第11話7人の勇者〜カケル目線〜
俺
自分で言うのもなんだが、成績優秀スポーツ万能、高身長のイケメンだ。
それ故に女子からもモテるし、先生からの信頼も厚い。友人も多かった。
そんな俺がクラスの根暗な男子に殺されるなんて悲しすぎる話だ。
なんでも付き合っていた彼女が俺に惚れたらしく別れて欲しいと言われたことへの恨みらしい。
そんな理由で殺さないでほしいのだがな……
そして殺された俺はどうも神に選ばれたとかで異世界に勇者として転生することになった。
もちろん最初は戸惑ったさ。
なにせ異世界なんて漫画やゲームの話でしかないと思っていたし、興味もなかった。
だってそんなものを楽しめるのは現実世界で居場所がない奴らだけだろう?
俺はリアルが充実していたからそんなところに逃避することもなかった。
しかし神様は勇者の素質を待った俺だから選ばれたなんて言ってたし、勇者になるのも悪くないかなと思ったから俺は異世界に転生することに決めた。
男ならば勇者やヒーローってのには憧れるってものだ。
そして光に包まれ俺は異世界へと転送された。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
目を覚ますと広間の中央部だった。
そしてあたりを見回すと玉座に座るおじさんとその横に立つヒョロ長のおじさんがいて、俺の周りには同い年くらいの男女が倒れている。
どうやら一番最初に目覚めたのは俺らしい。
「目覚めましたか勇者殿!」
ヒョロ長のおじさんが話しかけてきた。
俺のことを勇者と呼ぶあたり神が言っていたことは間違いないのだろう。
「申し訳ないのだが他の勇者が目覚めるまで少し待っていただけますかな?」
「ああ、構わない……他の勇者?」
「はい勇者殿の周りにいる方々のことでございます」
俺以外にも勇者がいるのか?
んなこと聞いてないぞ。
基本的には勇者ってのは1人と相場が決まっているだろうに。
気に入らないな。
そんなことを考えていると他の6人が続々と起き上がりはじめた。
「ん、んん……ここはどこ?」
茶色のカールのかかったボブカット女子が呟く。
出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
つまりはナイスバディってことだ。
そして整った顔立ち。
少し垂れ目なところがさらに可愛さを引き立てている。
実にタイプな女子だ。
「あなたは神様から事情を聞いていないの?この異世界に転生するって話を」
長い黒髪をポニーテールでまとめた女子が答える。
体つきはスレンダーでいかにも体育会系女子って感じだ。
つり目な感じが彼女の魅力をさらに引き立てている。
端的に言えばかっこ可愛い。
実にタイプな女子だ。
「聞いてないよ?私は友達と道路を歩いていたらたまたま開いていたマンホールに落ちて、気づいたらここにいたから」
「マンホール……落ちる人っているのね。ところで他の……『異世界キターーーー!!!!』……」
ポニーテール女子の言葉を遮るように子デブの眼鏡男子が叫んだ。
「な、なに?どうしたの?」
「い、異世界にきたう、嬉しさのあまり、さ、叫んでしまったんだな!」
妙に聞き取りづらい喋り方をするなこの子デブは…
少しイラっとするぜ……
他の3人もてんでに現状を確認しているみたいだ。
ちなみに女子はさっきの2人しかいない。
つまりは男の方が多い。
だがこれだけは言える。
俺が1番かっこいい!
つまりはこの異世界転生の主人公は俺ってことだ。
「さて、皆さん目覚められたようですな。それではご説明させていだだきますぞ。なぜ我らがあなた方勇者を呼び出したのかを」
ヒョロ長が話し始めた。
要約すると、魔王を名乗る男がこのアリステル国を滅ぼそうとしているらしく、長年彼らの侵攻に苦しめられている。
国王たちは必死に抵抗するも圧倒的な力の前に国は疲弊し国民たちも苦しめられているそうだ。
そこで俺たち勇者を呼び出し魔王を討伐してほしいとのことだそうだ。
「ふむふむ、な、なるほど。よ、よくある展開ですな」
子デブがそう言う。
明らかにオタクにしか見えないこいつはそういうのに造詣が深いのだろう。
「私たちが戦わないといけないの…?」
ボブカット女子が怯えながらそう言った。
この子は神様から事情を聞かずにここにきたっぽいからな。
不安で仕方がないのだろう。
「そうでございますな。あなた方には特別な力が与えられているはずです。それを駆使して魔王を討伐してほしいのですぞ」
「特別な力……?」
「はい、皆さんこのカードを受け取ってください」
ヒョロ長から1人ずつにカードが配られる。
それを受け取った瞬間、カードが光り始め文字が浮かび上がる。
……紅蓮の勇者
俺のカードにはそう浮かび上がった。
紅蓮……つまりは炎か?
なるほど悪くない。
炎って言ったらよく主人公が使う属性だ。
やっぱ俺が主人公なんだろう。
「そのカードには皆さんが神様から受け取った能力が刻まれております。そしてそのカードを握ったまま武器を思い描いてください」
武器?……つまりは剣とかか?
するとカードが変化を始め……赤く輝く剣へと姿を変えた。
サイズは片手剣くらいだろうか。
軽く振ってみる。
今まで剣なんか握ったことがないし振ったこともないけど何故か手にしっくりくるし、攻撃の仕方もわかる。
周りを見ると他の人たちのカードも武器へと変わっていた。
杖、弓、日本刀……なんだあの鎖の先に鉄球がついたやつは。
「も、モーニングスターとは、い、いい趣味ですな」
子デブがフードをかぶってモーニングスターと呼ばれる武器を持った男に話しかけた。
「この武器の良さがわかるとはお前なかなかやるな」
ニヤッと笑って返す。
子デブもくいっと眼鏡を上げ、ニヤッと笑うと。
なにこいつら……ちょっときもい。
「その武器は皆さんに与えられた能力を遺憾なく発揮できるようになっておりますぞ。さて皆さんにはこれから一ヶ月間アリステル王国軍に入ってもらい、戦闘経験を積んでもらいますぞ。そして一ヶ月後に魔王討伐のために旅立ってもらいます。国王陛下、彼らにお言葉を」
ヒョロ長がそう言うと国王は立ち上がり、
「諸君らの働き、期待しておるぞ」
そう言って再び玉座に座った。
「「「ははっ!!」」」
俺たちはその言葉に全員が片膝をつき頭を下げた。
それほどに威圧感があるとはあの国王は何者だ?
体が勝手に動くような感覚だったが……大して気にすることもないだろう。
そして俺たちは一ヶ月にわたる厳しい訓練の日々を送ることとなった。
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