第14話 アーティストとしての自覚 お尻が切り取られて使われた作品をマジマジと眺めては無言で次の作品を眺めていく人たちを眺めている。

これまで一体どれほどの画家達が裸婦を描いてきたのだろうか?

そんな事を考えながら、私はとある現代美術家の美術展に来ていた。

広くゆとりのとられた展示室内にある壁にかかった一枚のアート作品の中には、私の体の一部の写真が使われていた。


私はその美術家アーティストの大ファンだった。

彼の絵の中には時折、実写の裸婦の体の一部が切り取られて貼られたりしていた。

その為、彼がどこからその写真を得ているのかが気になって仕方ない時期もあった。

友人なのか、恋人なのか、知らない人なのか、知ったところでどうでもよさそうな事だったが、時に美術品は芸術を感じさせるだけでなく、時代や作者の想いを代弁する要素を持っているため、私の裸婦への興味は恥じらいを捨てれて、共に自己肯定感をも高めてくれる存在だった。

私はその芸術家に一通のDMに私の全裸の写真を添えて送った。

顔は手で覆うようにして隠したが、胸や下半身は何一つ隠すものがなく、まさに全裸。通報でもされたらどうしようかとも思ったが、相手は芸術家だ、ためらうことは無い。

ストロングゼロを飲み干した私は遂にDMの送信ボタンを押してしまった。

意外なことに既読が早く着いた彼のアカウントからすぐに返信が届いた。

「お尻がすごくキレイですね。今度の作品でお尻の素材が必要だったので使用させてもよろしいですか?よければ、他にも何枚かお尻の写真いただけると助かります。」

私は彼から直接返事が来て嬉しかったこととお酒に酔ってたこともあり、喜んで自分のお尻にカメラを向けた。

再び送信すると、今度は

「ありがとうございます。とてもキレイですね。これまで見た中でも一番かも知れません。ですが穴のほうとかは撮影厳しいですよね…?これまで快諾していただいた方もいませんので無理を言うつもりはないです、ただ次回の作品には必ず載せたいなと思ってます」

私は彼にテキストでの返事をする前にスマホを壁に立てかけて、四つん這いになり、頭を床につけて、お尻を両手で一生懸命鷲掴み拡げて、肛門を晒した。

シャッター音が鳴るまでの数秒はとても恥ずかしくもあったが、シャッター音が連射される音を聞きながら、自分の行いは現代アートへの熱い思いと言い聞かせた。

写真を確認すると、一枚一枚に動きがあり、自分のお尻がヒクヒクしているようすが鮮明に映し出されたいた。

当初は一枚だけ送ろうと思っていたが、私は彼が喜んでくれるのが待ち遠しかった為

、撮られた10枚の写真をすべて送信した。

「最高です。ありがとう。次回の美術展は必ず招待しますね」

私はこの上ない満足感で胸がいっぱいになった。


私は美術館の片隅に佇み、私のお尻が切り取られて使われた作品をマジマジと眺めて次の作品を眺めていく人たちを眺めている。

私のお尻に対して興味を持つようにマジマジとみてくださる方もいたり、首を横に傾げたり。

美大生っぽいカップルに指をさされ、小言で私のお尻について語り合われていると思うと、なんとも言えない気持ちになった。

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【女目線の男尊女卑法】~支配されていく日常を少しでも楽しく~ 村上夏樹 @dansonjohihou

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