから槍の方がいいのかもしれないけど、せっかくなら剣を使ってみたい。
しばらくしたところで昼食の時間になったので他の人たちと一緒に昼食のサンドイッチとジュースをいただく。もちろんこれはサービスではなく、お店で買ってきたものだ。サンドイッチはコッペパンに野菜とハムが挟まれたもので結構大きい。
話を聞くと、他の4人はまだ成人前だった。みんな成人後の職業は決めているらしく、冒険者になるつもりはないが、自衛のためにも剣術を習っているらしい。いざというときのために、最低限の自衛手段はもっておいた方がいいというのがこの世界の常識のようだ。
他にもいろいろと話をしてから訓練を再開。このあと2時間ほど訓練をして終了となった。さすがに結構疲れた。明日は筋肉痛になるかもしれないなあ。手に少しまめができてきているけどこのあたりは仕方が無いだろう。
ちなみにスキルがとれたかどうかは鑑定しなければ分からないようだ。あくまでその武器の扱いがうまくなったらスキルとして認識されると言うだけであり、スキルを得たから急に扱い方が上達するわけではないからである。
もちろん武器が変わると扱いも変わるのでスキルがあるから同系列の武器が扱えるわけでもない。最初に片手剣と両手剣のスキルは持っているんだけど、この剣をうまく使えるわけではなかったしね。スキルが武器の扱い方に影響するのであればおそらく最初から結構使えていたはずである。
指導員からは「剣術スキルが得られたかどうかは分からないが、無理をしなければ森のすぐ周辺にいる魔獣程度であれば対応できそうだ。」とのことだった。ただ無茶だけはするなと言われる。
訓練終了後、受付に行って今後の予定を確認すると、明後日であれば魔法の訓練があるらしい。初心者向けの講義で基礎から習うことができるようだ。ということは明後日の予定は確定だな。
もうすでに日も暮れてきたので宿屋に戻り、夕食をいただく。今日の夕食はカレーライスのようなものにサラダだった。ご飯はあまり粘り気のないご飯だったのでちょっと残念だが、カレーライスなのでまだ大丈夫だ。お米の種類もいくつかありそうだし、日本のお米のようなものも売られているのかねえ?
洗濯をお願いしていたので着替えの服を受け取ってからシャワーを浴びてさっぱりする。さすがに疲れていたせいか、布団に入ると速攻で眠りに落ちてしまった。
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