④
シルバーランクの冒険者一行が森の奥へと進んでいくと、大きく開けた場所に出た。
「これは・・・集落か?」
「まさか、ゴブリンが作ったのか!? 一体いつから!?」
そこには木々が切り落とされて森が開拓されており、大きな集落が築かれていた。申し訳ばかりの柵まで建てられており、周囲にちらほらと見張りをしているゴブリンの姿がある。
「・・・こんな集落まで築いているなんて、ただのゴブリンだけじゃないわね。ひょっとしたら、ゴブリンジェネラルがいるかもしれないわ」
ゴブリンジェネラルはゴブリンが進化して生まれる上位のモンスターである。その強さはシルバーランクである自分達でも、確実に勝てるとは断言できなかった。
「ここは一度、撤退したほうがいいわね。私達もだいぶ疲労しているし、ゴールドランクの帰還を待って、改めて攻めましょう」
メルティナが提案するが、レオンが声を荒げて反論してくる。
「馬鹿な! あの中には、ゴブリンに捕まった女性達もいるかもしれないんだぞ! 彼女達を見捨てるのか!?」
「そうは言ってないわよ! この戦力では勝てるかどうかわからないって言ってるのよ!」
メルティナの反論に、レオンはふっ、と鼻で笑った。
「やれやれ、しょせんは女だな。いいだろう、君たちは先に帰っていたまえ。麗しの乙女に戦場は似合わない。君たちには鎧よりもドレスの方が似合うだろう」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
メルティナの制止を無視して、レオンはゴブリンの集落へと向かっていく。『黄金』のサブリーダーである黒鎧の戦士は頭を掻いて、
「悪いな。あんなやつでも俺達のリーダーだ。見捨てるわけにはいかない。帰還用のスクロールは持っているから、俺達のことは気にしないでくれ」
黒鎧の戦士は『銀翼』のメンバーにそう告げて、レオンの背中を追いかけていく。
集落に入っていく『黄金』の冒険者たちを見送って、メルティナは深々と溜息をつく。
「まったく、仕方がないわね。私達は・・・」
「ん・・・」
「ちょ、ライム!?」
ライムが『黄金』の後を追っていこうとする。メルティナは慌てて呼び止めた。
「ゴブリン、殺す・・・みんな助けないと・・・」
「あのね、ライム。冒険者というのは引き際も肝心なのよ? ここで私達が情報を持ち帰らないと、万が一の言葉あった場合にかえって被害が大きくなるのよ?」
「私は、大丈夫・・・心配しないで」
「心配するに決まってるでしょう。仲間なんだから」
メルティナは困ったように言う。普段は自己主張しないライムであったが、こうして意固地になるとこちらの意見を聞かなくなってしまう。
「いいわ。私達も行きましょう。その代わり、危なくなったら逃げるのよ。カティもいいわね」
「もちろんですわ、サブリーダー!」
「ん、了解」
『銀翼』の3人も他の冒険者の後を追って、集落へと向かっていった。その先に待っている絶望の光景に、気がつかないまま。
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